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上司へ定期報告を入れていると、珍しく上司が低い声で呟いたように聞こえた。
「佐光、お前、気をつけろ」
「どうしたんっすか?」
「いたずら電話はよくあることだが、お前、狙われているかもしれん」
「え? 俺っすか? なんかあったんすか?」
「土井ゆかりのことをこれ以上嗅ぎまわるなって忠告が来ている」
「えー、マジっすか。俺、なんかやっちまったっす?」
「いや、報告書を読む限り問題はないようだが腹を探られたくないやつはいるんだろう」
「みんな協力的だったんっすが」
「どうせ土井ゆかりの家族か、近所で張りこみする記者達を迷惑だと思っているやつだろう。おかしな奴は何を考えているかわからないからとにかく気を付けろよ」
「了解っす!」
後は兄正樹への直接の取材。彼は受けてくれるだろうか?不安になりながらも土井ゆかりの兄に連絡を取った。
…… …… ……数度電話のコール音がした後、「もしもし?」と低い声が聞こえてきた。
「もしもし。あの、私週刊アラカシの佐光といいます。突然のお電話申し訳ありません。少し話をお伺いしたいと思いましてお電話させていただきました」
「誰からこの電話番号を聞いたんです?」
「えっと……」
俺は一瞬迷ったが正直に答えることにした。
「土井ゆかりさんからです」
「ゆかりは今、刑務所の中だろ?」
「ええ。事件当初から彼女と手紙のやり取りを続けいるのですが、ゆかりさんの手紙に正樹さんの電話番号が書かれていたんです」
「……」
電話の向こうではガサガサと何かが動くような音がしている。
仕事中だったのだろうか。
「あの、時間がある時でいいのですが、お会いしてお話を聞きたい思い、お電話させていただきました」
「……そうか。ゆかりが、手紙に書いたんなら仕方がない。明日の十四時に東京の駅中の和食屋五郎でいいだろうか?」
「もちろん構いません。個室の場所でなくてもいいんですか?」
「ああ、構わない」
俺は電話を切り、ほっと息を吐いた。
兄から話を聞くことが出来るのは恭悦だな。
それにしても俺が取材していることを知っていて止めさせようとしているのは誰だ?
取材の仕方が横柄だと感じたのだろうか?
自分の取材の仕方を改めて振り返り、急ぎすぎたか、配慮なく質問していたか自問自答し、ボイスレコーダーの内容を改めて確認するが脅迫されるほどの取材はしていないように思う。
ただの嫌がらせか?
愉快犯の類なのだろうか。
考えてもきりがないな。
俺は数日ぶりに家に戻り、土井ゆかりからの手紙を改めて読み直す。
ある程度取材を終え、彼女の手紙を読むとまた違った感じに見えてしまう。彼女は幼い頃から生きづらさを感じながら過ごしていたのだろう。
丁寧ながらも少し癖のある字で書かれている内容は素直なものだ。
事件の時は興奮していたが、最近ようやく落ち着いてきたのだろう。ポツポツと書かれるようになっている。
だが、未だ被害者に対しての謝罪は一切ない。
私に手を振ったのに前の女が喜んでいるのを見て苛立ったとか、怒りで頭が真っ白になって気づけば血が体中に付いていたとか。
ともすれば留置場で若い男の職員が素っ気なく食事を渡してきたが私を意識しているのだと思うと書かれていることもある。
素直だが、内容は自己中心的だ。
考え方に偏りを感じてしまう。
缶ビール片手に途絶えることのない騒音を聞きながら明日のことを考える。
俺が土井ゆかりの友人だったらと考えるとやはり彼女にはついていけないだろうな。彼女になんかした日には確実に俺は殺されているだろう。
なぜあんなにも人に執着するのか?
特に男に執着を見せている。父親が原因なのか?
明日、家族内のことは土井正樹に聞いてみるしかないな。それにしても彼女の周辺を取材していても彼女の事は語られるが、家庭の姿が見えない。そもそも家庭として成り立っていたんだろうか。
道路を見下ろし、俺は煙草を燻らせた。
――〇
プルルル……。
テーブルの上に置いていた携帯が鳴り、取るかどうか悩んだ末に電話を取った。
『ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんのせいでこっちは大変なんだけど?』
『……煩い。私のせいじゃない』
『はあ?お姉ちゃんとこの娘のせいだ。近所でも白い目で見られるし、取材が来たし、最悪』
『取材?あんたのところにも来たの?』
『ええ、来たわ。一度取材を受けて記事になればもうここには来ないって上木新聞社の記者が言っていたわ』
『取材を受けるの?』
『まだ受けてないけど取材依頼が来たから受けるつもり。この間、アラカシの記者から取材したいって言われたの。いつまでも家の周りに張り付かれても困るし、うちだって近所の目があるからね。子供達もいじめにあっているの。全部お姉ちゃんのせい』
『チッ』
『こっちも生活が掛かっているんだから。これ以上うちに迷惑を掛けないでよね!』
文句を言いたかっただけの電話に私は興味を無くし、返事をすることなく電話を切った。
最近は面倒なことばかり。我が家の周りにもウロウロとしている奴がいる。
苛立たしい。
お隣は良い顔をしてうちのことをあることないこと喋ったんだろう。
頭の中で何度あいつらを殺したか知れない。
全てが憎い。
記者も隣の家もみんな死ねばいい。
――〇
「佐光、お前、気をつけろ」
「どうしたんっすか?」
「いたずら電話はよくあることだが、お前、狙われているかもしれん」
「え? 俺っすか? なんかあったんすか?」
「土井ゆかりのことをこれ以上嗅ぎまわるなって忠告が来ている」
「えー、マジっすか。俺、なんかやっちまったっす?」
「いや、報告書を読む限り問題はないようだが腹を探られたくないやつはいるんだろう」
「みんな協力的だったんっすが」
「どうせ土井ゆかりの家族か、近所で張りこみする記者達を迷惑だと思っているやつだろう。おかしな奴は何を考えているかわからないからとにかく気を付けろよ」
「了解っす!」
後は兄正樹への直接の取材。彼は受けてくれるだろうか?不安になりながらも土井ゆかりの兄に連絡を取った。
…… …… ……数度電話のコール音がした後、「もしもし?」と低い声が聞こえてきた。
「もしもし。あの、私週刊アラカシの佐光といいます。突然のお電話申し訳ありません。少し話をお伺いしたいと思いましてお電話させていただきました」
「誰からこの電話番号を聞いたんです?」
「えっと……」
俺は一瞬迷ったが正直に答えることにした。
「土井ゆかりさんからです」
「ゆかりは今、刑務所の中だろ?」
「ええ。事件当初から彼女と手紙のやり取りを続けいるのですが、ゆかりさんの手紙に正樹さんの電話番号が書かれていたんです」
「……」
電話の向こうではガサガサと何かが動くような音がしている。
仕事中だったのだろうか。
「あの、時間がある時でいいのですが、お会いしてお話を聞きたい思い、お電話させていただきました」
「……そうか。ゆかりが、手紙に書いたんなら仕方がない。明日の十四時に東京の駅中の和食屋五郎でいいだろうか?」
「もちろん構いません。個室の場所でなくてもいいんですか?」
「ああ、構わない」
俺は電話を切り、ほっと息を吐いた。
兄から話を聞くことが出来るのは恭悦だな。
それにしても俺が取材していることを知っていて止めさせようとしているのは誰だ?
取材の仕方が横柄だと感じたのだろうか?
自分の取材の仕方を改めて振り返り、急ぎすぎたか、配慮なく質問していたか自問自答し、ボイスレコーダーの内容を改めて確認するが脅迫されるほどの取材はしていないように思う。
ただの嫌がらせか?
愉快犯の類なのだろうか。
考えてもきりがないな。
俺は数日ぶりに家に戻り、土井ゆかりからの手紙を改めて読み直す。
ある程度取材を終え、彼女の手紙を読むとまた違った感じに見えてしまう。彼女は幼い頃から生きづらさを感じながら過ごしていたのだろう。
丁寧ながらも少し癖のある字で書かれている内容は素直なものだ。
事件の時は興奮していたが、最近ようやく落ち着いてきたのだろう。ポツポツと書かれるようになっている。
だが、未だ被害者に対しての謝罪は一切ない。
私に手を振ったのに前の女が喜んでいるのを見て苛立ったとか、怒りで頭が真っ白になって気づけば血が体中に付いていたとか。
ともすれば留置場で若い男の職員が素っ気なく食事を渡してきたが私を意識しているのだと思うと書かれていることもある。
素直だが、内容は自己中心的だ。
考え方に偏りを感じてしまう。
缶ビール片手に途絶えることのない騒音を聞きながら明日のことを考える。
俺が土井ゆかりの友人だったらと考えるとやはり彼女にはついていけないだろうな。彼女になんかした日には確実に俺は殺されているだろう。
なぜあんなにも人に執着するのか?
特に男に執着を見せている。父親が原因なのか?
明日、家族内のことは土井正樹に聞いてみるしかないな。それにしても彼女の周辺を取材していても彼女の事は語られるが、家庭の姿が見えない。そもそも家庭として成り立っていたんだろうか。
道路を見下ろし、俺は煙草を燻らせた。
――〇
プルルル……。
テーブルの上に置いていた携帯が鳴り、取るかどうか悩んだ末に電話を取った。
『ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんのせいでこっちは大変なんだけど?』
『……煩い。私のせいじゃない』
『はあ?お姉ちゃんとこの娘のせいだ。近所でも白い目で見られるし、取材が来たし、最悪』
『取材?あんたのところにも来たの?』
『ええ、来たわ。一度取材を受けて記事になればもうここには来ないって上木新聞社の記者が言っていたわ』
『取材を受けるの?』
『まだ受けてないけど取材依頼が来たから受けるつもり。この間、アラカシの記者から取材したいって言われたの。いつまでも家の周りに張り付かれても困るし、うちだって近所の目があるからね。子供達もいじめにあっているの。全部お姉ちゃんのせい』
『チッ』
『こっちも生活が掛かっているんだから。これ以上うちに迷惑を掛けないでよね!』
文句を言いたかっただけの電話に私は興味を無くし、返事をすることなく電話を切った。
最近は面倒なことばかり。我が家の周りにもウロウロとしている奴がいる。
苛立たしい。
お隣は良い顔をしてうちのことをあることないこと喋ったんだろう。
頭の中で何度あいつらを殺したか知れない。
全てが憎い。
記者も隣の家もみんな死ねばいい。
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