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不信感
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「いらっしゃいませ!」
扉の開く気配にカウンターから振り向くと、そこには息を切らして肩を揺らす男が立っていた。
「ジャン……」
手に持ったトレイをカウンターに置くとクラリスはその場に立ち尽くした。
──もう来てくれたの?まだ4日しか経ってないのに…?
余程慌てていたのか肩で息をしたままのジャンはクラリスをちらっと見るとそのまま何も言わずに店内を見渡し、案内を待つことなくあるテーブルに向かって歩き出した。クラリスに話しかけることもなく、脇をすり抜けて……。
「!?」
クラリスは心臓が大きく跳ねたように感じた。ジャンの目に今映っているのは自分でないことは明らかだ。何も言えないままジャンの視線の先をうかがうと、ロベールとマルセルのいるテーブルにその目が向いていることに気が付いた。
ジャンに気が付いたマルセルは食事をしていた手を止めるとロベールに小声で何かを囁き、懐から銀貨を取り出すとすぐに立ち上がった。
しばらくジャンとマルセルは無言でにらみ合っていたが、遅れて立ち上がったロベールが二人の肩に手をかけるとどちらからともなく店の出口へと向かい歩き出した。
──知り合い…だったんだ、やっぱり。
「ごちそうさま、残して悪かったね。また来るよ!」
すれ違いざまにロベールがクラリスに声をかけジャンの背中を叩くと、ジャンは少し困った顔をしながらクラリスにまた後でと小さく囁いた。
「ありがとう…ございました……。」
また後で──店に戻って来るということだろうか?クラリスは嵐のように去っていった三人を見送ると、視線を店内に戻した。ロベール達が座っていたテーブルにはマルセルの食べかけの料理がぽつんと残っていた。その脇には銀貨が2枚……。引き寄せられるようにテーブルに近寄ると、銀貨を手にとった。マルセルが懐から取り出す銀貨はまるで下ろしたてのようにきれいで傷一つない。ジャンもそうだった。二人ともどこでトロメリン通貨に両替をしてきたのだろうか?商店街の店や宿で両替をしたならば新品の硬貨を出すことはまずないだろう。両替商だっていつでもこんなにきれいな硬貨を出すものだろうか?
クラリスは銀貨をポケットに収めると、黙ってテーブルを片付け始めた。手を休める暇はない……そう自分に言い聞かせながら。
──無事に帰って来てくれたらそれでいいって思ってたのに。顔を見たら今度は話ができなかったことにがっかりするなんて。
テーブルを綺麗に片付け終わり幾つかある空席を確認しながらふと気が付いた。そういえば今日もセブおじさんが来ていないようだ。おばさんからまだ許可がでないのだろうか?
「お母さん、おじさんは?確か昨日も来てなかったよね?」
「あぁ、そういえばそうだね。おじさんの家も今大変みたいだからね。」
厨房から手を拭きながら出てきた叔母に問いかけると、何か訳を知っているようだった。
「何かあったの?」
「お前は聞いてないのかい?なんでも金物屋を畳むことに決めたらしいよ?」
「聞いてない…。そんなに急に、どうして?」
「引っ越すんだってさ。ずいぶん前から話はあったけどおじさんが断ってたらしいんだよ。それがここ何ヶ月かで気が変わったらしくてね。」
「……引っ越す…?」
「ザールに来ないかって言ってくる人がいるらしいの。随分長い間熱心に通ってたみたいだよ?」
クラリスにもやっと事情が見えてきた。ロベール達のことに違いない。あの2人がザールにあるという会社にセブおじさんを誘ったのだろう。人材を探しに来たとロベールもそう言っていたし、この店は仕事の合間に来るのに丁度いいとも言っていたはずだ。セブおじさんの金物屋は2軒隣なんだからそれもそうだろう。
「ザールで…金物屋するの?」
「それは違うと思うよ?お前はセブおじさんが長い間騎士の訓練所の先生だったこと知らないのかい?」
「……昔の話だったし話半分で聞いてたんだけど、あれ本当の話だったの?」
「本当だよ。事故だか怪我だか知らないけど、そういうのがあって辞めたはずだよ。」
──ザールで騎士の訓練を?2人が関わってる会社って一体何をしてるの?もしかて……ジャンも同じ会社に?
そのような経歴を持つ人物を会社に雇い、一体何をさせるというのか?一気に怪しげな話に思えてしまい、クラリスの意識はポケットにある綺麗な銀貨に向かっていた。この綺麗な銀貨は本当に正規のルートで手に入れたものなのだろうか?
扉の開く気配にカウンターから振り向くと、そこには息を切らして肩を揺らす男が立っていた。
「ジャン……」
手に持ったトレイをカウンターに置くとクラリスはその場に立ち尽くした。
──もう来てくれたの?まだ4日しか経ってないのに…?
余程慌てていたのか肩で息をしたままのジャンはクラリスをちらっと見るとそのまま何も言わずに店内を見渡し、案内を待つことなくあるテーブルに向かって歩き出した。クラリスに話しかけることもなく、脇をすり抜けて……。
「!?」
クラリスは心臓が大きく跳ねたように感じた。ジャンの目に今映っているのは自分でないことは明らかだ。何も言えないままジャンの視線の先をうかがうと、ロベールとマルセルのいるテーブルにその目が向いていることに気が付いた。
ジャンに気が付いたマルセルは食事をしていた手を止めるとロベールに小声で何かを囁き、懐から銀貨を取り出すとすぐに立ち上がった。
しばらくジャンとマルセルは無言でにらみ合っていたが、遅れて立ち上がったロベールが二人の肩に手をかけるとどちらからともなく店の出口へと向かい歩き出した。
──知り合い…だったんだ、やっぱり。
「ごちそうさま、残して悪かったね。また来るよ!」
すれ違いざまにロベールがクラリスに声をかけジャンの背中を叩くと、ジャンは少し困った顔をしながらクラリスにまた後でと小さく囁いた。
「ありがとう…ございました……。」
また後で──店に戻って来るということだろうか?クラリスは嵐のように去っていった三人を見送ると、視線を店内に戻した。ロベール達が座っていたテーブルにはマルセルの食べかけの料理がぽつんと残っていた。その脇には銀貨が2枚……。引き寄せられるようにテーブルに近寄ると、銀貨を手にとった。マルセルが懐から取り出す銀貨はまるで下ろしたてのようにきれいで傷一つない。ジャンもそうだった。二人ともどこでトロメリン通貨に両替をしてきたのだろうか?商店街の店や宿で両替をしたならば新品の硬貨を出すことはまずないだろう。両替商だっていつでもこんなにきれいな硬貨を出すものだろうか?
クラリスは銀貨をポケットに収めると、黙ってテーブルを片付け始めた。手を休める暇はない……そう自分に言い聞かせながら。
──無事に帰って来てくれたらそれでいいって思ってたのに。顔を見たら今度は話ができなかったことにがっかりするなんて。
テーブルを綺麗に片付け終わり幾つかある空席を確認しながらふと気が付いた。そういえば今日もセブおじさんが来ていないようだ。おばさんからまだ許可がでないのだろうか?
「お母さん、おじさんは?確か昨日も来てなかったよね?」
「あぁ、そういえばそうだね。おじさんの家も今大変みたいだからね。」
厨房から手を拭きながら出てきた叔母に問いかけると、何か訳を知っているようだった。
「何かあったの?」
「お前は聞いてないのかい?なんでも金物屋を畳むことに決めたらしいよ?」
「聞いてない…。そんなに急に、どうして?」
「引っ越すんだってさ。ずいぶん前から話はあったけどおじさんが断ってたらしいんだよ。それがここ何ヶ月かで気が変わったらしくてね。」
「……引っ越す…?」
「ザールに来ないかって言ってくる人がいるらしいの。随分長い間熱心に通ってたみたいだよ?」
クラリスにもやっと事情が見えてきた。ロベール達のことに違いない。あの2人がザールにあるという会社にセブおじさんを誘ったのだろう。人材を探しに来たとロベールもそう言っていたし、この店は仕事の合間に来るのに丁度いいとも言っていたはずだ。セブおじさんの金物屋は2軒隣なんだからそれもそうだろう。
「ザールで…金物屋するの?」
「それは違うと思うよ?お前はセブおじさんが長い間騎士の訓練所の先生だったこと知らないのかい?」
「……昔の話だったし話半分で聞いてたんだけど、あれ本当の話だったの?」
「本当だよ。事故だか怪我だか知らないけど、そういうのがあって辞めたはずだよ。」
──ザールで騎士の訓練を?2人が関わってる会社って一体何をしてるの?もしかて……ジャンも同じ会社に?
そのような経歴を持つ人物を会社に雇い、一体何をさせるというのか?一気に怪しげな話に思えてしまい、クラリスの意識はポケットにある綺麗な銀貨に向かっていた。この綺麗な銀貨は本当に正規のルートで手に入れたものなのだろうか?
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