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四章「帰還」
#17
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「うへぇ、ポータルを潜る感覚……慣れる気がしねぇ……」
「酔いそう……」
ポータル取り扱い資格を持つオレが始めにポータルを潜ったあと、すぐにケンゴとコータが転送されてきた。
そしてすぐにアリサとカナも転送されてくる。
「うぅ、気持ち悪い……」
「そう? あたしはそんなに感じないけど……」
どうやらカナを除く三人は、ポータルを潜る感覚が苦手らしい。
この世界に来てすぐ、ポータルに初めて潜ったときはカインに置いていかれないように必死だったから、それどころではなかったのだろう。
「大丈夫、すぐ慣れるよ」
「本当かなぁ……」
実際、ポータルなんてただのエレベーターみたいなもんだし。
「それにしても、思ったよりあっさりと通してくれるもんなのね」
アリサが周りを見回して言う。
「まぁ、ギルドからの依頼書とギルド章の会員番号を照らし合わせるだけだからね」
――最果てのダンジョン。
世界最大級・最古のダンジョンの一つだ。
専門的には「第一次ダンジョン戦争世代」ということになる、つまり神話時代の代物だ。
「では、予定通りで行くぞ。目的地までのマッピング済みの区画はカナがナビゲート。戦闘はオレとアリサに任せろ。コータはカナの後ろで索敵。殿はダイチ。この階層には罠はないらしいけど、もし気づくことがあれば指摘してくれ」
「わかった」
「まかせて」
「頑張るよ」
「大丈夫」
リーダーからの指示に、全員がうなづく。
「それじゃ、よーい……」
「「「「ドン!」」」」
一斉に走り出す、冒険者パーティ『秘密基地』。
事前情報として、この階層にはモンスターがほとんど出現しないことがわかっている。主な敵はコウモリと蜘蛛。群れる習性のあるコウモリはともかく、蜘蛛は一度に一匹しか出現しない。
ならば、ということで、ケンゴは探索のスタート地点までダッシュで駆け抜けることを提案してきた。
(面白い!)
前世ではあり得なかった発想だ。
そももそもはぐれ階層に潜るようなことがほとんどなかったとはいえ、一気に走り抜けるなんて、当時は考えもしなかったろう。
生まれた時にはダンジョンが身近にあって当たり前のこの世界の人間にとって、ダンジョン探索はゆっくり慎重に行うのが常識で、それについて疑問に感じることもなかった。
「はぐれ階層ってのは、道が変化することも、罠の位置が変わることもないんだろ? なら、雑魚は無視して目的地まで突っ走っちゃえばいいんじゃね?」
とケンゴが言い出した時には、はじめ「こいつやっぱりバカなんじゃないか」と思ったけど、考えてみればデメリットがほとんどない。
ダンジョンというものが身近に存在せず、ゲーム感覚で捉える日本の現代っ子らしい発想だ。
そういえば元の世界でも、山を全速力で駆け下りるのが流行っているってテレビでやっていたけど、登山が好きなお父さんが「その発想はなかった」と驚いていたっけ。
「右ッ! そのまま真っ直ぐ!」
カナちゃんの指示で、全員がダンジョンを駆け抜ける。
「十字路左ッ!」
カナちゃんの頭には、すでに目的区域までのマップが叩き込まれている。
全員が迷いなくカナちゃんの指示に従う。もちろん全力疾走。位階が上がったぼくたちにとって、走る程度の運動は大して負担にはならない(ただしダンジョン内限定だけど)。
ダンジョンに潜る前ならあり得ない速度で、それこそオリンピックにでも出ればメダルを総なめできそうな速度で僕たちは駆け続ける。
コウモリがそこらじゅうに飛んでいるが、ほとんどは無視して置き去りだ。たまに視界の邪魔になりそうになると、ケンゴかアリサが剣で跳ね除けている。
「蜘蛛ッ!!」
「「おうッ!!」」
コータの索敵に、ケンゴとカナが踊り上がる。
「アリサッ!」
「任せてッ!」
スパパ、と蜘蛛はアリサの剣にあっさり斬り伏せられる。
ケンゴはアリサの邪魔にならないようにコウモリを一瞬で魔石に変える。
そのまま後ろも見ずに駆け抜ける二人。その後ろにコロコロと魔石が転がるが、そこは殿のぼくが回収して回る。
(なんだこれ……想像以上に凄いな!)
指示系統を後衛に任せたことで、チームとしての練度が跳ね上がっている。
駆け、跳ねて、曲がり角になれば壁を走り、縦横無尽にモンスターを切り捨てながら、少年たちはダンジョンを駆け抜ける。
この身軽さは、体重の軽い子どもだからというのもあるだろうが、それ以上に集中力と練度が高い。
それはまるで、前世のパーティメンバーたちを見るようで。
「到ちゃーーーく!」
ケンゴの明るい声にハッとして、意識が現世に引き戻される。
「ここまで何分?」
「時計ないんだからわかんないでしょ」
「こういうとき、ちょっと不便だよね」
いや、タイムアタックか。
「さて、ここからはまだマッピングされてない領域だ。カナ、ダイチ、マッピング頼むぜ」
「了解」
「ダイチくん、マッピングの方法教えてね」
「お任せください!」
「……ダイチ、口調が……」
うるさいな。
「酔いそう……」
ポータル取り扱い資格を持つオレが始めにポータルを潜ったあと、すぐにケンゴとコータが転送されてきた。
そしてすぐにアリサとカナも転送されてくる。
「うぅ、気持ち悪い……」
「そう? あたしはそんなに感じないけど……」
どうやらカナを除く三人は、ポータルを潜る感覚が苦手らしい。
この世界に来てすぐ、ポータルに初めて潜ったときはカインに置いていかれないように必死だったから、それどころではなかったのだろう。
「大丈夫、すぐ慣れるよ」
「本当かなぁ……」
実際、ポータルなんてただのエレベーターみたいなもんだし。
「それにしても、思ったよりあっさりと通してくれるもんなのね」
アリサが周りを見回して言う。
「まぁ、ギルドからの依頼書とギルド章の会員番号を照らし合わせるだけだからね」
――最果てのダンジョン。
世界最大級・最古のダンジョンの一つだ。
専門的には「第一次ダンジョン戦争世代」ということになる、つまり神話時代の代物だ。
「では、予定通りで行くぞ。目的地までのマッピング済みの区画はカナがナビゲート。戦闘はオレとアリサに任せろ。コータはカナの後ろで索敵。殿はダイチ。この階層には罠はないらしいけど、もし気づくことがあれば指摘してくれ」
「わかった」
「まかせて」
「頑張るよ」
「大丈夫」
リーダーからの指示に、全員がうなづく。
「それじゃ、よーい……」
「「「「ドン!」」」」
一斉に走り出す、冒険者パーティ『秘密基地』。
事前情報として、この階層にはモンスターがほとんど出現しないことがわかっている。主な敵はコウモリと蜘蛛。群れる習性のあるコウモリはともかく、蜘蛛は一度に一匹しか出現しない。
ならば、ということで、ケンゴは探索のスタート地点までダッシュで駆け抜けることを提案してきた。
(面白い!)
前世ではあり得なかった発想だ。
そももそもはぐれ階層に潜るようなことがほとんどなかったとはいえ、一気に走り抜けるなんて、当時は考えもしなかったろう。
生まれた時にはダンジョンが身近にあって当たり前のこの世界の人間にとって、ダンジョン探索はゆっくり慎重に行うのが常識で、それについて疑問に感じることもなかった。
「はぐれ階層ってのは、道が変化することも、罠の位置が変わることもないんだろ? なら、雑魚は無視して目的地まで突っ走っちゃえばいいんじゃね?」
とケンゴが言い出した時には、はじめ「こいつやっぱりバカなんじゃないか」と思ったけど、考えてみればデメリットがほとんどない。
ダンジョンというものが身近に存在せず、ゲーム感覚で捉える日本の現代っ子らしい発想だ。
そういえば元の世界でも、山を全速力で駆け下りるのが流行っているってテレビでやっていたけど、登山が好きなお父さんが「その発想はなかった」と驚いていたっけ。
「右ッ! そのまま真っ直ぐ!」
カナちゃんの指示で、全員がダンジョンを駆け抜ける。
「十字路左ッ!」
カナちゃんの頭には、すでに目的区域までのマップが叩き込まれている。
全員が迷いなくカナちゃんの指示に従う。もちろん全力疾走。位階が上がったぼくたちにとって、走る程度の運動は大して負担にはならない(ただしダンジョン内限定だけど)。
ダンジョンに潜る前ならあり得ない速度で、それこそオリンピックにでも出ればメダルを総なめできそうな速度で僕たちは駆け続ける。
コウモリがそこらじゅうに飛んでいるが、ほとんどは無視して置き去りだ。たまに視界の邪魔になりそうになると、ケンゴかアリサが剣で跳ね除けている。
「蜘蛛ッ!!」
「「おうッ!!」」
コータの索敵に、ケンゴとカナが踊り上がる。
「アリサッ!」
「任せてッ!」
スパパ、と蜘蛛はアリサの剣にあっさり斬り伏せられる。
ケンゴはアリサの邪魔にならないようにコウモリを一瞬で魔石に変える。
そのまま後ろも見ずに駆け抜ける二人。その後ろにコロコロと魔石が転がるが、そこは殿のぼくが回収して回る。
(なんだこれ……想像以上に凄いな!)
指示系統を後衛に任せたことで、チームとしての練度が跳ね上がっている。
駆け、跳ねて、曲がり角になれば壁を走り、縦横無尽にモンスターを切り捨てながら、少年たちはダンジョンを駆け抜ける。
この身軽さは、体重の軽い子どもだからというのもあるだろうが、それ以上に集中力と練度が高い。
それはまるで、前世のパーティメンバーたちを見るようで。
「到ちゃーーーく!」
ケンゴの明るい声にハッとして、意識が現世に引き戻される。
「ここまで何分?」
「時計ないんだからわかんないでしょ」
「こういうとき、ちょっと不便だよね」
いや、タイムアタックか。
「さて、ここからはまだマッピングされてない領域だ。カナ、ダイチ、マッピング頼むぜ」
「了解」
「ダイチくん、マッピングの方法教えてね」
「お任せください!」
「……ダイチ、口調が……」
うるさいな。
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