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いきなり異世界転生編
4・初めての『魔石試し』
馬車は森の中を貫く街道を走っている。
……今のところ流されるしかないんだし、せめて状況を楽しむことにしよう。
わたしは膝のラケルを撫でながら、向かいに座った聖女様に声をかけた。
「聖女様」
「……なに?」
「えっと……ス、スキルとか、あの……」
一応異世界転生したんだからチートスキルを習得してるんじゃないかと思ったんだけど、口に出そうとすると恥ずかしくてたまらない。
ううう、顔が熱いよう。
ケルベロス様がラケルのスキルの話をしてたから、スキルのある世界なんだよね?
スキルってどうやったら確認できるんだろう。
やっぱりステータスオープンって言わなきゃいけないのかな。
ベールに覆われた聖女様の頭が、ゆらりと揺れた。
「……スキル? スキルが欲しいなら、魔石試し、する?」
「よくわからないけど、お願いします」
「……ん。わかった」
彼女が腕を伸ばすと、服の袖口が落ちて手首の腕輪が見えた。
黄金色に煌めく腕輪がさらに光を放つ。
「……はい」
「え?」
聖女様が差し出してくる手のひらの上には、ビー玉くらいの大きさの石が載っていた。
さっき腕輪が光ってたとき、手のひらにはなにもなかったのに。
「……どうしたの? 魔石試し、するんでしょう?」
「あ、はい」
頷いたものの、どうしても不思議で聖女様を見つめてしまう。
我慢できなくなって聞いてみる。
「えっと……今その石、どこから出したんですか?」
彼女は首を傾げた。
「……ドワーフの黄金の腕輪に『アイテムボックス』のスキルが宿っているのを知らないの?」
黄金の腕輪?
『異世界言語理解』の力か、ドラウプニルという固有名詞が黄金の腕輪を指しているのがわかった。
「ドワーフ? 聖女様はドワーフなんですか?」
なんだかイメージが違う。
というか、映画やゲームでは男性のドワーフしか見たことがない。
「……そう、知らないのね。……あなた、どこから来たの?」
「え? 聞いてないんですか?」
「……神獣様のお客様を迎えに行ってもてなすようにと女神様に言われただけ」
そ、そうなんだ。……言ってもいいのかな?
「えっと……わたし、異世界から来たんです」
来た、でいいのかな?
この世界で生まれ直したようなものだから転生だと思うんだけど、ちょっと説明が難しいよね。
「……そう。それでこの世界のことを知らないのね」
「そうなんです!」
「……わかった」
そう言って、聖女様はわたしの手に石を落とした。
「……はい、水属性のスライムの魔石」
「え?」
「……魔石試し、しないの?」
「あ、はい!」
ドワーフやこの世界に関する説明はしてくれないんですね、聖女様。
「えっと、魔石試しってどうするんですか?」
「……両手から魔石に魔力を注ぎ込むの」
「わかりました?」
魔力って、どうやったら注ぎ込めるものなんだろう?
膝上のラケルに救いを求めたが、ラケルは丸くなって眠っていた。
わたしの魂をこの世界に運んできたりして疲れた、のかなあ?
そもそも新しい体ができるのに、どれくらいの時間がかかってるんだろう?
落ち着いたらケルベロス様に聞いてみよう。
思いながら、なんかそれっぽい感じに意識を集中してみる。
我が魔力、この魔石に宿れ!……なんちゃって。
「……あ」
聖女様に渡された魔石に、なにかが吸い寄せられるような感覚が生じた。
もしかして、これが魔力?
手の中の魔石が淡く光る。
「……」
正直なところ気持ち悪かった。
手の中の魔石は輝きながら、ボコボコと蠢き始めたのだ。
えっと……不定形の生き物が暴れるときみたいな感じ?
そういえば水属性のスライムの魔石って言ってたっけ。
もしかしてスライムになっちゃうのかな?……やだ、怖い。
ケルベロス様にもらった黒い箒はラケルの影の中だ。
ラケルを起こさないと出し方がわからない。
「……錬金術ね」
聖女様が呟いて、なにかがわかった風に頷いた。
「そうなんですか?」
「……あなた、天才なのかもしれない。こんなにすぐ注いだ魔力の影響が出るなんて。一流の錬金術師でも魔石の変成にはもっと時間がかかる」
チート? わたしチートなのかな?
ドキドキしながら手の中の魔石を見つめていると……ボコボコしててやっぱり気持ち悪い……やがて、それは──
両端には真っ白な柔らかいパン。
黄色いカスタードと純白の生クリームが混ざり合い、真っ赤な苺を包んでいる。
漂う甘い香り。
──わたしが前世で死ぬ前に食べたがっていた、フルーツサンドに変わった。
……ごくり。
と、唾を飲み込んだのはわたしではなかった。
「……錬金術で魔石から食べ物を変成するなんて、初めて見た。……それは、なに?」
「フルーツサンドです。……たぶん」
「……サンドイッチなの? そんなに真っ白で柔らかそうなパン、初めて」
中世ヨーロッパ風の世界だから、パンは黒くて酸味のある硬いヤツなのかな。
あれはあれで美味しいと思うけど。
「えっと……これ、どうしましょう?」
わたしの質問に聖女様が叫ぶ。
「食べないの?」
うわ、驚いた。
これまでの聖女様のセリフにずっとあった間、『……』がなかったよ。
「食べられるんですか?」
「……魔石は魔力の結晶、魔力は世界の源」
ケルベロス様もそんなこと言ってたっけ。
「……自分の魔力を高めるため、魔道士達は魔石しか食べない。……普通の食べ物は不純物が入っていて、魔力だけを高めることができないから」
「そうなんですか」
魔道士かー。位によって名称が変わる感じなのかな?
錬金術師ってどんな立ち位置なんだろう。
将来的には工房とか開けたりして?
……今のところ流されるしかないんだし、せめて状況を楽しむことにしよう。
わたしは膝のラケルを撫でながら、向かいに座った聖女様に声をかけた。
「聖女様」
「……なに?」
「えっと……ス、スキルとか、あの……」
一応異世界転生したんだからチートスキルを習得してるんじゃないかと思ったんだけど、口に出そうとすると恥ずかしくてたまらない。
ううう、顔が熱いよう。
ケルベロス様がラケルのスキルの話をしてたから、スキルのある世界なんだよね?
スキルってどうやったら確認できるんだろう。
やっぱりステータスオープンって言わなきゃいけないのかな。
ベールに覆われた聖女様の頭が、ゆらりと揺れた。
「……スキル? スキルが欲しいなら、魔石試し、する?」
「よくわからないけど、お願いします」
「……ん。わかった」
彼女が腕を伸ばすと、服の袖口が落ちて手首の腕輪が見えた。
黄金色に煌めく腕輪がさらに光を放つ。
「……はい」
「え?」
聖女様が差し出してくる手のひらの上には、ビー玉くらいの大きさの石が載っていた。
さっき腕輪が光ってたとき、手のひらにはなにもなかったのに。
「……どうしたの? 魔石試し、するんでしょう?」
「あ、はい」
頷いたものの、どうしても不思議で聖女様を見つめてしまう。
我慢できなくなって聞いてみる。
「えっと……今その石、どこから出したんですか?」
彼女は首を傾げた。
「……ドワーフの黄金の腕輪に『アイテムボックス』のスキルが宿っているのを知らないの?」
黄金の腕輪?
『異世界言語理解』の力か、ドラウプニルという固有名詞が黄金の腕輪を指しているのがわかった。
「ドワーフ? 聖女様はドワーフなんですか?」
なんだかイメージが違う。
というか、映画やゲームでは男性のドワーフしか見たことがない。
「……そう、知らないのね。……あなた、どこから来たの?」
「え? 聞いてないんですか?」
「……神獣様のお客様を迎えに行ってもてなすようにと女神様に言われただけ」
そ、そうなんだ。……言ってもいいのかな?
「えっと……わたし、異世界から来たんです」
来た、でいいのかな?
この世界で生まれ直したようなものだから転生だと思うんだけど、ちょっと説明が難しいよね。
「……そう。それでこの世界のことを知らないのね」
「そうなんです!」
「……わかった」
そう言って、聖女様はわたしの手に石を落とした。
「……はい、水属性のスライムの魔石」
「え?」
「……魔石試し、しないの?」
「あ、はい!」
ドワーフやこの世界に関する説明はしてくれないんですね、聖女様。
「えっと、魔石試しってどうするんですか?」
「……両手から魔石に魔力を注ぎ込むの」
「わかりました?」
魔力って、どうやったら注ぎ込めるものなんだろう?
膝上のラケルに救いを求めたが、ラケルは丸くなって眠っていた。
わたしの魂をこの世界に運んできたりして疲れた、のかなあ?
そもそも新しい体ができるのに、どれくらいの時間がかかってるんだろう?
落ち着いたらケルベロス様に聞いてみよう。
思いながら、なんかそれっぽい感じに意識を集中してみる。
我が魔力、この魔石に宿れ!……なんちゃって。
「……あ」
聖女様に渡された魔石に、なにかが吸い寄せられるような感覚が生じた。
もしかして、これが魔力?
手の中の魔石が淡く光る。
「……」
正直なところ気持ち悪かった。
手の中の魔石は輝きながら、ボコボコと蠢き始めたのだ。
えっと……不定形の生き物が暴れるときみたいな感じ?
そういえば水属性のスライムの魔石って言ってたっけ。
もしかしてスライムになっちゃうのかな?……やだ、怖い。
ケルベロス様にもらった黒い箒はラケルの影の中だ。
ラケルを起こさないと出し方がわからない。
「……錬金術ね」
聖女様が呟いて、なにかがわかった風に頷いた。
「そうなんですか?」
「……あなた、天才なのかもしれない。こんなにすぐ注いだ魔力の影響が出るなんて。一流の錬金術師でも魔石の変成にはもっと時間がかかる」
チート? わたしチートなのかな?
ドキドキしながら手の中の魔石を見つめていると……ボコボコしててやっぱり気持ち悪い……やがて、それは──
両端には真っ白な柔らかいパン。
黄色いカスタードと純白の生クリームが混ざり合い、真っ赤な苺を包んでいる。
漂う甘い香り。
──わたしが前世で死ぬ前に食べたがっていた、フルーツサンドに変わった。
……ごくり。
と、唾を飲み込んだのはわたしではなかった。
「……錬金術で魔石から食べ物を変成するなんて、初めて見た。……それは、なに?」
「フルーツサンドです。……たぶん」
「……サンドイッチなの? そんなに真っ白で柔らかそうなパン、初めて」
中世ヨーロッパ風の世界だから、パンは黒くて酸味のある硬いヤツなのかな。
あれはあれで美味しいと思うけど。
「えっと……これ、どうしましょう?」
わたしの質問に聖女様が叫ぶ。
「食べないの?」
うわ、驚いた。
これまでの聖女様のセリフにずっとあった間、『……』がなかったよ。
「食べられるんですか?」
「……魔石は魔力の結晶、魔力は世界の源」
ケルベロス様もそんなこと言ってたっけ。
「……自分の魔力を高めるため、魔道士達は魔石しか食べない。……普通の食べ物は不純物が入っていて、魔力だけを高めることができないから」
「そうなんですか」
魔道士かー。位によって名称が変わる感じなのかな?
錬金術師ってどんな立ち位置なんだろう。
将来的には工房とか開けたりして?
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