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6・お祭りの準備です! 【ドーナツ】/【指輪型の護符】
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『赤の止まり木』が開店して早くも三週目です。
来週はお祭りなので、お店もお休みする予定です。
お休みはなにをしましょう?
お祭りを見て回るのも楽しそうだし、お祭りが終わったあとに備えて商品を補充しておくのもいいでしょう。
迷宮に潜って素材を採取できないのは残念ですが、一週間あるのでべつの町から取り寄せてもいいですね。
なんなら乗合馬車に乗って、お師匠様のところへ顔を出しましょうか。
先週出した手紙の返事で、ゴーちゃんに会いたいと言ってくれてましたし。
故郷のモラン村へは……一週間ではちょっと無理ですね。
「エメさん、先日はありがとうございました。作っていただいた武器、とても好評ですよ。七名の聖騎士以外にも欲しがるものが出ています」
「……はあ、ありがとうございます」
「ゴッ♪」
依頼を受けたら騎士が毎日進捗を確認に来たので、わたしは急いで武器を製造して納品しました。
そう、先週中に納品したんです!
ゴーちゃんがいい仕事をしてくれました。
わたしも頑張りましたよ。付与効果をふたつずつつけることができたんです。
原料の魔鉱は神殿が用意してくれたし報酬もなかなかだったので、受けて良かったなあと思っていたのですが、なんでこの騎士は依頼が完了したあとも店に来るのでしょう。
閉店後に訪れるのが日課になっちゃってるんでしょうか。
いえ、前からよく顔を出してましたね。
冒険都市ラビラントに来たばかりのわたしを心配してくれての行動なのはわかっているので、ありがたいことだとは思っています。
でも……わたしもう大丈夫ですよ?
商人ギルドのオーギュストさんに負けてもらっていた登録料の差額……今月分の金貨二十九枚と銀貨九枚はどうしても受け取ってもらえなかったんですけど、最終的にこの店の登録料は毎月金貨一枚ということになりました。
「あ、ひとりで話してごめんなさい。今日は新しい依頼を持って来たんです」
「新しい依頼、ですか?」
「ゴ?」
うーん。断りやすい依頼だといいですね。ゴーちゃんがやりたがればべつですが。
「来週の祭りで孤児院の子どもたちが売るための商品を作っていただけませんか? 聖騎士の武器を作っていただいたときと同じように、材料はこちらで用意いたします」
「孤児院の子どもたちが売るものですか」
「ゴ?」
意外な依頼内容だったので、少し驚きました。
ああ、でも孤児院は冒険都市ラビラントの中心にある大神殿に併設されているから、大神殿所属の聖騎士団の団長が依頼に来る案件の範疇かもしれませんね。
そして……断りにくいですね、これ。
わたしは両親健在なので、なんだか罪悪感を覚えます。
金髪の騎士が微笑みます。
「そうです。孤児院では普段から飲み物やお菓子を作って売っているんですが、祭りのときは商人ギルドで屋台を借りて本格的に商売をするんですよ。大神殿からの援助があるとはいえ、ここは冒険者の町です。危険な迷宮で両親を失う子どもは絶えません。院長でもある大神官のシュザンヌ様が私費を投じてくださってますが、それでも……」
……そんなこと聞かされたら断りにくいです。
「育てていただいたお礼に私も多少の援助はさせてもらっているんですが焼け石に水で、こんなことなら最初の予定通り冒険者になって一獲千金を目指せば良かったと思うこともありますよ」
「騎士……さんは孤児院出身なんですか?」
「ゴゴ?」
「はい。冒険者だった両親が迷宮で亡くなって孤児院に引き取られました」
……これは、断れません。
それに昔冒険者を目指していたことがあるのなら、仲間のような気がします。
「あの……騎士、さんのお名前はなんでしたか?」
「フレデリクですよ」
「フレデリクさん、わたしで良かったら、その依頼お受けします」
わたしが言うと、彼は心底嬉しそうな笑顔になりました。
うん、騎士は騎士でもフレデリクさんは良い人です。
「どんな商品がいいですか? 食べ物のほうがいいんでしょうかね?」
「ゴ!」
ゴーちゃんが、自信満々に自分の胸を叩きました。
紅蓮の魔鉱製の心臓を持つゴーちゃんは、体内で料理もできるのです。
油が飛び散る揚げ物なんかはゴーちゃんにおまかせです。
一日かけて煮込もうと思ってシチューのお鍋を体内に収納してもらったときは、店内に美味しそうな匂いが充満してしまいました。
扉の隙間から外にまで匂いが漏れて、飲食店と間違えて入ってきた人までいたので、煮込み料理は封印しました。
「こだわりませんよ。エメさんの作ってくださった武器の付与効果が素晴らしかったので、護符のようなものでもいいかと思っているのですが」
「ゴゴ♪」
ゴーちゃんのおかげで、護符もいろいろな形のものが作れるようになりました。
護符は錬金術だけで作れるのですが、細やかな細工は炉がないと難しいんですよね。
「そうですね。食べ物ならドーナツ、護符なら指輪型のものはどうでしょう?」
お祭りのときは観光客も押し寄せます。
ドーナツなら歩き疲れたときの糖分補給として、指輪型護符なら冒険都市ラビラントを訪れた記念として、どちらにしても売れることでしょう。
「いいですね、ドーナツ。揚げ物は油が飛び跳ねるので、孤児院ではあまり作らないんですよ」
「ゴゴ、ゴゴゴ!」
フレデリクさんはドーナツ、ゴーちゃんは指輪型護符が良いようです。
【ドーナツ】/【指輪型の護符】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【セーブしますか?】
【はい】/【いいえ】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
→【はい】/【いいえ】
【セーブしました】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さてどうしましょう?
【ドーナツ】/【指輪型の護符】←
「指輪型の護符を作ることにします」
「わかりました。何個くらい作れそうですか? それに合わせて魔鉱を用意します」
「ゴー!」
わたしとゴーちゃんとフレデリクさんは、頭を突き合わせて話を煮詰めました。
来週はお祭りなので、お店もお休みする予定です。
お休みはなにをしましょう?
お祭りを見て回るのも楽しそうだし、お祭りが終わったあとに備えて商品を補充しておくのもいいでしょう。
迷宮に潜って素材を採取できないのは残念ですが、一週間あるのでべつの町から取り寄せてもいいですね。
なんなら乗合馬車に乗って、お師匠様のところへ顔を出しましょうか。
先週出した手紙の返事で、ゴーちゃんに会いたいと言ってくれてましたし。
故郷のモラン村へは……一週間ではちょっと無理ですね。
「エメさん、先日はありがとうございました。作っていただいた武器、とても好評ですよ。七名の聖騎士以外にも欲しがるものが出ています」
「……はあ、ありがとうございます」
「ゴッ♪」
依頼を受けたら騎士が毎日進捗を確認に来たので、わたしは急いで武器を製造して納品しました。
そう、先週中に納品したんです!
ゴーちゃんがいい仕事をしてくれました。
わたしも頑張りましたよ。付与効果をふたつずつつけることができたんです。
原料の魔鉱は神殿が用意してくれたし報酬もなかなかだったので、受けて良かったなあと思っていたのですが、なんでこの騎士は依頼が完了したあとも店に来るのでしょう。
閉店後に訪れるのが日課になっちゃってるんでしょうか。
いえ、前からよく顔を出してましたね。
冒険都市ラビラントに来たばかりのわたしを心配してくれての行動なのはわかっているので、ありがたいことだとは思っています。
でも……わたしもう大丈夫ですよ?
商人ギルドのオーギュストさんに負けてもらっていた登録料の差額……今月分の金貨二十九枚と銀貨九枚はどうしても受け取ってもらえなかったんですけど、最終的にこの店の登録料は毎月金貨一枚ということになりました。
「あ、ひとりで話してごめんなさい。今日は新しい依頼を持って来たんです」
「新しい依頼、ですか?」
「ゴ?」
うーん。断りやすい依頼だといいですね。ゴーちゃんがやりたがればべつですが。
「来週の祭りで孤児院の子どもたちが売るための商品を作っていただけませんか? 聖騎士の武器を作っていただいたときと同じように、材料はこちらで用意いたします」
「孤児院の子どもたちが売るものですか」
「ゴ?」
意外な依頼内容だったので、少し驚きました。
ああ、でも孤児院は冒険都市ラビラントの中心にある大神殿に併設されているから、大神殿所属の聖騎士団の団長が依頼に来る案件の範疇かもしれませんね。
そして……断りにくいですね、これ。
わたしは両親健在なので、なんだか罪悪感を覚えます。
金髪の騎士が微笑みます。
「そうです。孤児院では普段から飲み物やお菓子を作って売っているんですが、祭りのときは商人ギルドで屋台を借りて本格的に商売をするんですよ。大神殿からの援助があるとはいえ、ここは冒険者の町です。危険な迷宮で両親を失う子どもは絶えません。院長でもある大神官のシュザンヌ様が私費を投じてくださってますが、それでも……」
……そんなこと聞かされたら断りにくいです。
「育てていただいたお礼に私も多少の援助はさせてもらっているんですが焼け石に水で、こんなことなら最初の予定通り冒険者になって一獲千金を目指せば良かったと思うこともありますよ」
「騎士……さんは孤児院出身なんですか?」
「ゴゴ?」
「はい。冒険者だった両親が迷宮で亡くなって孤児院に引き取られました」
……これは、断れません。
それに昔冒険者を目指していたことがあるのなら、仲間のような気がします。
「あの……騎士、さんのお名前はなんでしたか?」
「フレデリクですよ」
「フレデリクさん、わたしで良かったら、その依頼お受けします」
わたしが言うと、彼は心底嬉しそうな笑顔になりました。
うん、騎士は騎士でもフレデリクさんは良い人です。
「どんな商品がいいですか? 食べ物のほうがいいんでしょうかね?」
「ゴ!」
ゴーちゃんが、自信満々に自分の胸を叩きました。
紅蓮の魔鉱製の心臓を持つゴーちゃんは、体内で料理もできるのです。
油が飛び散る揚げ物なんかはゴーちゃんにおまかせです。
一日かけて煮込もうと思ってシチューのお鍋を体内に収納してもらったときは、店内に美味しそうな匂いが充満してしまいました。
扉の隙間から外にまで匂いが漏れて、飲食店と間違えて入ってきた人までいたので、煮込み料理は封印しました。
「こだわりませんよ。エメさんの作ってくださった武器の付与効果が素晴らしかったので、護符のようなものでもいいかと思っているのですが」
「ゴゴ♪」
ゴーちゃんのおかげで、護符もいろいろな形のものが作れるようになりました。
護符は錬金術だけで作れるのですが、細やかな細工は炉がないと難しいんですよね。
「そうですね。食べ物ならドーナツ、護符なら指輪型のものはどうでしょう?」
お祭りのときは観光客も押し寄せます。
ドーナツなら歩き疲れたときの糖分補給として、指輪型護符なら冒険都市ラビラントを訪れた記念として、どちらにしても売れることでしょう。
「いいですね、ドーナツ。揚げ物は油が飛び跳ねるので、孤児院ではあまり作らないんですよ」
「ゴゴ、ゴゴゴ!」
フレデリクさんはドーナツ、ゴーちゃんは指輪型護符が良いようです。
【ドーナツ】/【指輪型の護符】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【セーブしますか?】
【はい】/【いいえ】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
→【はい】/【いいえ】
【セーブしました】
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さてどうしましょう?
【ドーナツ】/【指輪型の護符】←
「指輪型の護符を作ることにします」
「わかりました。何個くらい作れそうですか? それに合わせて魔鉱を用意します」
「ゴー!」
わたしとゴーちゃんとフレデリクさんは、頭を突き合わせて話を煮詰めました。
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