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第二話 オオカミさんと暮らしてみれば
4・しっぽぽ!!
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「俺の見立てに間違いはなかったな」
腕組みをしたジョゼくんが、自信満々に言う。
もらった尻尾を縫いつけたローブを着たわたしの姿を見せた感想だ。
「しっぽぽ」
背後に回ったジュールくんが、縫いつけた尻尾をつかんで振ってくれている。
オオカミさんの家の台所で、椅子に座っているイネスさんが笑った。
「あはは、本当に縫いつけてきたんだね」
「わたし動ぶ……えっと、羊とか犬とか好きだったので、尻尾ができて嬉しいです。今度はフードに大きな耳もつけようかな」
「お耳?」
「俺がまた作ってやるよ」
「うふふ、ありがとう」
しゃがんでジョゼくんの頭を撫でると、彼はいきなりわたしの手をつかんだ。
「ノワにクロ村の案内してやる!」
「おえも!」
もう一方の手をジュールくんがつかんで、灰色子狼兄弟が玄関に向かって走り出す。
わたしはオオカミさんを振り向いた。
さっき着替え中のわたしに十五年前のことを教えに来てくれた後、オオカミさんは台所で待っていてくれたのだ。
椅子に座っていた真っ黒な狼が立ち上がる。
「しばらく滞在するんだから村の地理は覚えていたほうがいい」
「そうだね」
イネスさんも立ち上がって、全員で家を出る。
道を挟んで向かいにあるのがイネスさんの家だ。
村の外れに当たるのか、辺りにほかの家は見えなかった。
視界に広がるのは細い道と草むら、ところどころに佇む木立──
イネスさんの家はオオカミさんの家と同じ木造で、三角形の屋根はオオカミさんの家が緑色でイネスさんの家が赤色だった。
持って来てくれた朝食に入っていた渦巻ダイコンの畑は、ミーヌ村の我が家と同じように建物の裏にあるらしい。今は収穫の時期じゃなくて種蒔きの時期だから、煮込みに使ったのは冬に採って保存していたやつだったのかな。
我が家……もう、わたしの家じゃないんだった。
村長はあの家、どうするんだろう。
星の司祭さまは神殿に住むから、壊して更地にするのかな。
畑も潰して、鶏たちも絞めちゃうのかもしれない。
なんだか急にぽっかりと、胸に穴が開いたような気分になったとき、
「ノワ!」
外に出た途端手を離して先に行き、道の横に茂った草むらを突き進んでいたジュールくんがわたしを呼ぶ。
草むらは背が高く、ジュールくんが伸ばした小さな腕しか見えない。
「なぁに?」
「危ない虫とかかもしれない。ノワが見る前に俺が調べてやる」
ジョゼくんがジュールくんのところへ走っていく。
後ろを歩いていたイネスさんがやって来て、少し寂しそうに言った。
「うちの孫たちは、すっかりノワさんに懐いちゃったね。やっぱりばーちゃんより若い子のほうがいいんだね」
「そ、そんなことないと思います! あの、わたしもおばあちゃんのこと大好きでしたし、だから……ふたりはおばあちゃんっ子仲間のわたしが寂しがっているのを感じて、甘やかしてくれてるんだと思います」
「なるほど」
わたしの言葉に頷いて、イネスさんが抱きついてくる。
「イネスさん?」
「ばーちゃんも孫が大好きだからね、寂しがってたら甘やかしたくなるんだよ」
「……イネスさん」
そんなわたしたちを見て、草むらのジョゼくんたちが叫ぶ。
「ノワー、早く来いよー」
「早く早くー」
「本当に仲間だと思ってるようだな」
からかうようなオオカミさんの言葉に、イネスさんがわたしから離れて溜息をつく。
「気が利かないね、ルー坊や。あんたもノワさんを甘やかすところだろ、ほら」
「……イネスおばさん」
オオカミさんに抱きしめられたら、彼が服を着ていてもすべすべの毛皮を感じてきっと気持ちがいい。
ミントの香りを思い出して顔が熱くなる。
昨日会ったばかりなのに、オオカミさんのことを特別に感じるのは、十五年前に会っていたからなんだろうか。
それとも昨夜見た夢の影響?
モフモフが好きっていうのもあるのかな。
口に出しては言えないけれど、オオカミさんの黒い毛皮はほかのだれより、イネスさんやジョゼくんたちよりも、お隣のアメリーおばさんの家の羊や牧羊犬よりも、すべすべでふかふかで触り心地が良さそうだ。
子どものころだったらきっと、あの大きな尻尾を抱きしめていただろう。
もしかしたら十五年前も、尻尾が触りたくて近づいたのかも。
腕組みをしたジョゼくんが、自信満々に言う。
もらった尻尾を縫いつけたローブを着たわたしの姿を見せた感想だ。
「しっぽぽ」
背後に回ったジュールくんが、縫いつけた尻尾をつかんで振ってくれている。
オオカミさんの家の台所で、椅子に座っているイネスさんが笑った。
「あはは、本当に縫いつけてきたんだね」
「わたし動ぶ……えっと、羊とか犬とか好きだったので、尻尾ができて嬉しいです。今度はフードに大きな耳もつけようかな」
「お耳?」
「俺がまた作ってやるよ」
「うふふ、ありがとう」
しゃがんでジョゼくんの頭を撫でると、彼はいきなりわたしの手をつかんだ。
「ノワにクロ村の案内してやる!」
「おえも!」
もう一方の手をジュールくんがつかんで、灰色子狼兄弟が玄関に向かって走り出す。
わたしはオオカミさんを振り向いた。
さっき着替え中のわたしに十五年前のことを教えに来てくれた後、オオカミさんは台所で待っていてくれたのだ。
椅子に座っていた真っ黒な狼が立ち上がる。
「しばらく滞在するんだから村の地理は覚えていたほうがいい」
「そうだね」
イネスさんも立ち上がって、全員で家を出る。
道を挟んで向かいにあるのがイネスさんの家だ。
村の外れに当たるのか、辺りにほかの家は見えなかった。
視界に広がるのは細い道と草むら、ところどころに佇む木立──
イネスさんの家はオオカミさんの家と同じ木造で、三角形の屋根はオオカミさんの家が緑色でイネスさんの家が赤色だった。
持って来てくれた朝食に入っていた渦巻ダイコンの畑は、ミーヌ村の我が家と同じように建物の裏にあるらしい。今は収穫の時期じゃなくて種蒔きの時期だから、煮込みに使ったのは冬に採って保存していたやつだったのかな。
我が家……もう、わたしの家じゃないんだった。
村長はあの家、どうするんだろう。
星の司祭さまは神殿に住むから、壊して更地にするのかな。
畑も潰して、鶏たちも絞めちゃうのかもしれない。
なんだか急にぽっかりと、胸に穴が開いたような気分になったとき、
「ノワ!」
外に出た途端手を離して先に行き、道の横に茂った草むらを突き進んでいたジュールくんがわたしを呼ぶ。
草むらは背が高く、ジュールくんが伸ばした小さな腕しか見えない。
「なぁに?」
「危ない虫とかかもしれない。ノワが見る前に俺が調べてやる」
ジョゼくんがジュールくんのところへ走っていく。
後ろを歩いていたイネスさんがやって来て、少し寂しそうに言った。
「うちの孫たちは、すっかりノワさんに懐いちゃったね。やっぱりばーちゃんより若い子のほうがいいんだね」
「そ、そんなことないと思います! あの、わたしもおばあちゃんのこと大好きでしたし、だから……ふたりはおばあちゃんっ子仲間のわたしが寂しがっているのを感じて、甘やかしてくれてるんだと思います」
「なるほど」
わたしの言葉に頷いて、イネスさんが抱きついてくる。
「イネスさん?」
「ばーちゃんも孫が大好きだからね、寂しがってたら甘やかしたくなるんだよ」
「……イネスさん」
そんなわたしたちを見て、草むらのジョゼくんたちが叫ぶ。
「ノワー、早く来いよー」
「早く早くー」
「本当に仲間だと思ってるようだな」
からかうようなオオカミさんの言葉に、イネスさんがわたしから離れて溜息をつく。
「気が利かないね、ルー坊や。あんたもノワさんを甘やかすところだろ、ほら」
「……イネスおばさん」
オオカミさんに抱きしめられたら、彼が服を着ていてもすべすべの毛皮を感じてきっと気持ちがいい。
ミントの香りを思い出して顔が熱くなる。
昨日会ったばかりなのに、オオカミさんのことを特別に感じるのは、十五年前に会っていたからなんだろうか。
それとも昨夜見た夢の影響?
モフモフが好きっていうのもあるのかな。
口に出しては言えないけれど、オオカミさんの黒い毛皮はほかのだれより、イネスさんやジョゼくんたちよりも、お隣のアメリーおばさんの家の羊や牧羊犬よりも、すべすべでふかふかで触り心地が良さそうだ。
子どものころだったらきっと、あの大きな尻尾を抱きしめていただろう。
もしかしたら十五年前も、尻尾が触りたくて近づいたのかも。
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