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姉妹
しおりを挟む私は神殿を出たあと、ティアの気配を探る。
微かな気配の糸を見つけた。
『ティアそこにいるんでしょ!』
言葉をかけても返事は帰って来ない。
私が一歩前に進むと距離が離れていく気配。
『ティア! 待って!』
私はティアを追いかけた。
異常なスピードで離れていく気配に追従するように走る。
補導された道ではなく森の中をグングンと加速していくその気配に今更ながらに後悔する。
姉としてなんでティアを突き放したりしたんだろうと。
木々を抜けながら目に付くのは黒銀の光が真上に伸びている柱。
結構な距離をオーラルを纏いながら進む。
ティアは気配を消しながらでも距離が縮まらないどころかグングンと離れていく。
否応にも自覚するのは才能の差。
ティアはリリアママ、ユウカママが教える勉学や剣術をすぐに覚えて応用までしてくる。
羨ましいと思った事は数え切れないし、魔力の総量も私より何倍もある。
でも私が姉である事には変わりなく、ティアはいつも私を頼ってきた。
それは憎らしくどうしようもなく愛らしかった。
ティアの優しさに漬け込んだ甘さ。
ミミリアさんはティアと向き合う覚悟をくれた。
もうティアを突き放したりしない。
だから。
『待って! 私をティアのお姉ちゃんでいさせて!』
私の声は届いてはいないだろう。
ティアの気配はとうに消えていたから。
消えた気配を頼りに進むと目の前に闇の神殿の扉が見えた。
息を切らせて私はその扉を開ける。
『随分遅い迎えですね。闇の神殿へようこそ』
仮面の人物が三人。その中の一人が女の人の声で出迎えてくれた。
黒銀に染まる空間でティアを探すと長い金色の髪が隠しきれていなく一人蹲っている仮面を付けたティアがいた。
「ティア!」
私はティアに謝らないといけないことがある。
「貴方はこの魔人に近づいたらダメですよ」
女の魔人が私とティアの間に入る。
「この仮面、鬱陶しいです」
そう言うと女の魔人は仮面を取り、投げ捨てる。
見知った顔の人物に目を見開く。
「フラン……さん」
フランさんは私を冷たい眼差しで見下ろしていた。
口を微かに開けるといつもの気さくな雰囲気など無く。
『貴方は魔人と戦いに来たのですか? それともティアちゃん?』
「ティアを追いかけて来たの」
真剣にフランさんの問いに答える。
「ふ~ん、そうですか。一人で試練をクリアするのが目的なんじゃないのですか?」
確かにティアにそう言って突き放したのは私だ。
「だけど!」
「随分都合がいいと思わないの?」
私の声を遮り、私の心の中を見透かしたようなフランさんの問いに口ごもる。
「先に生まれただけの人には妹の気持ちなんてわからないでしょうね」
フランさんはパパの妹だ。だから私なんかよりもティアの気持ちがわかるんだと思う。
「実は私、お兄様との血の繋がりはないんですよ」
耳を疑うような真実をフランさんはサラリと言ってのけた。
「パパとフランさんが兄妹じゃない?」
「いえ、兄妹なのは確かですよ。貴方たち姉妹よりもね」
そんな事ない! 心の中で叫んでも私の口からその言葉は出ない。
「私が昔の事を運良く忘れてなくて良かったですね、ここは貴方に少し恩返しでもしましょうか」
「恩返し?」
フランさんは鞘から魔剣グランゼルを引き抜く。
剣の勇者が持っていたとされる魔剣。
私も鞘から剣を引き抜き集中力を高める。
先に動いたのはフランさん。
地を駆けて、すぐさま距離を詰めてきた。
私の視界は金色に染まる。
『精霊化』
ゆっくりと流れる時間の中、グランゼルもゆっくりと私に迫る。
怖い。
ふと想った感情に突き動かされてグランゼルから距離を取る。
その瞬間、私がいたはずの空間をスキップしたかのようにグランゼルは通り過ぎていた。
「へぇ、アレを避けるとは思いませんでしたね」
気を抜くと殺られる。そう直に感じる。
「恩返しとやらでティアに会わせてくれるんじゃないの?」
「どうせ貴方のような人にティアちゃんの気持ちはわからないでしょうし、魔人としての私を知られたからには生きて返すと思ってるのですか?」
フランさんは普段気さくな人だ、こんな事を言う人じゃないのも知っている。
そしてティアの本当の気持ちなんて私にはわからない。
だけど私だって負けられない。
私は持っている剣を鞘に戻す。
気に食わない力……でも今は負けられない。
ユウカママに教わったスキルに近い魔法。
血の力を媒介に魔力を通すと血脈の中で結び付きが強い人のスキルが使える。
今思えばこの力を初めて使った時から夢で銀髪の少年が出てくるようになったと思う。
『血統解放リミテッド・アビリティー』
私の左手に召喚された黒剣は金色のオーラを纏っている。
この剣を上手く使える人物は一人しか思い浮かばない事に嫌悪感を抱く。
夢の中の少年が私を見下し笑う姿が否応に想像出来るからだ。
その力を私に上乗せする。
『オールコンバート』
違和感のあった黒剣を握り直すとシックリと手に馴染む感覚がする。
長年愛用していた剣のような。
私の中にあった魔力が全て消えているような違和感はあるが、精霊化は溶けていない不思議な感覚。
勝手に剣を持つ手が動くと流れるようにフランさんを黒剣の尖端で指す。
ゆびで相手を指すように気軽に。
口が勝手に動く。
『手加減してやるからかかってこいよ』
フランさんは目を開き驚いた素振りを見せる。
「貴方は今、誰の力を使ってるのかは知らないでしょうけど……」
フランさんの魔力量が爆発的に上がっていく。
『やっと私も本気が出せます』
フランさんの目の色が変わり、金色の瞳が私を射抜いた。
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