王太子殿下は甘い物を召し上がりません!

ゆみ

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はじめてのお馬さん

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 その日の朝食後。話があるからとジークフリートに指定された場所へ行くとそこには今朝見た白馬が二頭つながれていた。
「あ、リア様、ジークはもうちょっとで来ると思うから。」
 鞍を点検していたのか、レジナルドが馬の向こうから声を掛けてきた。少し離れた場所からその様子を伺っていると、作業を終えたレジナルドがセシリアの方に笑いながら向かってくる。
「何?ひょっとして怖くてそれ以上近寄れない?」
 なぜ分かったのかと思いながらも無言で頷くとレジナルドは優しい顔をして馬の首あたりをポンポンと叩いた。
「大丈夫、ここの馬はどいつも大人しいから。ほら、押さえてるから手を出してみて。」
 レジナルドは馬の顔を正面に向かせるとセシリアに鼻の前に手を差し出させる。馬はセシリアの手の匂いをクンクンと嗅いでいるようだ。
「ここ、触ってみて。」
 レジナルドがセシリアの手をとると馬の鼻にそっと押し付けた。
「や…わらかい…。それになんだかあったかいですね。」
 馬はセシリアが鼻を触っても大人しくしている。
「そうでしょ?もうちょっと上を触っても大丈夫だよ?」
 セシリアは鼻の上の白い毛を少し撫でるともう十分だとばかりに手を引っ込めた。
「ジーク様のお話というのは馬の乗り方のことだったのでしょうか?」
「よじ登り方でしょ?そんなことじゃないと思うけど?あ、来た来た。」
 妙に楽しそうなレジナルドはジークフリートが建物の影から姿を見せるとすぐに一頭の縄を解いた。
「リア、少し向こうに台が見えるだろう?あれに上ってから馬に乗るんだ、おいで。」
 ジークフリートに連れられて踏み台に上ったセシリアはいとも簡単に馬の鞍の上に座らされ、なんとなく騙されたような気持になっていた。後ろにはジークフリートが支えるように乗って来る。
「ほら、ちょうどレジーが向こうで乗るところだ。本当ならああやるんだよ。」
 ジークフリートが言った通り、向こうではもう一頭の馬にレジナルドが今まさにまたがろうとしていた。
「…すごい。身軽ですね。」
「騎士がいちいち台を持って歩いてはいられないからな。このまま動くから怖かったら教えて?」
 怖いと思っていたのも動き出しの一瞬で、その後はジークフリートに支えられゆっくりと歩く馬の背で美しい景色を眺める余裕すらでてきた。目線が高いので随分先まで見渡せる。
「離宮は建物も綺麗ですけど、景色も素晴らしい場所にあるのですね。」
「そうだな、王都とは違って自然がいっぱいだからな。」
 レジナルドが先導して少し前を馬で歩く。目的地はあらかじめ打ち合わせていたようだ。
 ジークフリートはレジナルドの方を見ながらセシリアを支えている腕を少しだけゆるめ、確認するようにその顔を覗き込んだ。
「どうだ?怖くないか?」
「はい、大丈夫です。」
「そうか、それならこのまま少し話を聞いてほしい。」
 再び前を見たジークフリートの声は少しだけ硬いものに変わっていた。
「王都に帰ったらリアに客が来る予定だ。ウォーレン侯爵家から、いとこが来ると知らせが届いた。」
「…いとこですか?」
「私も詳しくは分からない。だがこの時期にわざわざ訪ねて来るというのがどうにも嫌な予感しかしないんだ。」
「…」
「向こうは婚約祝いに来ると言っている。おかしいだろう?初対面だというのに…。」
「確かに不自然ですね…。」
「フェルナンドが何かを企んでいるのは間違いないと思う。だから何かあったら私にすぐに言ってほしい。」
「はい、わかりました。」
「私に言いにくいようならレジーでも構わない。とにかく、一人で悩むようなことは絶対にしないで、いいね?」
 ジークフリートは何が起こるのかを分かっているかのような口振りだがそれ以上は教えてくれなかった。
「…ウォーレン侯爵家のいとこですか。どんな方なのでしょうね…。」
「フェルナンドとリアのいとこだ。美形であることは間違いないだろうな。」
「…フェルナンド殿下が美形であることは認めますが、私まで一緒にされては困ります。」
「どうして?…ひょっとしていとこの狙いはリアではないのかもしれないな…。」
 ジークフリートはセシリアの額にキスをすると楽しそうに笑った。
「レジーにキスをするところを見られた、後で絶対にからかわれるぞ?」
 セシリアがはっとして前方を見るとこちらを見ていたであろうレジナルドの顔がちょうど前に向き直る所だった。
「もうすぐ着く、ほら、この先だ。」
 向かう先には草原とそれに続く石だらけの湖岸があった。その向こうには緑色の水をたたえた湖が広がっている。
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