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姫君には鍵をかけて
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Ⅶ
躾の行き届いた指が、「📞」マークのついた小さな通話ボタンをオフにした。
「うさぎは、野に放たれたようですな」
嫌味なほど馬鹿丁寧な問いかけに、冷たいアイスブルーの瞳がきらりと光った。
「我々のみならず、フランス側の精鋭まで手玉に取るとは見上げたものだが、いかんせん我らには地の利がない。…どうなさいます、クラウス・ベルンハルト一等書記官」
ひどく癇にさわる、探るような口調だった。
「―――ご懸念には及ばぬ、領事殿。野に出たうさぎを狩ることは、大使館を攻めるよりはるかに容易い」
「頼もしいですな」
領事は嘲るように唇を歪めた。
「ともかく、できるだけ手早く始末をつけていただきたい。あの御方が実権を握られれば、私もようやくこの東の果ての僻地から解放されるというものだ」
揚々と得意げに退出していく領事の背を無表情で見つめていた彼は、胸の中で冷ややかに罵った。
(俗物め。見返りを受けるだけのことをしたという自負があるとでも言うのか)
領事の足音が遠くなると、彼はふっと息をつき、椅子に深く沈み込んで瞑想した。
(それにしても、あの男…一体、何者だ?)
だが、しばらくして胸の前で組んでいた指を解くと、その見事な銀色の髪を掻き揚げながらおもむろに目を開けた。
(…まあいい。何者であろうが、容赦せずにすむというのはありがたい)
再び凍りつくような光を放った瞳が、誰もいない虚空を鋭く睨み据えた。
(遠慮なく狩らせてもらうぞ、あの酒の礼にな。覚悟しておくがいい―――)
それは、冷酷にして残忍な、無言の宣告であった。
日が高くなると、眠りから覚めた街は息を吹き返したようにめまぐるしく動きはじめた。通りを行き交う人の波も徐々に増え、建物や駅に向かって絶え間なく吸い込まれていく。
この喧騒が一段落つくのは、街中の空気がぬるみだす頃だった。
住宅街の裏手の、小規模な工場と倉庫が混在する一角に、一台のリヤカーを引いた人物が現われた。
荷台には壊れた自転車と、古い卓上旋盤が乗っている。カーキ色の作業服に軍手をはめ、眼鏡をかけ、ウエーブのかかった長髪を一つに束ねた、いかにも怪しげな風体であった。
「失礼、警察のものですが」
声をかけると、その人物は訝しそうに振り向いた。
「この辺りにお住まいですか?」
「住んでいるのは根津のほうですが、仕事場がこっちなもので」
「―――ご職業は?」
「職務質問ですか」
ふうっと溜め息をついた彼は、制服警官を伴った若い私服刑事に、作業服の胸ポケットから取り出した顔写真入りの身分証明を提示した。
「職業は現在、この大学の講師です。お疑いなら問い合わせてみてください」
「勅使河原薫。と…東京大学大学院特別講師、マサチューセッツ工科大学ロボット工学博士―――⁉」
ひっくり返った声で叫んだ刑事は、お見逸れしました、と深々と頭を下げた。
「し、しかし、仕事場というのは…」
「ああ、工房ですよ」
「…あの、まさか……これでロボット作ってらっしゃるんじゃ…」
ちらり、と思わず荷台に目を走らせたために、刑事は相手の失笑を買った。
「まさか! いくらなんでもリサイクル部品で実用ロボットを作るのは無理です。技術的には可能でしょうが、性能が悪い」
「はは…でしょうね」
「これは実益を兼ねた趣味です。作っているのは人体模型ですよ。NASAで使う、船外作業用のロボットアームの改良を依頼されていましてね」
「ナサのセンガイサギョウって……ええっ、宇宙ステーションの⁉」
人は見かけによらないとは、このことである。こんな細々とした町工場の片隅で、最新の宇宙技術の開発が行なわれているのだ。
「ところで、なんの捜査ですか?」
相手の声に、刑事ははっと我に返った。
「ああ…実は今、ある事件の参考人について捜査中で、その人物の立ち回り先と交友関係を調べているところなんです。…このへんに有栖川という人が住んでいるはずなんですが、ご存じありませんか?」
「それなら、うちです」
えっという表情で刑事が顔を上げた。
「彼はうちの店子なんです」
若い刑事は、動きだしたリヤカーにいざなわれるようにロフトへと向かった。
倉庫の鍵を開けると、中はまだひんやりとして、味気ないコンクリートの壁に夜の匂いがしみ込んだままだった。白々とした蛍光灯に照らされたガラクタだらけの空間は、人の気配がまるでしない。二階へ続く鉄製の階段も、息をひそめたように沈黙していた。
「上が、彼の部屋ですが…帰っていないようですね」
「お話を伺えればと思ったんですが」
「戻ったら、そちらに連絡するように伝えましょうか」
「お願いします」
刑事は慣れた様子で名刺を手渡し、お辞儀をして去っていった。
刑事を見送った倉庫の主は、リヤカーの荷を中に運び込むと、遅い朝食を取るため地下にある自室へ下りていった。
施錠されたドアを開け、何気なく明かりをつける―――と、そこで彼は、初めて長椅子で眠り込んでいる侵入者に気付いて深い溜め息をついた。
「祐介くん、君の部屋は二階のはずでは?」
「…ん…ああ、カオルさん…おはよう」
「おはよう、じゃありませんよ。ここは私の部屋ですよ? どうやって入ったんです」
詰め寄られた祐介は、あくびを噛み殺したような寝起きの顔で殊勝に言った。
「うん。ごめん、カオルさん。ゆーべ、いろいろあってさ。…悪いと思ったけど、下の道使わせてもらった」
「―――しょうがないですね」
家主はふと目を細め、それから思い出したように付け足した。
「ああ、でも…これでは私、刑事さんに嘘をついたことになりますね」
「刑事?」
「君を訪ねてきたんですよ。上にいないので留守だと言ってしまったんです。お友達のことで何か聞きたいことがあるとか。連絡してほしいそうですよ」
彼は受け取ったばかりの名刺を祐介に差し出した。
「人のよさそうな、若い刑事さんでしたよ」
「ふうん…あの、真壁くんか」
祐介は思案顔で額の上に翳した名刺を軽く弾いた。弾かれた名刺は、しばらく指の間でくるくる回っていた。
「それで―――昨夜のいろいろ、というのはこれですか? 可愛いお人形ですね」
そう言いながら興味深げに傍らを覗き込んだ家主の声で、祐介は我に返った。
「わあ、カオルさん! やたらに触っちゃ…」
慌てて飛び起きたが、間に合わなかった。
祐介が制すより先に家主の指が、ソファでまどろむふっくらとした白い頬にむぎゅっとめりこんだのだ。
「…なんだか…生きてるみたいですねえ…」
予想と違った感触に眉を寄せた彼は、引きつった顔で自分の指をじっと見つめている。その手の下で、無造作に頬をつつかれた少女がぱっちりと目を開けた。
「こっ…これ、生きてるじゃないですかっ! なんで先に言ってくれないんです‼」
祐介は露骨に大きな溜め息をついた。
「―――言う前につっついたの、カオルさんでしょーが☆」
びっくりしたのか、少女は今にも泣きだしそうな顔をした。そんな半べその彼女を抱き上げながら、祐介は言った。
「ちょっとワケありなんだ。すぐ出てくから、カオルさん、何も見なかったことにしてよ」
いつになく深刻なその声色に顔を上げた家主は、祐介を見てふと目を細めた。
「―――珍しいですね、君がそんな顔をするなんて」
祐介が黙っていると、家主はそれ以上何も聞かず、ただ口元に含蓄のある微笑を湛えて頷いた。
「いいでしょう。私も、それなら刑事さんに嘘をついたことにはなりませんからね」
そして、彼は祐介を食卓へ促した。
「とりあえず朝食ぐらい食べていきなさい。それくらい、バチは当たらないでしょう」
「…さんきゅ、カオルさん」
彼の厚意に甘え、祐介は足を踏みだそうとした。すると、抱きかかえていた少女が身をよじらせ、不安げに後ろを振り向いた。
「どうしました?」
「ああ、人形か」
足を止めた祐介は、丸めたジャケットの下から彼女のお気に入りの人形を摑みあげた。
「おや、お揃いですね」
濃紺のベルベットの服を着た金髪の人形が、まったく同じデザインの外出着を纏った人形のような黒髪の少女の腕におさまる。
その様を微笑ましげに眺めていた家主の目が、不意に人形の顔に釘づけになった。
「祐介くん、それ…」
「え?」
祐介が怪訝そうに家主を見ると、彼は唇に指を当てて慎重に言った。
「…それ、ジュモーのビスクドールじゃないですか?」
「ジュモーって?」
「世界的にも有名なアンティーク人形の高級ブランドですよ。フランス製のビスクドールの中で、ジュモーの作品はサザビーズやクリスティーズのオークションでも高値をつける骨董品です」
「へえ……この人形がね…」
祐介は半信半疑で呟いた。
家主は、おもむろにちらりと少女を一瞥し、真顔で口を開いた。
「―――大変なトラブルを背負い込んでいるようですね。気をつけたほうがいいですよ。この子に罪はないのでしょうが、とてもダーティな匂いがします」
その言葉は、少女と人形のどちらに向けられたものなのか判然としなかった。
しかし、何も知らない家主の口から一国の王妃となった女優を暗示させるキーワードがこぼれたのは、もはや単なる偶然とは思えなかった。
祐介はふっと笑って、不敵な眼差しを家主に向けた。
「恩に着るよ、カオルさん。この埋め合わせは必ずするからさ」
そんな彼の表情に、家主はあきらめ顔で、溜め息混じりに目を伏せた。
躾の行き届いた指が、「📞」マークのついた小さな通話ボタンをオフにした。
「うさぎは、野に放たれたようですな」
嫌味なほど馬鹿丁寧な問いかけに、冷たいアイスブルーの瞳がきらりと光った。
「我々のみならず、フランス側の精鋭まで手玉に取るとは見上げたものだが、いかんせん我らには地の利がない。…どうなさいます、クラウス・ベルンハルト一等書記官」
ひどく癇にさわる、探るような口調だった。
「―――ご懸念には及ばぬ、領事殿。野に出たうさぎを狩ることは、大使館を攻めるよりはるかに容易い」
「頼もしいですな」
領事は嘲るように唇を歪めた。
「ともかく、できるだけ手早く始末をつけていただきたい。あの御方が実権を握られれば、私もようやくこの東の果ての僻地から解放されるというものだ」
揚々と得意げに退出していく領事の背を無表情で見つめていた彼は、胸の中で冷ややかに罵った。
(俗物め。見返りを受けるだけのことをしたという自負があるとでも言うのか)
領事の足音が遠くなると、彼はふっと息をつき、椅子に深く沈み込んで瞑想した。
(それにしても、あの男…一体、何者だ?)
だが、しばらくして胸の前で組んでいた指を解くと、その見事な銀色の髪を掻き揚げながらおもむろに目を開けた。
(…まあいい。何者であろうが、容赦せずにすむというのはありがたい)
再び凍りつくような光を放った瞳が、誰もいない虚空を鋭く睨み据えた。
(遠慮なく狩らせてもらうぞ、あの酒の礼にな。覚悟しておくがいい―――)
それは、冷酷にして残忍な、無言の宣告であった。
日が高くなると、眠りから覚めた街は息を吹き返したようにめまぐるしく動きはじめた。通りを行き交う人の波も徐々に増え、建物や駅に向かって絶え間なく吸い込まれていく。
この喧騒が一段落つくのは、街中の空気がぬるみだす頃だった。
住宅街の裏手の、小規模な工場と倉庫が混在する一角に、一台のリヤカーを引いた人物が現われた。
荷台には壊れた自転車と、古い卓上旋盤が乗っている。カーキ色の作業服に軍手をはめ、眼鏡をかけ、ウエーブのかかった長髪を一つに束ねた、いかにも怪しげな風体であった。
「失礼、警察のものですが」
声をかけると、その人物は訝しそうに振り向いた。
「この辺りにお住まいですか?」
「住んでいるのは根津のほうですが、仕事場がこっちなもので」
「―――ご職業は?」
「職務質問ですか」
ふうっと溜め息をついた彼は、制服警官を伴った若い私服刑事に、作業服の胸ポケットから取り出した顔写真入りの身分証明を提示した。
「職業は現在、この大学の講師です。お疑いなら問い合わせてみてください」
「勅使河原薫。と…東京大学大学院特別講師、マサチューセッツ工科大学ロボット工学博士―――⁉」
ひっくり返った声で叫んだ刑事は、お見逸れしました、と深々と頭を下げた。
「し、しかし、仕事場というのは…」
「ああ、工房ですよ」
「…あの、まさか……これでロボット作ってらっしゃるんじゃ…」
ちらり、と思わず荷台に目を走らせたために、刑事は相手の失笑を買った。
「まさか! いくらなんでもリサイクル部品で実用ロボットを作るのは無理です。技術的には可能でしょうが、性能が悪い」
「はは…でしょうね」
「これは実益を兼ねた趣味です。作っているのは人体模型ですよ。NASAで使う、船外作業用のロボットアームの改良を依頼されていましてね」
「ナサのセンガイサギョウって……ええっ、宇宙ステーションの⁉」
人は見かけによらないとは、このことである。こんな細々とした町工場の片隅で、最新の宇宙技術の開発が行なわれているのだ。
「ところで、なんの捜査ですか?」
相手の声に、刑事ははっと我に返った。
「ああ…実は今、ある事件の参考人について捜査中で、その人物の立ち回り先と交友関係を調べているところなんです。…このへんに有栖川という人が住んでいるはずなんですが、ご存じありませんか?」
「それなら、うちです」
えっという表情で刑事が顔を上げた。
「彼はうちの店子なんです」
若い刑事は、動きだしたリヤカーにいざなわれるようにロフトへと向かった。
倉庫の鍵を開けると、中はまだひんやりとして、味気ないコンクリートの壁に夜の匂いがしみ込んだままだった。白々とした蛍光灯に照らされたガラクタだらけの空間は、人の気配がまるでしない。二階へ続く鉄製の階段も、息をひそめたように沈黙していた。
「上が、彼の部屋ですが…帰っていないようですね」
「お話を伺えればと思ったんですが」
「戻ったら、そちらに連絡するように伝えましょうか」
「お願いします」
刑事は慣れた様子で名刺を手渡し、お辞儀をして去っていった。
刑事を見送った倉庫の主は、リヤカーの荷を中に運び込むと、遅い朝食を取るため地下にある自室へ下りていった。
施錠されたドアを開け、何気なく明かりをつける―――と、そこで彼は、初めて長椅子で眠り込んでいる侵入者に気付いて深い溜め息をついた。
「祐介くん、君の部屋は二階のはずでは?」
「…ん…ああ、カオルさん…おはよう」
「おはよう、じゃありませんよ。ここは私の部屋ですよ? どうやって入ったんです」
詰め寄られた祐介は、あくびを噛み殺したような寝起きの顔で殊勝に言った。
「うん。ごめん、カオルさん。ゆーべ、いろいろあってさ。…悪いと思ったけど、下の道使わせてもらった」
「―――しょうがないですね」
家主はふと目を細め、それから思い出したように付け足した。
「ああ、でも…これでは私、刑事さんに嘘をついたことになりますね」
「刑事?」
「君を訪ねてきたんですよ。上にいないので留守だと言ってしまったんです。お友達のことで何か聞きたいことがあるとか。連絡してほしいそうですよ」
彼は受け取ったばかりの名刺を祐介に差し出した。
「人のよさそうな、若い刑事さんでしたよ」
「ふうん…あの、真壁くんか」
祐介は思案顔で額の上に翳した名刺を軽く弾いた。弾かれた名刺は、しばらく指の間でくるくる回っていた。
「それで―――昨夜のいろいろ、というのはこれですか? 可愛いお人形ですね」
そう言いながら興味深げに傍らを覗き込んだ家主の声で、祐介は我に返った。
「わあ、カオルさん! やたらに触っちゃ…」
慌てて飛び起きたが、間に合わなかった。
祐介が制すより先に家主の指が、ソファでまどろむふっくらとした白い頬にむぎゅっとめりこんだのだ。
「…なんだか…生きてるみたいですねえ…」
予想と違った感触に眉を寄せた彼は、引きつった顔で自分の指をじっと見つめている。その手の下で、無造作に頬をつつかれた少女がぱっちりと目を開けた。
「こっ…これ、生きてるじゃないですかっ! なんで先に言ってくれないんです‼」
祐介は露骨に大きな溜め息をついた。
「―――言う前につっついたの、カオルさんでしょーが☆」
びっくりしたのか、少女は今にも泣きだしそうな顔をした。そんな半べその彼女を抱き上げながら、祐介は言った。
「ちょっとワケありなんだ。すぐ出てくから、カオルさん、何も見なかったことにしてよ」
いつになく深刻なその声色に顔を上げた家主は、祐介を見てふと目を細めた。
「―――珍しいですね、君がそんな顔をするなんて」
祐介が黙っていると、家主はそれ以上何も聞かず、ただ口元に含蓄のある微笑を湛えて頷いた。
「いいでしょう。私も、それなら刑事さんに嘘をついたことにはなりませんからね」
そして、彼は祐介を食卓へ促した。
「とりあえず朝食ぐらい食べていきなさい。それくらい、バチは当たらないでしょう」
「…さんきゅ、カオルさん」
彼の厚意に甘え、祐介は足を踏みだそうとした。すると、抱きかかえていた少女が身をよじらせ、不安げに後ろを振り向いた。
「どうしました?」
「ああ、人形か」
足を止めた祐介は、丸めたジャケットの下から彼女のお気に入りの人形を摑みあげた。
「おや、お揃いですね」
濃紺のベルベットの服を着た金髪の人形が、まったく同じデザインの外出着を纏った人形のような黒髪の少女の腕におさまる。
その様を微笑ましげに眺めていた家主の目が、不意に人形の顔に釘づけになった。
「祐介くん、それ…」
「え?」
祐介が怪訝そうに家主を見ると、彼は唇に指を当てて慎重に言った。
「…それ、ジュモーのビスクドールじゃないですか?」
「ジュモーって?」
「世界的にも有名なアンティーク人形の高級ブランドですよ。フランス製のビスクドールの中で、ジュモーの作品はサザビーズやクリスティーズのオークションでも高値をつける骨董品です」
「へえ……この人形がね…」
祐介は半信半疑で呟いた。
家主は、おもむろにちらりと少女を一瞥し、真顔で口を開いた。
「―――大変なトラブルを背負い込んでいるようですね。気をつけたほうがいいですよ。この子に罪はないのでしょうが、とてもダーティな匂いがします」
その言葉は、少女と人形のどちらに向けられたものなのか判然としなかった。
しかし、何も知らない家主の口から一国の王妃となった女優を暗示させるキーワードがこぼれたのは、もはや単なる偶然とは思えなかった。
祐介はふっと笑って、不敵な眼差しを家主に向けた。
「恩に着るよ、カオルさん。この埋め合わせは必ずするからさ」
そんな彼の表情に、家主はあきらめ顔で、溜め息混じりに目を伏せた。
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