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第四話 オオカミさんを守りたい。
9・いつもそう望んでいたから
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「……ああ」
次の言葉を待つわたしに、オオカミさんは頷いた。
「氷結した闇バチの姿がないのが不思議なんだな? ほら、君の回復魔法は大地属性だろう? 闇バチを大地に転がしていたら、回復魔法の余波で氷結という状態異常が解除されるかもしれないと思って、凍らせた後であそこの木に竜巻の……」
指差す方向を見ると、ところどころに佇む木立の一本に支えられるようにして、黒と黄色の大きな球体があった。
なるほど。
後はわたしが上手く調整して、回復魔法を使えばいい。
木々に毒が落とされた可能性もあるから、上に向かって解毒の効果だけ送れないかな。
「……オオカミさん?」
これからの行動について相談しようと口を開いたが、オオカミさんの返事はなかった。
彼は真っ赤になった顔を両手で覆い、その場に座り込んでいる。
獣化魔法は解かれたままだ。
「ど、どうしたんですか?」
「すまない。俺は、いつからこの姿でいたんだろう。氷結した闇バチを載せた木を指し示すまで、自分でも気づいていなかった」
「わ、わたしもわかりません。あの、ジョゼくんが言ったことが照れくさくて、オオカミさんの顔、見れないでいたので」
「ジョゼの……」
オオカミさんは口元を引き絞り、立ち上がった。
黄金色の瞳が真っ直ぐにわたしを見つめる。
「ノワ。ジョゼが言っていたことは、その、本当なのか? 君が俺を……好き、だと」
その瞬間、心の底からさまざまな思いが押し寄せてきて喉がいっぱいになった。
息ができない。
心臓が止まりそう。
ジョゼくんたちに指摘されなくてもわかる。
今のわたしの顔は真っ赤になってる。
爽やかなミントの香り、優しく見つめてくれる黄金色の瞳、低くて甘い声──
頭を落として頷くのが精いっぱいだった。
「……そうか」
「えっと……あの、迷惑でしたか? 迷惑、ですよね?」
「そんなことはない。……君のほうこそ、尻尾のある子どもを産んでもいいのか? 狼の獣化族は未来のある種族ではないぞ」
「そんなの! オオカミさんによく似た尻尾のある赤ちゃんのお母さんになれたら、わたし幸せです。それにわたし、狼の獣化魔法の封印を解こうと思ってます。今の姿のオオカミさんも黒い毛皮のオオカミさんも好きだけど、オオカミさんやジョゼくんが自分の姿を自由に選べるように」
「……わかった」
「あ、あの、オオカミさん? わたし、あの、ジョゼくんもレオンも好きです。好きだけど……結婚したいくらい好きなのは、あの、オ、オオカミさん」
だけなんです、と言おうとした唇は、オオカミさんの人差し指で閉じられた。
彼は草むらに体を降ろして中腰になる。
黒い毛皮がなくなっても大きな手がわたしの手を取る。
「俺のほうから言わせてほしい。……結婚してくれ、ノワ。君が好きだ」
「えっ、あの……本当ですか?」
「ウソだったら、そもそも獣化を解除できていないよ。君が好きだから、この姿になってしまったんだ」
オオカミさんは目の下をほんのりと赤く染め、わたしから視線を外す。
「……調合室でも、だ。魔法力を分け与えたかったのは真実だ。だけどキスという方法を思いついたのは、俺がいつもそう望んでいたからだ。君とキスしたい、と」
「オオカミさん。……あ、ありがとうございます。オオカミさんさえ良ければ、わたしをお嫁さんにしてください」
「ありがとう」
わたしの手の甲にキスを落として、オオカミさんは立ち上がった。
「それではまず、クロ村の解毒をお願いしよう。結婚の認可を受けるためにオングル村の月の神殿へ行くのは、太陽の代表司祭が来てミーヌ村で神獣裁判をしてからになるが、かまわないか? 君が殺されかけた事件については、結婚と並行して調べていこう」
「わかりました」
少し生真面目で、考えた計画を全部話してくれるのも、オオカミさんのいいところだ。
「それと……」
「はい」
「結婚するまで君は、イネスおばさんの家で世話になるといい。俺からも頼んでおこう」
「ど、どうしてですか? 狼の獣化族の風習とかでしょうか」
「……ノワ、君は危機意識を持ったほうがいい」
わたしを抱きしめて、オオカミさんが唇にキスを落としてくる。
唇を離した彼は、痛いくらい強くわたしを抱きしめた。
低く甘い声が耳元で囁く。
「……俺はケダモノなんだぞ? 今までは君の気持ちがわからないから我慢していただけだ……」
次の言葉を待つわたしに、オオカミさんは頷いた。
「氷結した闇バチの姿がないのが不思議なんだな? ほら、君の回復魔法は大地属性だろう? 闇バチを大地に転がしていたら、回復魔法の余波で氷結という状態異常が解除されるかもしれないと思って、凍らせた後であそこの木に竜巻の……」
指差す方向を見ると、ところどころに佇む木立の一本に支えられるようにして、黒と黄色の大きな球体があった。
なるほど。
後はわたしが上手く調整して、回復魔法を使えばいい。
木々に毒が落とされた可能性もあるから、上に向かって解毒の効果だけ送れないかな。
「……オオカミさん?」
これからの行動について相談しようと口を開いたが、オオカミさんの返事はなかった。
彼は真っ赤になった顔を両手で覆い、その場に座り込んでいる。
獣化魔法は解かれたままだ。
「ど、どうしたんですか?」
「すまない。俺は、いつからこの姿でいたんだろう。氷結した闇バチを載せた木を指し示すまで、自分でも気づいていなかった」
「わ、わたしもわかりません。あの、ジョゼくんが言ったことが照れくさくて、オオカミさんの顔、見れないでいたので」
「ジョゼの……」
オオカミさんは口元を引き絞り、立ち上がった。
黄金色の瞳が真っ直ぐにわたしを見つめる。
「ノワ。ジョゼが言っていたことは、その、本当なのか? 君が俺を……好き、だと」
その瞬間、心の底からさまざまな思いが押し寄せてきて喉がいっぱいになった。
息ができない。
心臓が止まりそう。
ジョゼくんたちに指摘されなくてもわかる。
今のわたしの顔は真っ赤になってる。
爽やかなミントの香り、優しく見つめてくれる黄金色の瞳、低くて甘い声──
頭を落として頷くのが精いっぱいだった。
「……そうか」
「えっと……あの、迷惑でしたか? 迷惑、ですよね?」
「そんなことはない。……君のほうこそ、尻尾のある子どもを産んでもいいのか? 狼の獣化族は未来のある種族ではないぞ」
「そんなの! オオカミさんによく似た尻尾のある赤ちゃんのお母さんになれたら、わたし幸せです。それにわたし、狼の獣化魔法の封印を解こうと思ってます。今の姿のオオカミさんも黒い毛皮のオオカミさんも好きだけど、オオカミさんやジョゼくんが自分の姿を自由に選べるように」
「……わかった」
「あ、あの、オオカミさん? わたし、あの、ジョゼくんもレオンも好きです。好きだけど……結婚したいくらい好きなのは、あの、オ、オオカミさん」
だけなんです、と言おうとした唇は、オオカミさんの人差し指で閉じられた。
彼は草むらに体を降ろして中腰になる。
黒い毛皮がなくなっても大きな手がわたしの手を取る。
「俺のほうから言わせてほしい。……結婚してくれ、ノワ。君が好きだ」
「えっ、あの……本当ですか?」
「ウソだったら、そもそも獣化を解除できていないよ。君が好きだから、この姿になってしまったんだ」
オオカミさんは目の下をほんのりと赤く染め、わたしから視線を外す。
「……調合室でも、だ。魔法力を分け与えたかったのは真実だ。だけどキスという方法を思いついたのは、俺がいつもそう望んでいたからだ。君とキスしたい、と」
「オオカミさん。……あ、ありがとうございます。オオカミさんさえ良ければ、わたしをお嫁さんにしてください」
「ありがとう」
わたしの手の甲にキスを落として、オオカミさんは立ち上がった。
「それではまず、クロ村の解毒をお願いしよう。結婚の認可を受けるためにオングル村の月の神殿へ行くのは、太陽の代表司祭が来てミーヌ村で神獣裁判をしてからになるが、かまわないか? 君が殺されかけた事件については、結婚と並行して調べていこう」
「わかりました」
少し生真面目で、考えた計画を全部話してくれるのも、オオカミさんのいいところだ。
「それと……」
「はい」
「結婚するまで君は、イネスおばさんの家で世話になるといい。俺からも頼んでおこう」
「ど、どうしてですか? 狼の獣化族の風習とかでしょうか」
「……ノワ、君は危機意識を持ったほうがいい」
わたしを抱きしめて、オオカミさんが唇にキスを落としてくる。
唇を離した彼は、痛いくらい強くわたしを抱きしめた。
低く甘い声が耳元で囁く。
「……俺はケダモノなんだぞ? 今までは君の気持ちがわからないから我慢していただけだ……」
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