秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に

カイエ

文字の大きさ
60 / 65
四章「帰還」

#12

しおりを挟む
「……どうするよ」
「そんな事言われても」
「じゃあさ、二手に分かれて左右から攻撃するってのはどう?」
「……………………こわい……………………」
「その前にみんな」

 まごまごしている皆に釘を刺す。

「みんな、ガラハドの耳の良さをなめたらだめだよ。ここでのコソコソ声も全部聞かれていると思っていいよ」
「ええ?!」
「じゃあどうやって戦えばいいのさ!」
「別に勝つ必要はないよ。ただ実力を見せればいいんだから」
「と言ってもなぁ……」

 離れたところで不敵に笑う筋肉だるまを横目に、秘密基地グループの面々はコソコソと話し合う。
 が、そもそも敵の前で話し合うという状況がもうよろしくない。
 一応はそれぞれ手に合いそうな武器を持っているが、なんとも心もとない。
 
 勝つ必要はない。
 必要はないが……。

(だからといって勝っちゃいけないってことでもないよな)

 ガラハドには世話になった。
 だからこそ、秘密基地グループ………いや、秘密基地の実力を示しておきたい。

「聞け、お前たち」
「あ、ダイチさんだ」
「ダイチさんだ」
「え、ダイチさんってことはもしかして危険? 危険なの?」
「……………………こわい……………………」
「いいから聞け。お前たち、ガラハドを攻略するぞ」

 俺が言うと皆は「えっ」と言って顔を見合わせる。
 ガラハドが獰猛な笑みを深めたのが気配でわかる。

「……あんなのに勝てるの?」
「先程も言ったが、勝つ必要はない。ガラハドは『実力を見せろ』と言った。なら見せるまでだ」

 俺はすぅっと空気を肺に送り込み、鋭く叫んだ。

ポイズンタラテクトクモ2! ファングフロッグカエル1! レッサーニードルスコーピオンサソリ1! ホーンボアイノシシ2! 来るぞッ!!」
「「「「!!!!!」」」」

 バッと臨戦態勢に入るパーティメンバーたち。

「アリサッ!!」
「ほいなっ!!」

 間髪入れずケンゴがアリサに指示を出しながら同時に飛び出す。
 驚きで目を見開くガラハド。しかしすぐに嬉しそうにそれを迎え入れるように木刀を構えた。

「コータッ! 行けッ!」
「『Ventus(風よ!)」

 ケンゴの指示にコータが即座に応える。ドバッ、と風が舞い上がる。しかしガラハドは超ヘヴィー級だ。びくともしない。だが砂が舞い上がるので薄目になっている。一部とはいえ視界を奪えた! 好機!

「『Ignis(火よ!)』

 ガラハドの顔の左右に2つ同時に火の玉が生まれる。
 カナの好判断だ。直接当てようとしても防がれるだけだ。火を嫌ったガラハドがウッと呻いて後ろに下がろうとしたところに、

「『Thorn(穿て)!」

 カナの猛追だ。気配を感じたガラハドは後ろに下がるのを止めて前に一歩踏み出そうとする。そこに、
 
「ホーーーーーームランッ!!!!」 

 アリサの力ずくのフルスイング! 難なく木刀で弾かれるが態勢は崩せた。そこに、

「「『Stiria(氷の槍よ!)』」」

 コータとカナの同時詠唱! 巨大な氷の槍が2つ宙に浮かぶ。
 
「おいおいおいおいおい……!!!」

 ガラハドの顔に焦りが生まれる。

「「いっけぇええええええええ――――ーッ!!!」」

 両手を振り上げたコータとカナが、その手を勢いよく振り下ろす!

「舐めるなっ!」

 ガラハドは跳ねるように後ろに下がるが、氷の槍のケンゴが鋭い足さばきで突進してくる。

「坊主ッ?!」

 このままではケンゴに『Stiria(氷の槍よ)』が直撃する……と焦るガラハドだったが。

「……は?」

 氷の槍はそのままピタリと止まったまま動かない。カナとコータのフェイントだ。
 ケンゴがニヤリと不敵に笑い、叫んだ。

「んぇええええええーーーーーーーーーーーーーんッツ!!!!」





「殺す気か?! 殺す気なのか?!」

 冷や汗でひどい顔になっているガラハドが肩で息をしながら怒鳴った。

「なんだよ、実力を見せろって言ったのはガラハドだろうが」
「や・り・す・ぎ・だッ! バカ者!!」
「負けたからって八つ当たりは良くないな」
「負けてはおらんよな?!」

 そう、残念ながら一撃を入れるには至らず、ケンゴの攻撃はあっさりといなされてしまった。
 剣が通用しなかったアリサとケンゴは拗ねているが、ガラハド相手にあれだけやれれば十分すぎる。
 試合には負けたが、おれは秘密基地パーティの勝ちだと思っている。
 コータとカナはフェイントがうまくハマったことが嬉しかったらしく、ハイタッチなどしている。

「で? 実力は見せられたのか?」
「ああ、十分である。初級から始めさせるのが申し訳ないくらいの練度である」

 ガラハドの実感のこもった言葉に、子どもたちがワッと湧いた。

「なら、合格ってことでいいな?」
「いいや、まだだ」

 ガラハドはゆらりと立ち上がる。

「まだお前の実力を見ておらん」
「……できれば遠慮したいんだけど……」
「グレン。――なぁ『罰当たり』のグレアムよ。お前が死んだと聞いたときは、目の前が真っ暗になったぞ」
「そうかい」
「剣の実力は……吾輩とどっこいどっこいだったか。だが結局一度も『罰当たり』には勝てないままだった」
「そうだったか? 剣の腕ならガラハドのほうが上だったろ。俺、細っこかったし」

 それに今は子供だし、と華奢な体をアピールするが。

「だが勝てん。何をどうしても貴様には勝てなかった。勝ち逃げされたと思っておったが、こうして好機が訪れた! これを逃がすつもりはないぞ、グレアムッ!!」
「相変わらず暑っ苦しいな!?」

 後ろでは「え、ダイチとガラハドさんが戦うの?」などと子どもたちがざわついている。

「やめといたほうがいいよ、その体格差じゃ無理だって!」
「ダイチくんが怪我しちゃう!」
「えー、でもダイチさんの実力は本物でしょ」
「いけいけ! オレたちの仇を打ってくれ!」

 コータとカナは止めているが、アリサとケンゴが囃し立てている。

「仲間はああ言っておるぞ。それに吾輩には貴様を逃がすつもりはない!」
「わかったよ……やるよ。ただしこの体格差なんだ。そちらは寸止め、こちらは何でもありってことでいいか?」
「よかろう! そのくらいのハンデはくれてやろう! 来いッ!! グレアムッ!!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...