最後の魔法は、ひとを待つための魔法だった

まるねこ

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4クロエの過去3

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 するとユーグ師匠は手のひらから明るい光の玉を出した。

「すごい! ユーグ師匠、それは何?」
「クロエ、これが魔法だ」
「これが魔法?」

「ああ、そうだ。クロエは私を越える魔女になるだろう」
「私も魔法を使えるの?」

 ユーグ師匠は笑みを浮かべながら頷いている。

「この世界はな、魔力が多いほど髪の毛が明るい色をしているのだ。目の色は発色が強くなる。モードフェルン国の王族は明るい金髪に蒼や翠の目をしている。反対に平民のほとんどは魔法を使えない。茶色の髪に茶色い目が多いだろう?」

 ユーグ師匠の言葉に町の人たちのことを思い出す。お父さんもお母さんも茶色い髪に茶色い目だった。町の人も確かに茶色だったと思う。

「私がいた町はみんな茶色かった」

 私の言葉にユーグ師匠はそうだろうと頷いている。

「魔力が多ければ多いほど人々の持つ色は薄くなるが、黒色を持つものは特別だ。それがクロエ、お前だ」
「私?」

 突然私のことを言われてビクッとなる。私は特別なの?

「お前の髪も目の色も真っ黒だ。先祖返りというもので、お前の遠い祖先が魔力を多く持っていたのだろう。その能力が思い出したかのように突然子孫に出ることだ」
「私が先祖返り? でも、なんで私は忌み子って言われて石を投げられるの?」

 私は思い出して涙が出そうになるのをぐっと力を込めて耐えた。

 そんな私を見て師匠は目を細めて答える。

「それはクロエ、お前が王族に匹敵するほどたくさんの魔力を持つからだ。魔力を持つ者たちからすれば『平民のくせに』と妬ましく思うし、知識を与えて反乱を起こせば国は滅びる可能性だってあるからだ」
「私、国なんて滅ぼさないよ」

 ユーグ師匠の話に反論するように口を開いたが、師匠は首を横に振る。

「クロエはそう考えるだろうが、他の人間はそうではない。過去にも同じように魔法を使い、国を、多くの人を殺した者もいるのだ。そんな過去があるからこそ国や人々は黒を持つ者を排除するために忌み子と言って嫌っているのだ」

「師匠、私はこれからも忌み嫌われる存在のまま暮らさなければいけないの?」

 私は悲しくなって眉尻を下げながら師匠に聞いてみた。

「問題ない。クロエは私の弟子になったからな。これからお前は大魔法使いの見習いとして勉強することになる」
「……わかった。師匠、私、頑張るね」
 こうして私はユーグ師匠の元で魔法使いの見習いとしての生活が始まったのだ。

 ―――〇


「……師匠。私は師匠みたいな大魔女になれるのかな」

 ぽつりと呟いたその言葉は風に消えていく。

 泣き言を言ったところで相手はいない。師匠の言いつけを守らなければ。

 私は食事を終えた後、砂と化した身体の一部をファーロの葉に包み、アイカの葉とペールの葉やカポの実など複数の植物から煮出した定着液と一緒に飲み込む。

 口の中に広がる青臭い香りと、渋みとえぐみに思わずえづきたくなったけど、ぐっと堪えて飲み込んだ。

「まっずい。この味、なんとかならないのかな。これを飲んで眠りにつくんだっけ……」

 魔力が全身を駆け巡り、体中がポカポカと温かくなってくる。

 師匠の身体の一部を取り込んで自分の身体に馴染ませるためにはこうして眠りにつくのだ。


 私はそのままベッドに入り、眠りについた。
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