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第一話 オオカミさんに助けられ
3・とても不思議な夢を見ました。
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──ミントの香りの中で夢を見た。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「朗くん、朗くん!」
コタツに入ってゲーム機のコントローラーを握り、わたしは隣に座った幼なじみに助けを求めた。
「敵が来たよ! どうしよう、朗くんのオオカミさんが死んじゃう!」
「慌てんな、ちょっと下がって距離を取れ」
「距離を取る?」
「そうだ。その狼は全魔法習得済みだ。熟練度も上げてあるから、離れて魔法を使ってれば……って! 噛まれて毒食らったぞ? 早く状態異常を回復する魔法を……おい、なにして……あああああっ!」
頭を抱えて叫んだ後、朗くんはぽつりと、ウソだろ、と呟いた。
テレビの画面には、ゲームオーバーの文字が表示されている。
わたしは持っていたコントローラーを朗くんに渡す。
「ゴメン。朗くんのオオカミさん殺しちゃった」
「いや、べつにいい。セーブしてたデータをロードすればいいだけだから。……そうだ」
コントローラーを受け取った朗くんは、セーブデータの画面を呼び出して、なにやら操作を始めた。
「……アバターをNPC引き継ぎにして、あ、そうすると全属性の魔法が使えなくなんのか。そりゃそうか、主人公じゃなくなるんだもんな。じゃあ……風属性にしておくか。住居は……クロ村の家でいいか、うん」
わたしは溜息をついて、コタツの上のミカンを手に取った。
皮をむいて、身を口に入れる。
朗くんがわたしを見た。
「いくらアバターを成長させてても、その分敵も強くなってんだからゲーム初心者のお前には難しかったよな。くるみ、今度は最初からやってみろ」
「えー」
わたしはミカンを飲み込んで、コタツの上に顔を伏せた。
「もういいよ、朗くんの見てるほうが楽しいもん」
「そう言うなよ。動物飼ったり畑で野菜育てたり、素材でアイテムを調合したりするのが楽しそうって言ってただろ?」
「……うん」
「クリアデータを利用して、俺のアバターをNPCにしといた。お前専用の護衛だ。最初の武闘大会は負けてもゲームオーバーにならないから、宿屋で猫探しのイベント受けて銀貨もらったら定期馬車に乗ってオングル村へ行くんだ。俺の狼が住むクロ村は街道沿いじゃないから、オングル村で月の神殿の女司祭に護衛を頼むといい。女キャラなら初回に限り無料で仲間になってくれるから」
「そんないっぺんに言われても忘れちゃうよ!」
「悪い。ところで、お前のアバターこれでいいか?」
朗くんは話しながらも、ゲームを操作していたみたいだ。
テレビの画面には女の子の3Dモデルが映し出されている。
灰色のローブを身に纏った、黒髪で黒い瞳の少女だ。
肩にかからない長さの髪のその少女は、鏡で見るわたしによく似ていた。
「……ゲームなんだから、もうちょっと美人にできないの?」
「十分可愛いだろうが」
「んー……せめて髪の色と瞳の色だけでも、ファンタジーっぽいのにしてほしいな」
「この顔で金髪碧眼は似合わないだろ。……これでどうだ?」
なにやら調節されて、少女の髪と瞳が飴色に変わった。
もう一声お願いしたいところだったけど、わたしによく似たこの顔では、華やかな赤毛や金髪は似合わないだろう。
「うん、まあ、いいよ」
「初期魔法なんにする? 戦いは狼や護衛が自動でするから回復魔法にしとくか?」
「朗くんが決めてくれたんでいいよ」
「んじゃNPC狼を風属性にしたから、お前には大地属性の最大回復魔法を設定しておく。MP消費はデカいけど、HP全回復状態異常も回復、仲間の戦闘不能も回復できるヤツだ」
「はいはい」
「もうちょっと気ぃ入れて聞けよ」
「だって難しいんだもん。……最初からやってもできない気がする」
「今度は大丈夫だって。戦闘は仲間に任せればいいし、お前がやりたがってた牧畜や農業は狼の家ですればいい。改装してるから屋根裏部屋で調合もできるぞ」
「仲間の家でできるの? 神殿にいた羊から間違って毛を取っただけで、牢屋に入れられてた気がするんだけど」
「あー、仲間の家でも盗難扱いになるけど結婚した後なら問題ない」
「結婚?」
「何度か一緒に戦闘して好感度上げたら、月の神殿に行って婚活用のアイテムを買うんだ。さらに好感度を上げて狼のセリフが変わったときプロポーズすれば結婚できる。結婚したら仲間の家は共有財産だ」
「だったら朗くん、わたしも狼にして。あ、熊とか狐のほうがいいかなあ」
「俺はケモナーじゃないから却下」
「ケモナー?」
「お前みたいなモフモフ好きのこと」
「確かに朗くんよりわたしのほうがモフモフ好きだと思うけど、だったらなんで自分のキャラクターをオオカミさんにしてたの?」
「だってお前はモフモフが好きじゃん」
「うん、好きだよ?」
朗くんはキャラメイクを終えて、わたしにコントローラーを手渡してきた。
「俺がゲームしてるとき、見てるお前が少しでも楽しいようにと思って自分のアバターは狼にしたんだよ。……今度はお前がプレイして俺が見るんだから、俺が見て楽しいアバターでしてくれよ」
「わたしそっくりなキャラクターを見て楽しいの?」
「楽しいよ。……ほら、オープニングイベントが始まったぞ。バベル封印暦三百八十五年八月、フォーレ王国の都にて武闘大会の始まりだ。これは負けてもいいからな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──今はバベル封印暦三百八十五年の四月。
そんなことを思いながら、わたしは目覚めた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「朗くん、朗くん!」
コタツに入ってゲーム機のコントローラーを握り、わたしは隣に座った幼なじみに助けを求めた。
「敵が来たよ! どうしよう、朗くんのオオカミさんが死んじゃう!」
「慌てんな、ちょっと下がって距離を取れ」
「距離を取る?」
「そうだ。その狼は全魔法習得済みだ。熟練度も上げてあるから、離れて魔法を使ってれば……って! 噛まれて毒食らったぞ? 早く状態異常を回復する魔法を……おい、なにして……あああああっ!」
頭を抱えて叫んだ後、朗くんはぽつりと、ウソだろ、と呟いた。
テレビの画面には、ゲームオーバーの文字が表示されている。
わたしは持っていたコントローラーを朗くんに渡す。
「ゴメン。朗くんのオオカミさん殺しちゃった」
「いや、べつにいい。セーブしてたデータをロードすればいいだけだから。……そうだ」
コントローラーを受け取った朗くんは、セーブデータの画面を呼び出して、なにやら操作を始めた。
「……アバターをNPC引き継ぎにして、あ、そうすると全属性の魔法が使えなくなんのか。そりゃそうか、主人公じゃなくなるんだもんな。じゃあ……風属性にしておくか。住居は……クロ村の家でいいか、うん」
わたしは溜息をついて、コタツの上のミカンを手に取った。
皮をむいて、身を口に入れる。
朗くんがわたしを見た。
「いくらアバターを成長させてても、その分敵も強くなってんだからゲーム初心者のお前には難しかったよな。くるみ、今度は最初からやってみろ」
「えー」
わたしはミカンを飲み込んで、コタツの上に顔を伏せた。
「もういいよ、朗くんの見てるほうが楽しいもん」
「そう言うなよ。動物飼ったり畑で野菜育てたり、素材でアイテムを調合したりするのが楽しそうって言ってただろ?」
「……うん」
「クリアデータを利用して、俺のアバターをNPCにしといた。お前専用の護衛だ。最初の武闘大会は負けてもゲームオーバーにならないから、宿屋で猫探しのイベント受けて銀貨もらったら定期馬車に乗ってオングル村へ行くんだ。俺の狼が住むクロ村は街道沿いじゃないから、オングル村で月の神殿の女司祭に護衛を頼むといい。女キャラなら初回に限り無料で仲間になってくれるから」
「そんないっぺんに言われても忘れちゃうよ!」
「悪い。ところで、お前のアバターこれでいいか?」
朗くんは話しながらも、ゲームを操作していたみたいだ。
テレビの画面には女の子の3Dモデルが映し出されている。
灰色のローブを身に纏った、黒髪で黒い瞳の少女だ。
肩にかからない長さの髪のその少女は、鏡で見るわたしによく似ていた。
「……ゲームなんだから、もうちょっと美人にできないの?」
「十分可愛いだろうが」
「んー……せめて髪の色と瞳の色だけでも、ファンタジーっぽいのにしてほしいな」
「この顔で金髪碧眼は似合わないだろ。……これでどうだ?」
なにやら調節されて、少女の髪と瞳が飴色に変わった。
もう一声お願いしたいところだったけど、わたしによく似たこの顔では、華やかな赤毛や金髪は似合わないだろう。
「うん、まあ、いいよ」
「初期魔法なんにする? 戦いは狼や護衛が自動でするから回復魔法にしとくか?」
「朗くんが決めてくれたんでいいよ」
「んじゃNPC狼を風属性にしたから、お前には大地属性の最大回復魔法を設定しておく。MP消費はデカいけど、HP全回復状態異常も回復、仲間の戦闘不能も回復できるヤツだ」
「はいはい」
「もうちょっと気ぃ入れて聞けよ」
「だって難しいんだもん。……最初からやってもできない気がする」
「今度は大丈夫だって。戦闘は仲間に任せればいいし、お前がやりたがってた牧畜や農業は狼の家ですればいい。改装してるから屋根裏部屋で調合もできるぞ」
「仲間の家でできるの? 神殿にいた羊から間違って毛を取っただけで、牢屋に入れられてた気がするんだけど」
「あー、仲間の家でも盗難扱いになるけど結婚した後なら問題ない」
「結婚?」
「何度か一緒に戦闘して好感度上げたら、月の神殿に行って婚活用のアイテムを買うんだ。さらに好感度を上げて狼のセリフが変わったときプロポーズすれば結婚できる。結婚したら仲間の家は共有財産だ」
「だったら朗くん、わたしも狼にして。あ、熊とか狐のほうがいいかなあ」
「俺はケモナーじゃないから却下」
「ケモナー?」
「お前みたいなモフモフ好きのこと」
「確かに朗くんよりわたしのほうがモフモフ好きだと思うけど、だったらなんで自分のキャラクターをオオカミさんにしてたの?」
「だってお前はモフモフが好きじゃん」
「うん、好きだよ?」
朗くんはキャラメイクを終えて、わたしにコントローラーを手渡してきた。
「俺がゲームしてるとき、見てるお前が少しでも楽しいようにと思って自分のアバターは狼にしたんだよ。……今度はお前がプレイして俺が見るんだから、俺が見て楽しいアバターでしてくれよ」
「わたしそっくりなキャラクターを見て楽しいの?」
「楽しいよ。……ほら、オープニングイベントが始まったぞ。バベル封印暦三百八十五年八月、フォーレ王国の都にて武闘大会の始まりだ。これは負けてもいいからな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
──今はバベル封印暦三百八十五年の四月。
そんなことを思いながら、わたしは目覚めた。
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