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四章「帰還」
#13
しおりを挟む「よかろう! そのくらいのハンデはくれてやろう! 来いッ!! グレアムッ!!!」
「ダイチだよッ!!!」
ホイ、っとポケットから小粒の魔石を5粒ほど投げつけてやると、ガラハドは「は?」と驚いた顔を見せた。まさか剣を握るより先に魔石を投げつけてくるとは思わなかったようだ。
「『Illuminare(輝きよ!)』」
「ガッ……ッ!?」
「わっ!?」「きゃ!?」
閃光魔法、それもあえて『Illuminare(輝きよ)』に不向きな土属性の魔石を使ったド直球のフェイントだ。火属性の魔石で来ると思いこんで反射的に対応しようとしたガラハドの目の前で、強烈な光がほとばしる!
「『Nocturna(夜よッ!)』」
「くッ……ッ!?」
すかさずガラハドの視力が戻る前に眼球から光を奪い取る。これで視覚は殺した。しかしさすがはガラハド、この程度でたじろぎはしない。すぐに後ろに距離を取りつつ木剣を構え、耳をそばだてる。このクラスの冒険者にもなれば、音だけでも十分に戦える技量を持つ。そこにすかさずゴミ魔石を投げつけるが、ガラハドは気配だけでそれを正確に払い飛ばす。
しかし。
「『Silentium(静寂よ!)』
「ぬッ!?」
土に紛れさせてはじめに放った魔石を蹴り飛ばしたことには気づかなかったようだ。視覚だけでなく聴覚まで奪われ、流石に分が悪いと判断したガラハドは地面を蹴って移動を試みる。だが好きにはさせない。
「『Flamma(炎よッ!)』」
移動しようとする方向に先回りして魔術を放つ。視覚・聴覚だけでなく、冒険者は肌で気配を感じ取る。ガラハドクラスだと鼻も犬並みに利く。しかし高熱を放ってしまえばそれも無効化できる。
これで丸裸だ。畳み掛ける!
「『Thorn(穿てッ!)』」
「まっ、待て……ッ!!」
「『Thorn(穿てッ!)』『Thorn(穿てッ!)』『Thorn(穿てッ!)』『Thorn(穿てッ!)』――ダメ押しで『Aquae (水よ!)』」
「ごぼごぼごぼごぼっ! が、やめ、や、息、が……!」
「面ぇ――ーーん!」
最後に木刀でぶん殴ってやると、ガラハドはぐわんぐわんと目を回し、
「貴……様……この……罰当たりの……大馬鹿野郎、が……」
そう言い残すと膝から崩れ落ちた。
▽
たった十秒ほどの戦い。
一見圧勝に見えるが、かなり運に助けられた。
ガラハドは上位者だ。前世ならともかく、純粋な戦闘力だと今の自分ではお話にもならない。
はじめのフェイントがハマってくれたおかげでなんとか場を支配できたが、一つ間違えれば転がされていたのはこちらだった。
「ふぅ……」
「うわぁ~、ひっでぇ……」
いい汗をかいたと爽やかな気持ちで仲間の元へ戻ると、ケンゴがドン引きしていた。
だがこのくらいしないとガラハドには勝てなかった。
そもそも体格からして違うのだ。
前世ではそれなりに剣術も収めたつもりだが、ダイチとしてのこの体ではお話にならないし、そもそも俺は剣術家ではなく魔石戦の専門家なのだ。
あるものは何でも使え。
勝つためには手段を選ぶな。
それが冒険者としての矜持だ。
故にこの程度の不意打ちに悪びれる必要は一切ない。
と思ったが……
「な、何? その目……」
全員から思いっきりジト目で見られていた。
「ダイチ、ひでぇ」
「流石にあれはちょっと……」
「ガラハドさんが可愛そう」
「ダイチくんを見る目がかわっちゃいそう」
「なんで?!」
不評の嵐だった。
「ガラハドは上位者なんだからしょうがないじゃん!」
「それにしたって……」
「なんか、性格悪いっていうか……」
「ええ……!?」
性格が悪いと言われてちょっと凹む。
特にカナちゃんからの批難の視線が痛い。
泣きそう。
「ところで、聞いたことがない魔術が混じってた」
「えっと、ノクト……なんたらって」
コータとアリサが初見の魔術に興味を持ったようだ。
慌てて話題をそちらに切り替えてやる。
「ああ『Nocturna(夜よ)』。光を奪う魔術」
「光を? どういうこと?」
「今回はまずはじめにフェイントで『Illuminare(輝きよ)』で目を潰した。目が慣れる前に眼球周辺の光を奪ってしまえば、視界が役に立たなくなる」
「……うわっ」
「そ、その次のやつは?」
「『Silentium(静寂よ)』は音を奪う。視覚・聴覚を奪えば、気配察知はかなり難しくなる」
そこまでしてもガラハドレベルだと無力化には程遠いけどね。
「で『Flamma(炎よ)』で動きを制限してからの『Thorn(穿て)』の乱れ打ち、最後は……『Aqua(水よ)』だっけ?」
「『Aqua(水よ)』ではなく『Aquae(水よ)』だ。『Aqua(水よ)』の複数生成版だ。違いは同時生成できること、より細かいコントロールができること、あと『Aqua(水よ)』と違って魔力が切れると水が空気に溶けてしまうため、飲水にはならない点が違う」
「で、水で顔を覆って窒息させて……?」
「さらに木刀でぶん殴った……と?」
「鬼じゃないの!」
「そう言われてもな……」
上位者との戦い方をレクチャーするつもりが、なぜか皆から人の道についてレクチャーを受けることになってしまった。
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