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8 アンドリューSide1
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「兄上!直ちに父の執務室へ。やっぱりグレイスがやらかした!」
執務室にノックも無しに開いた扉から入ってきて開口一番アーサーはそう言った。
……。
俺は額に手を当てた。頭が痛い。
側近達に後の事を任せ、俺は父の執務室へと向かった。俺が着いた時には既にランドルとアーサー、母、宰相と各部門の大臣達が部屋にいて母達はソファに座り、大臣や宰相は立っている状態。勿論皆険しい顔で誰一人口を開いてはいなかった。
「アーサー、突然呼び出してどういう事だ?」
俺は席に座り父を睨みながら執事の出すお茶を飲む。
「兄上は先ほどの騒動に気づかなかったのですね?」
「騒動だと?」
「えぇ。私が騎士達の訓練を視察している最中にグレイスの部屋からテーブルが落ちて来たんですよ。ガラスが割れる音が響いてきてね。慌てて騎士達と見に行くと、テーブルや割れたガラスと共に何故かカイト・ローゼフが倒れていたんです」
……頭が痛い。
「それで?」
「カイト君を抱き起こすと意識が朦朧としていて何やらブツブツと呟き正常な様子ではなかったから急いで医務室に向かわせました」
「その結果は?」
「薬物を嗅がされ意識が混濁している状態だと言う事です。そして、問題はグレイスの部屋から落ちてきた事。彼は何故か、守られているはずの王族の部屋に入り、グレイスの部屋から落ちてきたようですよ?」
皆、その言葉ですぐに誰が関わったのかを思い浮かべる事が出来たのだが、敢えて誰も口にはしなかった。
「……で、グレイスはどうしている?」
「私の権限で貴族牢に入っております。現在取り調べ中です。あと少しで全てが分かるでしょうね。あぁ、グレイスを捕まえた時に何やら叫んでいましたよ?この小瓶を持ちながらね?」
「困ったわね。これではナザールに嫁げなくなってしまったわ。今のカイト・ローゼフ子爵子息の状態はどうなのかしら?」
「医者の話ではガラスの上に落ちたようで手足に切り傷はあったようですが、重症ではないようです。ただ、薬が強く、数日間はベッドに縛り付けていなければならないようですが。媚薬の類なら切れるまで精神が保てるかは微妙かもしれませんね。我々王族とは違い薬に慣れていませんからね」
母とアーサーが話をしていると、扉をノックする音が聞こえた。ランドルが父の代わりに返事をすると一人の従者が書類を持って部屋に入ってきた。
従者は物々しい雰囲気に青い顔をしながら床に額をつけ謝罪し始めた。
「陛下、申し訳ありません。書類は不受理となり、持ち帰る事になりました」
震えながら土下座をしている従者の前に置かれた書類を宰相が拾う。
「……陛下、これはどういう事ですかな?」
宰相が父に見せようとしていたのだが、横から母が奪い取る。
「あらっ。これはグレイスとカイト・ローゼフ子爵子息の婚姻届ね。どういう事かしら?よく見るとカイト君のサイン、文字が震えているじゃない。可哀そうに」
母はあえて大袈裟に言いながら俺に婚姻届を渡す。俺が見た後、ランドル、アーサー、他の大臣達にも回して確認している。
「そこの従者、謝っていないで立ちなさい。聞きたい事があるの。貴方はこれを神殿に提出したのよね?何故不受理されたのかしら?」
従者は相変わらず震えながらゆっくりと立ち上がり、母の質問に答える。
「神殿へ到着後、受付の神官に婚姻届を出したのですが、確認しますと奥へ入って何かを確認した後、私の所へ戻ってきてカイト・ローゼフという方は既に婚姻しておりますと書類を返されました。
わ、私は神官に再度聞いたのですが、既に婚姻されていると。相手はラナ・ホルン子爵令嬢でした」
「……そう。もう下がって結構よ」
従者はその言葉にホッとしたようで深々と頭を下げて部屋を出て行った。母が父に詰め寄ろうとした時、またも部屋をノックする音が聞こえてきた。母は舌打ちしそうな勢いだ。
次に入ってきたのは尋問官。どうやらグレイスから自白が取れたようだ。やはりアイツはすぐに喋るだろうと思っていたが、こんなにも早くに書類となって提出されるとはな。
宰相が尋問官から書類を受け取り、母の指示で読み上げた。その内容に思わず呆れる。どこまでも自分本位な内容だった。父以外は眉間に皺を寄せて溜息すら吐いている者もいた。
執務室にノックも無しに開いた扉から入ってきて開口一番アーサーはそう言った。
……。
俺は額に手を当てた。頭が痛い。
側近達に後の事を任せ、俺は父の執務室へと向かった。俺が着いた時には既にランドルとアーサー、母、宰相と各部門の大臣達が部屋にいて母達はソファに座り、大臣や宰相は立っている状態。勿論皆険しい顔で誰一人口を開いてはいなかった。
「アーサー、突然呼び出してどういう事だ?」
俺は席に座り父を睨みながら執事の出すお茶を飲む。
「兄上は先ほどの騒動に気づかなかったのですね?」
「騒動だと?」
「えぇ。私が騎士達の訓練を視察している最中にグレイスの部屋からテーブルが落ちて来たんですよ。ガラスが割れる音が響いてきてね。慌てて騎士達と見に行くと、テーブルや割れたガラスと共に何故かカイト・ローゼフが倒れていたんです」
……頭が痛い。
「それで?」
「カイト君を抱き起こすと意識が朦朧としていて何やらブツブツと呟き正常な様子ではなかったから急いで医務室に向かわせました」
「その結果は?」
「薬物を嗅がされ意識が混濁している状態だと言う事です。そして、問題はグレイスの部屋から落ちてきた事。彼は何故か、守られているはずの王族の部屋に入り、グレイスの部屋から落ちてきたようですよ?」
皆、その言葉ですぐに誰が関わったのかを思い浮かべる事が出来たのだが、敢えて誰も口にはしなかった。
「……で、グレイスはどうしている?」
「私の権限で貴族牢に入っております。現在取り調べ中です。あと少しで全てが分かるでしょうね。あぁ、グレイスを捕まえた時に何やら叫んでいましたよ?この小瓶を持ちながらね?」
「困ったわね。これではナザールに嫁げなくなってしまったわ。今のカイト・ローゼフ子爵子息の状態はどうなのかしら?」
「医者の話ではガラスの上に落ちたようで手足に切り傷はあったようですが、重症ではないようです。ただ、薬が強く、数日間はベッドに縛り付けていなければならないようですが。媚薬の類なら切れるまで精神が保てるかは微妙かもしれませんね。我々王族とは違い薬に慣れていませんからね」
母とアーサーが話をしていると、扉をノックする音が聞こえた。ランドルが父の代わりに返事をすると一人の従者が書類を持って部屋に入ってきた。
従者は物々しい雰囲気に青い顔をしながら床に額をつけ謝罪し始めた。
「陛下、申し訳ありません。書類は不受理となり、持ち帰る事になりました」
震えながら土下座をしている従者の前に置かれた書類を宰相が拾う。
「……陛下、これはどういう事ですかな?」
宰相が父に見せようとしていたのだが、横から母が奪い取る。
「あらっ。これはグレイスとカイト・ローゼフ子爵子息の婚姻届ね。どういう事かしら?よく見るとカイト君のサイン、文字が震えているじゃない。可哀そうに」
母はあえて大袈裟に言いながら俺に婚姻届を渡す。俺が見た後、ランドル、アーサー、他の大臣達にも回して確認している。
「そこの従者、謝っていないで立ちなさい。聞きたい事があるの。貴方はこれを神殿に提出したのよね?何故不受理されたのかしら?」
従者は相変わらず震えながらゆっくりと立ち上がり、母の質問に答える。
「神殿へ到着後、受付の神官に婚姻届を出したのですが、確認しますと奥へ入って何かを確認した後、私の所へ戻ってきてカイト・ローゼフという方は既に婚姻しておりますと書類を返されました。
わ、私は神官に再度聞いたのですが、既に婚姻されていると。相手はラナ・ホルン子爵令嬢でした」
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