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いい子の反逆
1年D組
デイウス・ルシエルという名を聞いてから明らかに挙動不審になったアナ。食事は喉を通っていないし教室に向かうだけで体が震えている。見兼ねたJBが平気平気と言いながらおんぶして、俺たちは1年D組を目指す。少人数クラスだから俺入れて11人。こんなに少ない人数で授業受けたことないからちょっとそわそわしてしまうな。
教室練じゃなくて、本館の中でも1番高い塔の5階とそれなりに高いところにある。ちょっと嫌な予感がするな。ワンチャン普通の多い人数のクラスより目立ちそうだな。
「ここが我々の教室です。えっと……アナ、大丈夫か?」
「……僕に何かあったらアナゼルの名をデイウス家に返しておいてね」
「アナ、ビーフジャーキー食え。元気が出るぞ」
「……失礼します」
なんだこの空間。アナはビーフジャーキーを最後の晩餐と言わんばかりに噛み締めている。ここまで兄を怖がるって家族としてどうなんだろう、俺従兄弟はいるけど元は普通の一人っ子だからそこらへんわからんな。
どの道アナには逃げ場がないと、スターが先陣を切って教室のドアを開ける。俺もその後ろにこそこそ隠れながら教室に入る。更に後ろには食堂のシェフにビーフジャーキーをたらふく貰ってご満悦のジョセフと、割とウキウキで入ってきたJB、その背中に顔を埋めているアナ。
教室は日本のものよりちょっと黒みがかった黒板と、少し狭い教室。2人が同時に座れそうな木製の長机、そしてやっぱり俺がジャンプしたら届くぐらいの椅子がある。あれ別にいいけど足がブラブラして落ち着かないんだよな。外は……うん、高所恐怖症の人間だったらギリギリ発狂するラインの絶景って感じだ。
「天使様がやったきたぞ!」
「うわアイツらも一緒じゃねえか」
「スタッフォードくたばれ」
既に俺たち以外の7人は既にいた。食堂でちょっと見たことあるやつから初めましてのやつまで幅広く居やがる。あとさっきとてつもない罵声が響いたけどスターはやっぱり余裕そうだ。もう負け犬の遠吠えレベルのなにかだと思っている顔だ。
あとよかったなアナ。まだ先生は来てないみたいだぞ、少しは延命できたというやつだ。なんだか俺もこの短期間でアナを揶揄うのに慣れてきた様な気がする。
あと個人的な不満だけど天使様って呼ばれるのはまだ慣れない。スターに関してはその、昨日俺が許可出しちゃったからさ、うん。許可制にしようか。そうなるとまず俺の自己紹介からだ。
「えっと、俺は朝日奈一。呼びたけりゃ天使様でもいいけど……まだ呼ばれ慣れてないからお手柔らかにしろよ。あと、そんなにスターに睨みを効かせるな」
「て、天使様……」
食堂の外野とは違いコイツらとは暫く仲良くしないとなんだ、少なくとも俺が元の世界に帰れる目処が立つまで。毒を吐いたつもりもない、スターを庇ってのはついでだ。それでも背後で自分なんかのためにと感激してくれるのは嬉しい。
「えっと、お前らの名前は?」
俺のその言葉を待っていたのか、全員一斉に自己紹介スイッチが入った。ちょっと怖いけど慣れたら大型犬に囲まれた子猫の気分になれるんだろうなと、諦めの境地に達し始めている。
「はいはい! 俺フォユト・ブルーブック、天文学に関する魔術を研究している家系なんだ。食堂でもちょっとだけ挨拶したけど……あの時はランチキ騒ぎが過ぎたし、覚えてないだろ?」
「う、うん。悪いな」
「いやいや、俺もあの時叫んだ奴の1人だから責められない。はい! 僕たちはサル以下です!!!ってな」
初対面にしては訓練されすぎだろブルーブック。 背丈は当たり前のように180越えっぽいし金髪赤目は星っぽい雰囲気がある様に見える。ちょっと褐色なのもフィールドワークなんかが好きな証だろう。
「おいフォユト、お前1人で時間取りすぎだぞ! デイウス先生が来る前に済ませないと!」
「じゃあ俺!」
「おい割り込みすんな!」
「天使様の事もっとよく教えて下さい!」
こんなにも早く順番って概念が崩れることあるか? こんな中には190㎝以上も結構いる高身長なイケメン達に絶え間ないラブコールを送られるなんて、昨日までの俺ならなんかの地獄かよとストレスにしかならなかっただろう。しかしここまで来ると調子に乗るでも怒るでもなく逆に落ち着いてくる、逆に。
寧ろなんだこの毒舌男はと、言われないだけ元いた世界よりマシに思えてしまうのは気のせいではない。どの道コイツらが天使様に飽きるか、そうでなくても、俺がそこまで可愛い存在でも尊いと思う程の価値もないと気付きどっかに行くだろう。遠慮する道理もないし、いつでも飽きていいんだぜという意思表示にもなる。
まあ、飽きられる前に元いた世界に帰りたいなと考えてしまう、そんな寂しがりやな自分もいるけれど。
「おはよう1年D組の諸君! 先生のデイウス・ルシエルが来たぞー!」
「おいアナ! 気をしっかり持て!」
そんなふうに考えていると、ドアの開く音にすら気付かなかったようだ。息が止まるアナ、生きろと叫ぶJB、アナの存在に勘付いてしまったルシエル先生。ニヤリと笑った顔を見た時、そこまで怯えるその気持ちがちょっとだわかった。
……
…………
………………
「グスッ……だから嫌だって言ったのに……」
「もぉ、可愛い自慢の弟に対してハグしただけなのに~」
……今のはハグというより締め付けだった。俺の様なボディータッチにも仲のいい兄弟にも縁のない人間からすると確実に攻撃だったぞ。食堂から移動しても全く気の休まらない話だ。
体がミシミシすると嘆くアナを不憫に思いつつ、ジャンプして椅子に座る。誰が隣になるか喧嘩になりそうだったが、隙を見て座っていたスターの勝利。またスタッフォードくたばれと叫ぶ声がこだました。
教室練じゃなくて、本館の中でも1番高い塔の5階とそれなりに高いところにある。ちょっと嫌な予感がするな。ワンチャン普通の多い人数のクラスより目立ちそうだな。
「ここが我々の教室です。えっと……アナ、大丈夫か?」
「……僕に何かあったらアナゼルの名をデイウス家に返しておいてね」
「アナ、ビーフジャーキー食え。元気が出るぞ」
「……失礼します」
なんだこの空間。アナはビーフジャーキーを最後の晩餐と言わんばかりに噛み締めている。ここまで兄を怖がるって家族としてどうなんだろう、俺従兄弟はいるけど元は普通の一人っ子だからそこらへんわからんな。
どの道アナには逃げ場がないと、スターが先陣を切って教室のドアを開ける。俺もその後ろにこそこそ隠れながら教室に入る。更に後ろには食堂のシェフにビーフジャーキーをたらふく貰ってご満悦のジョセフと、割とウキウキで入ってきたJB、その背中に顔を埋めているアナ。
教室は日本のものよりちょっと黒みがかった黒板と、少し狭い教室。2人が同時に座れそうな木製の長机、そしてやっぱり俺がジャンプしたら届くぐらいの椅子がある。あれ別にいいけど足がブラブラして落ち着かないんだよな。外は……うん、高所恐怖症の人間だったらギリギリ発狂するラインの絶景って感じだ。
「天使様がやったきたぞ!」
「うわアイツらも一緒じゃねえか」
「スタッフォードくたばれ」
既に俺たち以外の7人は既にいた。食堂でちょっと見たことあるやつから初めましてのやつまで幅広く居やがる。あとさっきとてつもない罵声が響いたけどスターはやっぱり余裕そうだ。もう負け犬の遠吠えレベルのなにかだと思っている顔だ。
あとよかったなアナ。まだ先生は来てないみたいだぞ、少しは延命できたというやつだ。なんだか俺もこの短期間でアナを揶揄うのに慣れてきた様な気がする。
あと個人的な不満だけど天使様って呼ばれるのはまだ慣れない。スターに関してはその、昨日俺が許可出しちゃったからさ、うん。許可制にしようか。そうなるとまず俺の自己紹介からだ。
「えっと、俺は朝日奈一。呼びたけりゃ天使様でもいいけど……まだ呼ばれ慣れてないからお手柔らかにしろよ。あと、そんなにスターに睨みを効かせるな」
「て、天使様……」
食堂の外野とは違いコイツらとは暫く仲良くしないとなんだ、少なくとも俺が元の世界に帰れる目処が立つまで。毒を吐いたつもりもない、スターを庇ってのはついでだ。それでも背後で自分なんかのためにと感激してくれるのは嬉しい。
「えっと、お前らの名前は?」
俺のその言葉を待っていたのか、全員一斉に自己紹介スイッチが入った。ちょっと怖いけど慣れたら大型犬に囲まれた子猫の気分になれるんだろうなと、諦めの境地に達し始めている。
「はいはい! 俺フォユト・ブルーブック、天文学に関する魔術を研究している家系なんだ。食堂でもちょっとだけ挨拶したけど……あの時はランチキ騒ぎが過ぎたし、覚えてないだろ?」
「う、うん。悪いな」
「いやいや、俺もあの時叫んだ奴の1人だから責められない。はい! 僕たちはサル以下です!!!ってな」
初対面にしては訓練されすぎだろブルーブック。 背丈は当たり前のように180越えっぽいし金髪赤目は星っぽい雰囲気がある様に見える。ちょっと褐色なのもフィールドワークなんかが好きな証だろう。
「おいフォユト、お前1人で時間取りすぎだぞ! デイウス先生が来る前に済ませないと!」
「じゃあ俺!」
「おい割り込みすんな!」
「天使様の事もっとよく教えて下さい!」
こんなにも早く順番って概念が崩れることあるか? こんな中には190㎝以上も結構いる高身長なイケメン達に絶え間ないラブコールを送られるなんて、昨日までの俺ならなんかの地獄かよとストレスにしかならなかっただろう。しかしここまで来ると調子に乗るでも怒るでもなく逆に落ち着いてくる、逆に。
寧ろなんだこの毒舌男はと、言われないだけ元いた世界よりマシに思えてしまうのは気のせいではない。どの道コイツらが天使様に飽きるか、そうでなくても、俺がそこまで可愛い存在でも尊いと思う程の価値もないと気付きどっかに行くだろう。遠慮する道理もないし、いつでも飽きていいんだぜという意思表示にもなる。
まあ、飽きられる前に元いた世界に帰りたいなと考えてしまう、そんな寂しがりやな自分もいるけれど。
「おはよう1年D組の諸君! 先生のデイウス・ルシエルが来たぞー!」
「おいアナ! 気をしっかり持て!」
そんなふうに考えていると、ドアの開く音にすら気付かなかったようだ。息が止まるアナ、生きろと叫ぶJB、アナの存在に勘付いてしまったルシエル先生。ニヤリと笑った顔を見た時、そこまで怯えるその気持ちがちょっとだわかった。
……
…………
………………
「グスッ……だから嫌だって言ったのに……」
「もぉ、可愛い自慢の弟に対してハグしただけなのに~」
……今のはハグというより締め付けだった。俺の様なボディータッチにも仲のいい兄弟にも縁のない人間からすると確実に攻撃だったぞ。食堂から移動しても全く気の休まらない話だ。
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