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第一話 オオカミさんに助けられ
5・同じ夢を見てたの?
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自分の獣化魔法が解けていることに気づいたオオカミさんが、興奮した口調でしゃべり始める。
「実は、俺はこの姿になるのは初めてなんだ。思春期にも獣化が解けなくて、亡くなった母にも心配されていた。だって狼を模した魔法で全身を覆った獣化の状態では生殖活動ができな……あ」
そこまで言って、彼はわたしを見つめて真っ赤になった。
わたしも赤くなっているのだと思う。
燃え上がりそうな顔を伏せて、彼に返す言葉を探す。
「えっと、あの……制御できて良かったです、ね?」
「いや、これは自分で制御しているんじゃない。魔力が暴走して魔法の術式が崩れているだけだと思う。だがこの状態を認識することで、自分の意思でも制御できるようになるはずだ。魔法自体が封印されているから、獣化を解除できる時間は限られるだろうが」
「魔力の暴走?……大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。魔力の暴走といっても、世界を流れる魔力を吸収し過ぎたモンスターがなるような状態じゃない。興奮した精神が自分の体内を流れる魔力を乱しているんだ」
「興奮した精神?」
「そうだ。たぶん俺は昨夜見た君の出てくる夢で……」
オオカミさんが口を押さえて真っ赤になる。
わたしは彼につかみかかった。
彼の言葉で思い出したのだ。
「夢ですか?」
「どうした、ノワ」
「わ、わたしも夢を見ました。オオカミさんの……今の姿のオオカミさんが出てくる夢です。えっと、夢の中のわたし、たぶんわたしは、オオカミさんのこと『ロークン』って呼んでました」
そうだ、思い出した。
夢を見ているときはなにも思わなかったけれど、今にして思うと不思議な世界の夢だった。
見たこともないものがたくさんあった。
あの四角くて温かい『コタツ』は魔具の一種だったのかな。
オオカミさんが、じっとわたしを見つめる。
「……俺は君を『くるみ』と呼んでいた。うん、そうだ。確か俺のルーと同じ古い言葉では、ノワは胡桃を表しているんじゃなかったか。しかし……」
オオカミさんは赤く染まった顔をわたしから逸らした。
「君もあんな……いや、生き物として間違った行いではないが……あんな夢を見ていたのか」
「はい。そういえば幻みたいなのを映す四角いヤツ……『テレビ』っていうのも魔具なんでしょうか。あれに映ってたの、獣化したときのオオカミさんに似てませんでしたか? なんか手元のもので幻を操ってましたよね」
「……テレビ?」
「コタツに入ってテレビ見てましたよね。それでロークンが、わたしそっくりな幻を作って。くるみは髪も目も真っ黒だったのを幻では色を変えて」
「あ、ああ。確かに夢の中のくるみは黒髪で黒い瞳だった。髪の長さや顔立ちは君と同じだったが……あー、ノワ。君が見た夢のふたりはテレビとかいうものを見ていたのか」
「幻を操る遊びをしていたみたいでした。仲の良い幼なじみでしたよね。オオカミさんの夢では違ったんですか?」
「俺? お、俺の夢の中のふたりは……な、仲は良かった。うん、仲良くしてたぞ」
うろたえるオオカミさんに、わたしは首を傾げた。
よくわからないけれど、思春期を過ぎた男性にとって家族や恋人以外の女性と仲良くするのは恥ずかしいことなのかもしれない。
たとえそれが夢の話でも。
村長の息子で今は自警団の頭をしているレオンも、思春期になった途端幼なじみのわたしに冷たくなったもの。
まあ、ミーヌ村は小さいからみんな幼なじみなんだけどね。
「あ、あの……ただの夢ですから、お互いあまり気にしないようにしましょうか」
「そうだな。うん、そうしよう。それより今は朝食の準備を……」
──タタタ、タタタタタ。
廊下の端から、だれかが階段を上がってくる音が聞こえてきた。
足音はひとつじゃない、ふたつある。
どちらも小さく軽い音だった。
「実は、俺はこの姿になるのは初めてなんだ。思春期にも獣化が解けなくて、亡くなった母にも心配されていた。だって狼を模した魔法で全身を覆った獣化の状態では生殖活動ができな……あ」
そこまで言って、彼はわたしを見つめて真っ赤になった。
わたしも赤くなっているのだと思う。
燃え上がりそうな顔を伏せて、彼に返す言葉を探す。
「えっと、あの……制御できて良かったです、ね?」
「いや、これは自分で制御しているんじゃない。魔力が暴走して魔法の術式が崩れているだけだと思う。だがこの状態を認識することで、自分の意思でも制御できるようになるはずだ。魔法自体が封印されているから、獣化を解除できる時間は限られるだろうが」
「魔力の暴走?……大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。魔力の暴走といっても、世界を流れる魔力を吸収し過ぎたモンスターがなるような状態じゃない。興奮した精神が自分の体内を流れる魔力を乱しているんだ」
「興奮した精神?」
「そうだ。たぶん俺は昨夜見た君の出てくる夢で……」
オオカミさんが口を押さえて真っ赤になる。
わたしは彼につかみかかった。
彼の言葉で思い出したのだ。
「夢ですか?」
「どうした、ノワ」
「わ、わたしも夢を見ました。オオカミさんの……今の姿のオオカミさんが出てくる夢です。えっと、夢の中のわたし、たぶんわたしは、オオカミさんのこと『ロークン』って呼んでました」
そうだ、思い出した。
夢を見ているときはなにも思わなかったけれど、今にして思うと不思議な世界の夢だった。
見たこともないものがたくさんあった。
あの四角くて温かい『コタツ』は魔具の一種だったのかな。
オオカミさんが、じっとわたしを見つめる。
「……俺は君を『くるみ』と呼んでいた。うん、そうだ。確か俺のルーと同じ古い言葉では、ノワは胡桃を表しているんじゃなかったか。しかし……」
オオカミさんは赤く染まった顔をわたしから逸らした。
「君もあんな……いや、生き物として間違った行いではないが……あんな夢を見ていたのか」
「はい。そういえば幻みたいなのを映す四角いヤツ……『テレビ』っていうのも魔具なんでしょうか。あれに映ってたの、獣化したときのオオカミさんに似てませんでしたか? なんか手元のもので幻を操ってましたよね」
「……テレビ?」
「コタツに入ってテレビ見てましたよね。それでロークンが、わたしそっくりな幻を作って。くるみは髪も目も真っ黒だったのを幻では色を変えて」
「あ、ああ。確かに夢の中のくるみは黒髪で黒い瞳だった。髪の長さや顔立ちは君と同じだったが……あー、ノワ。君が見た夢のふたりはテレビとかいうものを見ていたのか」
「幻を操る遊びをしていたみたいでした。仲の良い幼なじみでしたよね。オオカミさんの夢では違ったんですか?」
「俺? お、俺の夢の中のふたりは……な、仲は良かった。うん、仲良くしてたぞ」
うろたえるオオカミさんに、わたしは首を傾げた。
よくわからないけれど、思春期を過ぎた男性にとって家族や恋人以外の女性と仲良くするのは恥ずかしいことなのかもしれない。
たとえそれが夢の話でも。
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まあ、ミーヌ村は小さいからみんな幼なじみなんだけどね。
「あ、あの……ただの夢ですから、お互いあまり気にしないようにしましょうか」
「そうだな。うん、そうしよう。それより今は朝食の準備を……」
──タタタ、タタタタタ。
廊下の端から、だれかが階段を上がってくる音が聞こえてきた。
足音はひとつじゃない、ふたつある。
どちらも小さく軽い音だった。
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