小柄コンプを拗らせていた俺、魔術学校ものの異世界に飛ばされた挙句デカ男達から天使扱いされる

荒瀬竜巻

文字の大きさ
67 / 71
いつかは辿り着く

希望の鎖

なるべくニヤニヤしている顔を悟られないように振り返ることなく早歩きでオカルトコーナーへ向かう。自分は随分と図太くなったものだ。まあいくら顔がいいとはいえ、あんな童貞ムーブをかますやつは俺の敵じゃない。顔がいいどころかぶっちゃけよくみると俺好みの顔だなと思うけどそれでも余裕だ。

それはそれとして本当に悪女みたいなことしてしまった自分に少しだけ危機感は抱いている。もっとセクシーなお姉さんがやらねえとこういうの映えないよな。そういう問題じゃない? うるせえ虎杖を大人しくさせつつ俺の想いを伝える方法があれしか思い浮かばなかったんだ。

「……ん? ここ光ってね?」

オカルトコーナーの隅にある俺があの魔導書を初めて手に取ったその隙間から光が漏れている。それはこの禍々しい文字が刻まれまくった空間の中ではかえって目立ちすぎる。

学園長達曰く、この場所に何かあるとは言っていたがそれってこれのことだろうか? どれどれと手を伸ばし光源を探る。手に硬い感触を感じた。金属のようで、持つとジャリジャリと音がなる。鎖を掴んで引っ張ろうとするが、なかなか重い。

「これは……」

思わず引っ張り上げたそれに見覚えがあった。JBからもらっておいて使い道がわからなかったそれ。願いが形になったものとかいうあまりにも伝わりづらい説明と共に渡されたそれ。

赤い首輪と繋がった鎖が図書室の床に擦れる。

…………………………

「て、天使様とはつながらないのか!?」

「うーん。どうやらスマホを紛失してしまわれたようですね」

「あのスターにそっくりな男の子にまた奪われちゃったのかなぁ」

「それか揉み合いになった拍子に無くしたとかな」

天使様と連絡が取れなくなった直後、自分たちは慌てふためくことしかできなかった。扉を開けた時に僕とそっくりな彼の声が聞こえたと思ったら、スマホの視点がブラックアウトしてこちらからは全く干渉できなくなってしまった。……そういえば彼声すらも僕と同じなんだな。気持ち悪いとまではいかない。けれど何故天使様のおられる天界に僕と瓜二つの人間が? という疑問があったことは間違いなかった。

「むー……兄貴、どんな感じ?」

「全然ダメだ。スマホが使えなくなった今新しい媒介が必要だ。もっとも今はあの目が確実におかしくなっていたスタッフォードくんのそっくりさんに酷いことされてないかを心配する必要がありそうだが」

「怖いこと言わないでください」

「怖いのはギャリックだと思うぞ……」

「そっくりさんと同じレベルでやべえよ瞳孔開いてるって」

あんな凶悪な雰囲気の彼と一緒にされる僕が異常なのか、なにか天使様に乱暴なことをした映像を残したわけじゃないのに僕と同じぐらい危険視される彼が異常なのか。個人的には後者だと願いたい。

……いいや違うな。時間は既に夜すら超えて朝の10時。授業にすらいかず付きっきりで天使様を助けようと奮闘するが、全員眠気を始めとした疲れが見え始めている。その中でこんなふうに1人だけから回っていたら確かにそいつは怖いと思われてしまうかもしれない。

「__ねえねえ、急に話変えるね。……なんか廊下の方から音がしない? ジャラジャラっていうかさ、金属が這ってる音?」

アナに言われて耳を覚ます。確かにジャラジャラという音に加えて何か引きずる音も聞こえた。音はこちらに近づいてくる。こんな緊急事態のタイミングにいきなり流れる異音に全員が警戒体制をとる。少しずつ距離が近くなる、それなのに足音が一切しないのがまた不気味だ。



そして遂にその正体が僕たちの前に現れる。ガチャリと器用にドアを開けるそれは人どころか生き物ですらなかった。

「な、なにあれ……」

「確か、ハジメの首輪だよな? JBがあげてたやつ」

「あーやっぱアレ動くんだ」

アナの言った通りだった。異音の正体は赤く光りジャラジャラと音をたてる鎖と、それに繋がれた首輪だった。犬はもちろん人も何も繋がっていない。手綱は誰にも握られていない。蛇のようにクネクネと動きながら前進し、ドアを器用に開けるその姿。

「こ、怖いんだけど!? あれ無人で動いてるし!」

「JBお前動くの知らんかったんか」

「知らねえよ! むしろジョセフはなんでそんなに冷静なんだよ!?」

「見たことあるし」

「あるんかい!」

赤い首輪は警戒する僕にも漫才をするJBとジョセフにも目もくれない。真っ直ぐにホワイト先生の方へ向かっていた。それは無機物であるはずなのに、確かな意思を感じる足取りだった。足ないけど。

「へえ……この首輪は素晴らしい。魔法製であるはずなのに天使様の力を感じる一品だ。ノー……いや、ドルレアックだったな。これ作ったのきみか?」

「……はい。俺っすよ」

「いい魔法だ。将来大成するだろう」

先生は何食わぬ顔で首輪を手に取る。そして魔術式を超特急で書き換え始めた。

「今からこれを媒介とする。仕事してくれよ、赤い鎖……」
感想 0

あなたにおすすめの小説

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。