44 / 76
5
はじめての花祭り
しおりを挟む
「ジークは今年の花祭り、リア様と一緒に見に行くの?」
真夏に開催されるヴィルヘルム王都の花祭り──。それは午前中出発する花車のパレードからはじまり、キャンドルで飾られた広場で夜通し行われる踊りまで丸一日続く大きな夏祭りである。花祭りでは将来の伴侶と巡り会えるという言い伝えもあり、相手のいない若者たちが多く参加する。
話には聞くものの、ジークフリートとレジナルドは今まで一度も祭りに参加したことがなかった。大勢の人々が集まる祭りに王太子自ら参加して混乱を招くような真似は出来ないし、何より二人とも将来の伴侶が祭りで見つかるなどとは思っていなかったからだ。
「花祭り、か。考えたこともなかった。女性はそういうものに行きたがると言うからな…。」
「リア様花が好きだろう?二人が祭りに参加するなら何人か騎士をつけるように話しとくからさ。」
「あぁ、一度聞いてみるよ。」
「レジー様?」
レジナルドが執務室で一人雑務をこなしていると、セシリアが遠慮がちにドアを開けた。
「あれ?リア様、ジークと一緒だったのでは?」
「ジーク様はリーナ様と少しお話になってから戻られるそうです。」
「あ、そうなんだ。何の話なんだろう?」
なんとなく姉弟で話す内容は想像出来たがそこは敢えて触れず、手元の書類を軽く整えるとソファーにセシリアを促す。
「そういえば…花祭りの事、ジークから何か聞いた?」
「はい。実は…私、花祭りには一度も行ったことがないのですが…。」
「あー…」
そうか、確かに昨年までのビューロー候爵邸での扱いから考えると祭りなど到底行かせてもらえる立場では無かっただろう。
そこでセシリアは少し恥ずかしそうにしながら聞いてくる。
「レジー様は…お祭りに行かれないのですか?」
「将来の伴侶を探しになら行く気はないけど?」
「…そう、でしたか。」
「リア様は花祭り行きたいんじゃないの?雰囲気だけでも楽しめるでしょ?ああいうのって。」
「…私は華やかな場というものに慣れておりませんので、それほどでも。」
「そうなんだ?まぁそう言う俺達も今まで一度も行ったことはないんだけどね。」
「お二人は今まで花祭りの日は何をして過ごされていたのですか?」
「花祭りの日は、そうだなぁ…。」
去年の花祭りの日は何をしていたか…。確か前日に大雨が降り花祭りの開催が危ぶまれたのだった。祭りの日は朝から晴れたが湿度が高く暑かった。夜になっても気温が下がらず、王宮の塔の上で涼みながら広場を見下ろせる場所で…。
「思い出した、去年はジークと二人で王宮でアイスクリーム食べた!」
「はい?」
「夏に冷たいアイスクリームを食べられるのは限られた日だけなんだよ。氷にも限りがあるからね。」
「アイスクリーム…ですか、花祭りの日に…?」
王宮にはヴィルヘルム国内にある高原の湖で冬季に作られた氷が保管してある。その氷室は地下にある巨大なものらしいがやはり保存できるとは言っても使える量には限りがあり、使用には王族の許可が必要となる。
最近氷を使用したのはレジナルドが知っている限りでは春の茶会でセシリアが倒れた日だ。夜中に目が覚めたセシリアが冷たい水を飲めるようにとジークフリートが直々に持って来させたのを覚えている。
「本当にお祭りに行かなくてもいいなら、今年は三人で一緒にアイスクリーム食べようか?きっとジークも許可してくれると思うよ?」
セシリアは目を丸くして一瞬驚いた様な顔をしたが、すぐに破顔すると大きく頷いた。
「はい。私、アイスクリームもはじめてです。」
真夏に開催されるヴィルヘルム王都の花祭り──。それは午前中出発する花車のパレードからはじまり、キャンドルで飾られた広場で夜通し行われる踊りまで丸一日続く大きな夏祭りである。花祭りでは将来の伴侶と巡り会えるという言い伝えもあり、相手のいない若者たちが多く参加する。
話には聞くものの、ジークフリートとレジナルドは今まで一度も祭りに参加したことがなかった。大勢の人々が集まる祭りに王太子自ら参加して混乱を招くような真似は出来ないし、何より二人とも将来の伴侶が祭りで見つかるなどとは思っていなかったからだ。
「花祭り、か。考えたこともなかった。女性はそういうものに行きたがると言うからな…。」
「リア様花が好きだろう?二人が祭りに参加するなら何人か騎士をつけるように話しとくからさ。」
「あぁ、一度聞いてみるよ。」
「レジー様?」
レジナルドが執務室で一人雑務をこなしていると、セシリアが遠慮がちにドアを開けた。
「あれ?リア様、ジークと一緒だったのでは?」
「ジーク様はリーナ様と少しお話になってから戻られるそうです。」
「あ、そうなんだ。何の話なんだろう?」
なんとなく姉弟で話す内容は想像出来たがそこは敢えて触れず、手元の書類を軽く整えるとソファーにセシリアを促す。
「そういえば…花祭りの事、ジークから何か聞いた?」
「はい。実は…私、花祭りには一度も行ったことがないのですが…。」
「あー…」
そうか、確かに昨年までのビューロー候爵邸での扱いから考えると祭りなど到底行かせてもらえる立場では無かっただろう。
そこでセシリアは少し恥ずかしそうにしながら聞いてくる。
「レジー様は…お祭りに行かれないのですか?」
「将来の伴侶を探しになら行く気はないけど?」
「…そう、でしたか。」
「リア様は花祭り行きたいんじゃないの?雰囲気だけでも楽しめるでしょ?ああいうのって。」
「…私は華やかな場というものに慣れておりませんので、それほどでも。」
「そうなんだ?まぁそう言う俺達も今まで一度も行ったことはないんだけどね。」
「お二人は今まで花祭りの日は何をして過ごされていたのですか?」
「花祭りの日は、そうだなぁ…。」
去年の花祭りの日は何をしていたか…。確か前日に大雨が降り花祭りの開催が危ぶまれたのだった。祭りの日は朝から晴れたが湿度が高く暑かった。夜になっても気温が下がらず、王宮の塔の上で涼みながら広場を見下ろせる場所で…。
「思い出した、去年はジークと二人で王宮でアイスクリーム食べた!」
「はい?」
「夏に冷たいアイスクリームを食べられるのは限られた日だけなんだよ。氷にも限りがあるからね。」
「アイスクリーム…ですか、花祭りの日に…?」
王宮にはヴィルヘルム国内にある高原の湖で冬季に作られた氷が保管してある。その氷室は地下にある巨大なものらしいがやはり保存できるとは言っても使える量には限りがあり、使用には王族の許可が必要となる。
最近氷を使用したのはレジナルドが知っている限りでは春の茶会でセシリアが倒れた日だ。夜中に目が覚めたセシリアが冷たい水を飲めるようにとジークフリートが直々に持って来させたのを覚えている。
「本当にお祭りに行かなくてもいいなら、今年は三人で一緒にアイスクリーム食べようか?きっとジークも許可してくれると思うよ?」
セシリアは目を丸くして一瞬驚いた様な顔をしたが、すぐに破顔すると大きく頷いた。
「はい。私、アイスクリームもはじめてです。」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました
樹里
恋愛
社交界デビューの日。
訳も分からずいきなり第一王子、エルベルト・フォンテーヌ殿下に挨拶を拒絶された子爵令嬢のロザンヌ・ダングルベール。
後日、謝罪をしたいとのことで王宮へと出向いたが、そこで知らされた殿下の秘密。
それによって、し・か・た・な・く彼の掃除婦として就いたことから始まるラブファンタジー。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜
ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して──
大商会の娘サーシャ。
子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。
華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。
そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。
けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。
サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。
新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。
一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき──
夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。
※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。
※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる