オオカミさんといっしょ!

豆狸

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第一話 オオカミさんに助けられ

12・わたしの事情③

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 フォーレ王国直々に、ミーヌ村の治安を好転させることを依頼されたみっつの神殿は、まずはお金を出し合って神殿を造った、とオオカミさんは言う。

「三柱の神の司祭が交代で神殿に常駐し、彼らが連れてきた信徒のみが鉱夫として鉱山に入ることを許された。それまでの治安が悪かったのは事実だろうが、神殿だけで鉱山の上がりを独占したかったのかもしれないな。やがて魔晶蜜を採りつくして鉱山は廃鉱となり、神殿に司祭が留まることもなくなったけれど、月や太陽の神殿が所有権を放棄したとは思えない」
「あはは」

 イネスさんが笑う。

「あのガマガエル村長、叩けば叩くほどホコリが出そうだねえ」
「……来るという星の司祭、本物なんだろうか。もし本物なら、星の神殿はほかの神殿にどんな報告をしているんだろう。ノワ、悪いがこれも報告させてもらうぞ」
「は、はい。あの……村長が言ってた星の司祭さまがニセモノの可能性もあるっていうことですよね?」
「村長も納得ずくなのか、あるいは騙されているのかまではわからないがな」
「……昨日のわたしの怪我なんですけど」

 わたしは、星の司祭さまの格好をした少年に殺されかけたことを告げた。
 祖母を亡くしたのでミーヌ村を出たと教えたら、道を聞かれて──
 オオカミさんとイネスさんが顔色を変える。

「それはまた……とんでもない話だねえ」
「強盗に襲われたのかと思っていた」
「どうして捕まえなかったんだい、ルー坊や!」
「いや……狼がこの辺りをうろついていないか調べていたら血の匂いがして、街道に出たら彼女が倒れていたんだよ、イネスおばさん」
「あのときの遠吠えって狼だったんですかね。あ、野獣のほうの」
「聞いていたのか。あのときの遠吠えは俺の声だ。近くに狼がいれば反応すると思ってな」
「そうだったんですか。ありがとうございます、オオカミさんの遠吠えに馬が怯えたおかげで踏み殺されずにすみました。あの……わたしにできるお礼ならなんでもしますので言ってください。薬の調合も少しならできます」

 イネスさんが目を細めて、オオカミさんを肘でつついた。

「お嫁になってもらいなよ、ルー坊や」
「イネスおばさん!」
「あんただって嫌いじゃないんだろ? ってか、可愛いと思ったから獣化が解けちまったんじゃないのかねえ? あたしも若いころは亭主と会うたびに獣化が解けて困ったもんさ」

 溜息をついて、オオカミさんがわたしを見る。

「イネスおばさんの言うことは気にしないでくれ、ノワ。……あー、良かったら回復魔法で魔具を直してくれないか?」
「あ、はい、喜んで」
「なにを直してもらうんだい、ルー坊や」
「洗濯樽だよ、イネスおばさん。あれなら彼女のローブに染み込んだ血も落とせると思うから」
「ふうん、うちのチビたちを呼んできてもいいかい? あの子たち魔法に興味津々なんだよ」
「俺はいいが……ノワは?」
「わたしもかまいません。……攻撃魔法じゃないから、見ても楽しくないかもしれませんけど」
「チビたちが文句を言ったら、あたしが尻を叩いてやるよ。それとノワさん」

 立ち上がったイネスさんが、真剣な表情でわたしを見る。
 鼻の長い狼の顔でも目の大きさや皺の寄り方で、はっきりと感情がわかった。

「お嫁というのは気にしなくていいけど、あんたはしばらくこの村においで。あんたの死体が発見されなかったら、その男が口封じしようとして探し出すかもしれない。身寄りのない娘が月の神殿へ行くっていうのは、だれにでも想像がつくからね。この村は街道から離れていて、場所を知らなければ来れない場所だから安心だよ」
「そうだな、それがいい。ニセモノにしろ本物にしろ、その星の司祭は異常だ。俺が月の神殿に連絡を取って、なんらかの答えが出るまでは動かないほうがいい」

 オオカミさんにも見つめられて、わたしは深く頷いた。
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