オオカミさんといっしょ!

豆狸

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第一話 オオカミさんに助けられ

6・灰色子狼兄弟参上!

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 押し寄せてくる小さなふたつの足音に続いて、一階から声が響いてくる。

「ルー坊や、もう起きたかい? 朝食持って来たよ。後、うちのチビどもが行ったから気をつけな」
「兄ちゃんおはよー!」
「はよー!」

 階段から飛び上がってきたふたつの灰色の塊が、オオカミさんに飛びついた。

「「あ」」

 わたしとオオカミさんの声が重なった。
 ふたつのふわふわに飛びつかれた瞬間に、オオカミさんは毛むくじゃらの黒い狼に戻ってしまったのだ。
 灰色の子狼が顔を見合わせている。
 もちろんちゃんと服は着ていた。獣化族の子どもたちだ。
 ズボンから飛び出したフサフサの尻尾が揺れている。

「さっきのルー兄ちゃん、なんか変じゃなかった?」
「変だたじょ」

 それから子狼たちは、黒い瞳にわたしを映して叫んだ。

「尻尾がない!」
「しっぽぽ!」

 素敵な灰色の尻尾を持つふたりには、それはとても不思議なことに思えたらしい。

 ……というか、可愛い! すごい可愛い!

 このふたりの子狼たちを抱きしめたくてたまらない気持ちが、夢で言われたモフモフ好きということなんだろうか。
 実を言うと、オオカミさんの黒い毛並みや尻尾もモフモフしたいわたしなのだった。
 それが失礼だということはわかっているので、口に出したりしないけどね。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 オオカミさん家のお向かいに住むイネスさんは、焦げ茶色の狼だった。
 さっきオオカミさんに飛びついてきた灰色兄弟はイネスさんのお孫さんで、彼女と同じ焦げ茶色の息子さんより灰色のお嫁さんに似ているのだという。
 イネスさんはご自宅の畑で採れた渦巻ダイコンと罠にかかった毒ウサギの肉を煮込んだ料理を持って来てくれていた。
 オオカミさんが貯蔵庫から作り置きのパンを出してきて、一階の台所で簡単な自己紹介だけ済ませたら朝食が始まる。
 わたしの膝の上には灰色狼兄弟の小さいほうジュールくんがいて、隣には大きいほうのジョゼくんが座っていた。
 ちょっぴり重いけど、可愛いので問題ない。
 ズボンのお尻から突き出ている尻尾はフサフサだ♪
 ジョゼくんは四、五歳で、ジュールくんは二歳くらいかな。

「なあなあ、ノワって牙ないけど肉食べれるの?」
「のー?」
「食べられるよ。でもあんまりいっぱいは食べられないから、ちょっと助けてくれる?」
「いいぜ」
「いーじぇ」

 煮込みのお肉と野菜を小さく切って、パンに載せてふたりに渡す。
 オオカミさんは魔法と魔具の研究をしているそうで、料理もパンも魔具を使って食べやすく温められていた。
 わたしもパンにお肉と野菜を載せて口に運ぶ。
 毒抜き済みの毒ウサギのお肉は、うっすら紫色に光っている。
 暗紅色に赤い渦巻のある渦巻ダイコンの色が移ったのではなく、毒ウサギが持っている闇属性の魔法の輝きだ。
 毒ウサギはその魔法を攻撃ではなく、ほかの野獣やモンスターが食べられないよう植物を汚染してエサ場を独占するために使っている。
 ミーヌ村の畑が汚染されたとき、わたしの回復魔法で毒抜きしたこともあったっけ。
 生まれたときから持っていた魔法は使うごとに熟練度が上がり、応用も効かせられるようになっていた。
 柔らかく煮込まれたウサギ肉はほんのり甘い。

「……美味しい。ミーヌ村ではあんまり食べなかったんですけど、こちらではよくモンスターのお肉を食べるんですか?」
「食べるよ」
「食べるじょ」

 わたしの質問に答えて、ジョゼくんとジュールくんが不思議な動きをする。

「魔法覚えられたら嬉しいじゃん」
「マホー!」

 兄弟は魔法を使うときの動きをしたつもりのようだ。
 イネスさんも頷く。

「魔法を持ってるモンスターを倒すほうが確実だけど、食べただけでも魔法を覚えられることがあるからね。年々強くなっていくモンスターに立ち向かうには、どうしても魔法の力が必要だよ」

 魔法が封印される前のモンスターは、強い魔力を吸収したために巨大化してしまっただけの野獣だった。
 体内に溜まった魔力を吐いたりはするけれど、知性は低くモンスターとしての特性は遺伝しない、一代限りの存在だった。
 今のモンスターは魔法を使うし知性も高い。
 そしてなにより、モンスターがモンスターを産んで増えていく。
 モンスターを産むのは封印された魔法のかけらを食らった種族の女王だが、女王が産んだ上位種だけでなく、上位種と近しい野獣との交配で生まれた下位種のモンスターにも魔法は受け継がれていく。
 毒ウサギも上位種の猛毒ウサギと野生のウサギの交配から生まれたとされている。
 草食の毒ウサギと違い、猛毒ウサギは雑食で人間も食う。
 恐ろしいことに、年を経て経験を積んだ下位種は上位種に進化する。
 おまけに上位種は、同じ属性の魔法を持つほかのモンスターを食らうことで、女王から受け継いだ以外の魔法まで身につけていく。
 魔法が封印されたバベルの封印迷宮の場所を忘れてしまった人間は、それらのモンスターを倒すことでしか魔法を習得できない。

「今どき魔法をとやかく言うなんて、星の神殿の狂信者かミーヌ村のガマガエル村長くらいだよ。毒が採れて役に立つだけ、本物のガマガエルのほうがマシだよね」

 溜息とともに漏らしたイネスさんの言葉を聞いて、わたしは吹き出してしまった。
 うん。確かに村長はガマガエルに似てました。
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