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四章「帰還」
#11
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「そういうことなら剣は用意させてもらおう」
翌朝カインに相談すると、あっさりと返答が返ってきた。
「いいんですか?!」
「いいとも。騎士院には訓練用の剣がいくらでもあるからね」
「騎士の訓練用?」
「ぼくたちじゃ扱いきれないんじゃない?」
「そこも安心してほしい。二刀流の騎士は少なくないし、そういう騎士は聞き手じゃない方に刃渡りが短い剣を持つんだ。あれなら君たちの体格にはぴったりだろう」
「でも、タダというわけにも……」
遠慮するコータにカインはウィンクを一つ。
「倉庫で錆びついているよりはずっといいさ。それに、冒険者になるのなら武器は持っておくのは必須だ。受け取っておくべきだ」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
「かしこまらなくてもいいさ! キミたちには期待しているしね!」
期待している、という言葉に、皆は顔を赤くして喜んでいる。
わかってる。カインは俺に行動を起こして欲しがっている。
かく言う俺も強く感じている。
――――俺の生きる場所はあそこにしかない。
「なら、早速冒険者ギルドに行くといい。初心者のための研修は随時受け付けてるし、試験はあるがキミたちならなんの問題もないはずだよ」
そう言ってチラリと俺を見るカイン。
「外出許可も出たことだし、ギルドにはぼくが付いて行くまでもないよね、ダイチくん」
「まぁ……」
なにせ、前世では俺のホームグラウンドだった場所だ。
それに昨日、皆が露天であそんでいる間に面通しはしておいた。
「キミたちの事情はすでにギルドに伝わっている。安心して行ってくるといい」
▽
冒険者ギルドは大通りに面した大きな建物だ。
少し歩くが同じ大通り沿いにあるカインの家からは一本道だ。
若干足取りの重いぼくと違い、うずうずと今にも走り出しそうなのがケンゴだ。
鼻息も荒く、
「とうとう俺の夢が……もう諦めかけていたのに……現実のものに……」
などと言いながらグッと拳を握ったりしている。
そういえば冒険者になるのが夢だったんだっけ。
* * *
「早速来たかちびグレン! 待っておったぞ!」
ギルドに到着するやいなや、ガッハッハと豪快な笑い声に歓迎されると、ケンゴも含むみんなはピシリと固まってしまった。
俺は小さくため息を付いたが、そんなことにはお構いなく大声でバシバシと俺の肩を叩いているのがこのギルドの教官だ。
名はガラハド。
歴戦の冒険者ではあるが、怪我が原因で引退。その後はギルドで新人講習や中堅レベルの冒険者たちの相談役なんかをやっている。
戦闘の練度も高いし、経験に基づいた実践的な技術や知識も豊富で、しかもかなり知恵も回るというすごい男だ。
出自は貴族の末弟だとかでその性質は紳士的。犯罪者スレスレの乱暴者も多い冒険者の中にあっては珍しい、清廉潔白で欠点のない人格者と言っていいだろう。
かく言う俺も前世ではなんだかんだと世話になった。
いいやつなんだが、バカみたいに肥大した筋肉と傷だらけの肌、豪快すぎる言動が暑苦しい。ついでに顔も怖い。世紀末にヒャッハーとか言いそうな面構えをしている。なのにピッタリと丁寧に撫でつけられた金髪がますます暑苦しい。
よく知るものからの信頼は厚いが、その外見から苦手だというやつも多い。
日本生まれの子供ならなおさらだろう。カナなどアリサのうしろに隠れて震えている。
だがガラハドは周りの目を気にするような男ではないのだ。
「カインのやつからも、子供だからと手を抜かずにしっかり試験をしてやってくれと言われておるからな! 早速訓練場まで来るがよい!」
そう言いながら、他のメンバーにも目を向ける。
「うむ、みな緊張しておるな。心配するな! 怪我をさせたりはせん。実力を見るだけだ。ついてこい!」
そういって獰猛な笑顔(本人はにっこり微笑みかけてるつもりなのだ)を見せ、ギルドの裏手にある訓練場まで先導する。
「だ、大丈夫なの?」
「殺されたりしない?」
「筋肉やべぇな……」
「……………………こわい」
子供たちが緊張しまくりだが、こればかりは仕方ないだろう。
「大丈夫だよ、ガラハドはああみえて紳士だから」
「そうなのか?」
「なんだか殺人鬼みたいな見た目してるけど」
「食われたりしない?」
「……………………こわい」
「聞こえておるぞ、わっぱども! 冒険者たるもの、見た目で判断をしてはならんな!」
「「「「わぁっ、すみませんっ!!」」」」
一流の冒険者は耳がいい。魔力を使って五感を鋭くするのはダンジョン探索の必須技能だからだ。
散々な言われようだというのにガラハドは気にする様子もなく(言われ慣れているのだろう)「ガッハッハ」とそれを笑い飛ばした。
「モンスターの中には小さくて見た目が可愛らしくても強い奴がいくらでもいる! 見た目が恐ろしげでも大したことのない奴もな! 故に冒険者は見た目に惑わされず、敵の力量や敵意の有無を見極めねばならん!」
「そ、そうですね」
「吾輩に敵意がないことくらいは見て取れんとな! 未熟未熟!」
笑い飛ばしながらずんずん歩き進めるガラハドについていくと、あっという間に訓練場だ。
ギルド裏の訓練場と言ってもただの広場だ。
攻撃魔法が使える冒険者もそれなりにいるので石積みの壁で囲まれているが、ただそれだけだ。
壁際には様々な武器や防具(どれも使い古しの安物だ)がかけられている。
ガラハドはこちらに向き直るとギラリと攻撃的な笑みを浮かべた。
「ひっ」
子供たちから小さな悲鳴。
ガラハドは言った。
「さあ、実力を見せろ」
翌朝カインに相談すると、あっさりと返答が返ってきた。
「いいんですか?!」
「いいとも。騎士院には訓練用の剣がいくらでもあるからね」
「騎士の訓練用?」
「ぼくたちじゃ扱いきれないんじゃない?」
「そこも安心してほしい。二刀流の騎士は少なくないし、そういう騎士は聞き手じゃない方に刃渡りが短い剣を持つんだ。あれなら君たちの体格にはぴったりだろう」
「でも、タダというわけにも……」
遠慮するコータにカインはウィンクを一つ。
「倉庫で錆びついているよりはずっといいさ。それに、冒険者になるのなら武器は持っておくのは必須だ。受け取っておくべきだ」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
「かしこまらなくてもいいさ! キミたちには期待しているしね!」
期待している、という言葉に、皆は顔を赤くして喜んでいる。
わかってる。カインは俺に行動を起こして欲しがっている。
かく言う俺も強く感じている。
――――俺の生きる場所はあそこにしかない。
「なら、早速冒険者ギルドに行くといい。初心者のための研修は随時受け付けてるし、試験はあるがキミたちならなんの問題もないはずだよ」
そう言ってチラリと俺を見るカイン。
「外出許可も出たことだし、ギルドにはぼくが付いて行くまでもないよね、ダイチくん」
「まぁ……」
なにせ、前世では俺のホームグラウンドだった場所だ。
それに昨日、皆が露天であそんでいる間に面通しはしておいた。
「キミたちの事情はすでにギルドに伝わっている。安心して行ってくるといい」
▽
冒険者ギルドは大通りに面した大きな建物だ。
少し歩くが同じ大通り沿いにあるカインの家からは一本道だ。
若干足取りの重いぼくと違い、うずうずと今にも走り出しそうなのがケンゴだ。
鼻息も荒く、
「とうとう俺の夢が……もう諦めかけていたのに……現実のものに……」
などと言いながらグッと拳を握ったりしている。
そういえば冒険者になるのが夢だったんだっけ。
* * *
「早速来たかちびグレン! 待っておったぞ!」
ギルドに到着するやいなや、ガッハッハと豪快な笑い声に歓迎されると、ケンゴも含むみんなはピシリと固まってしまった。
俺は小さくため息を付いたが、そんなことにはお構いなく大声でバシバシと俺の肩を叩いているのがこのギルドの教官だ。
名はガラハド。
歴戦の冒険者ではあるが、怪我が原因で引退。その後はギルドで新人講習や中堅レベルの冒険者たちの相談役なんかをやっている。
戦闘の練度も高いし、経験に基づいた実践的な技術や知識も豊富で、しかもかなり知恵も回るというすごい男だ。
出自は貴族の末弟だとかでその性質は紳士的。犯罪者スレスレの乱暴者も多い冒険者の中にあっては珍しい、清廉潔白で欠点のない人格者と言っていいだろう。
かく言う俺も前世ではなんだかんだと世話になった。
いいやつなんだが、バカみたいに肥大した筋肉と傷だらけの肌、豪快すぎる言動が暑苦しい。ついでに顔も怖い。世紀末にヒャッハーとか言いそうな面構えをしている。なのにピッタリと丁寧に撫でつけられた金髪がますます暑苦しい。
よく知るものからの信頼は厚いが、その外見から苦手だというやつも多い。
日本生まれの子供ならなおさらだろう。カナなどアリサのうしろに隠れて震えている。
だがガラハドは周りの目を気にするような男ではないのだ。
「カインのやつからも、子供だからと手を抜かずにしっかり試験をしてやってくれと言われておるからな! 早速訓練場まで来るがよい!」
そう言いながら、他のメンバーにも目を向ける。
「うむ、みな緊張しておるな。心配するな! 怪我をさせたりはせん。実力を見るだけだ。ついてこい!」
そういって獰猛な笑顔(本人はにっこり微笑みかけてるつもりなのだ)を見せ、ギルドの裏手にある訓練場まで先導する。
「だ、大丈夫なの?」
「殺されたりしない?」
「筋肉やべぇな……」
「……………………こわい」
子供たちが緊張しまくりだが、こればかりは仕方ないだろう。
「大丈夫だよ、ガラハドはああみえて紳士だから」
「そうなのか?」
「なんだか殺人鬼みたいな見た目してるけど」
「食われたりしない?」
「……………………こわい」
「聞こえておるぞ、わっぱども! 冒険者たるもの、見た目で判断をしてはならんな!」
「「「「わぁっ、すみませんっ!!」」」」
一流の冒険者は耳がいい。魔力を使って五感を鋭くするのはダンジョン探索の必須技能だからだ。
散々な言われようだというのにガラハドは気にする様子もなく(言われ慣れているのだろう)「ガッハッハ」とそれを笑い飛ばした。
「モンスターの中には小さくて見た目が可愛らしくても強い奴がいくらでもいる! 見た目が恐ろしげでも大したことのない奴もな! 故に冒険者は見た目に惑わされず、敵の力量や敵意の有無を見極めねばならん!」
「そ、そうですね」
「吾輩に敵意がないことくらいは見て取れんとな! 未熟未熟!」
笑い飛ばしながらずんずん歩き進めるガラハドについていくと、あっという間に訓練場だ。
ギルド裏の訓練場と言ってもただの広場だ。
攻撃魔法が使える冒険者もそれなりにいるので石積みの壁で囲まれているが、ただそれだけだ。
壁際には様々な武器や防具(どれも使い古しの安物だ)がかけられている。
ガラハドはこちらに向き直るとギラリと攻撃的な笑みを浮かべた。
「ひっ」
子供たちから小さな悲鳴。
ガラハドは言った。
「さあ、実力を見せろ」
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