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said:二人の少年
「今からアディルガ神殿に行ってくる」
「え?」
一階で一人掛けのソファに座ってお茶を飲んでいた僕は、階段を下りてきたオーウェンの言葉に目を丸くした。
オーウェンは僕と同い年の十二歳で、二年前からこの塔……まわりからは魔女の塔と呼ばれてる……で一緒に暮らしてる。
「……西の……神殿に?」
僕の問いにオーウェンが「ああ」と小さく頷いた。アディルガ神殿はセリオス帝国の西側に建てられた小さな神殿だ。
「……それって、あの子の治療魔法が効いたから?」
「ああ、ヴァルアラ神に許されたのかどうか確かめたい」
あの子というのはこの塔に外からやってきた栗色の髪に深緑の瞳をした平民の少年のこと。先生曰く今滞在してる場所の近くにある小さな村の子どもらしい。
僕が初めてその子に会った三日後、今度はオーウェンの元にその子がやってきた。まさか同じ子がまた来るなんて思いもしなかった。ここにやってきたその子は体調を崩していた彼に治療魔法を使ったという。
オーウェンからその話を聞いた僕は魔力の少ない平民がもっとも魔力を消費する治癒魔法を使ったことに驚いた。平民は魔法を使わないって聞いていたから……。
でもそれ以上に僕を驚かせたのは治癒魔法がオーウェンに効いたということだ。
オーウェンに治癒魔法が効かないことは彼自身から聞いていた。治療魔法を受けると身体に激痛が走り酷い吐き気に襲われるという。
(治療魔法に対して痛みを感じるのは前世に罪を犯した証……)
その罪を償うまではヴァルアラ神の祝福を受けることは出来ない。
(……でも僕はその考えは余り好きじゃない……)
だって現世で罪を犯してる者がいるのに、彼らはヴァルアラ神の祝福を受けることが出来るのだ。そんなのおかしいってオーウェンに言ったら、オーウェンに「火あぶりにされるぞ」と眉間に皺を寄せて言われた。オーウェンは前世の罪を深く信じている。
「リアン」
名前を呼ばれ階段のほうを見るとそこに先生の姿があった。
「私とオーウェンは神殿へ行きます。帰宅は夕刻頃になるでしょう」
そう告げて先生は自身とオーウェンに変装魔法をかけた。オーウェンは茶色の髪と目をした商団の息子らしい出で立ちとなり、先生は黒色の髪と目をした付き人の男性に姿を変えた。そして姿を変えた二人の足元に魔法陣が浮かびあがる。
「あ、あの!先生!」
なぜか胸騒ぎがして思わず先生を呼ぶと先生が無言で首を緩く振った。
まるで何も言うなと……。
僕の言葉は空気となり、二人は姿を消した。
そして数刻後、僕は真っ青な顔でベッドに横たわるオーウェンと対面した。
「先生……」
オーウェンの部屋を後にした僕は立ち去ろうとする先生を呼び止めた。いつもの姿に戻っていた先生が僕のほうを振り返る。
「先生は……分かって……いたんですよね?」
オーウェンが治癒魔法で苦しむことを。
「ええ」
先生は感情のない声で肯定した。
「あの子が神殿に行くと告げたとき私は伝えたわ。行ったとしてもあなたは祝福を受けることはできないと……」
「……」
「あの子はそれを確かめるために行くのだと言ったわ。だから連れていくことにしたの。言葉で伝えるより、そのほうがずっと伝わるから……」
先生の言葉に僕は俯いてしまった。
「リアン」
名前を呼ばれ顔を上げればすぐ目の前に先生がいた。先生の手が僕の肩に触れる。
「あの子が今抱えてる苦しみは永遠ではないわ……。そして貴方の苦しみも」
僕はじっと先生を見た。
「今は生きることだけを考えなさい……」
そう言って先生は僕に背を向け上階へと姿を消した。
先生の心の声は……聞こえなかった。
「え?」
一階で一人掛けのソファに座ってお茶を飲んでいた僕は、階段を下りてきたオーウェンの言葉に目を丸くした。
オーウェンは僕と同い年の十二歳で、二年前からこの塔……まわりからは魔女の塔と呼ばれてる……で一緒に暮らしてる。
「……西の……神殿に?」
僕の問いにオーウェンが「ああ」と小さく頷いた。アディルガ神殿はセリオス帝国の西側に建てられた小さな神殿だ。
「……それって、あの子の治療魔法が効いたから?」
「ああ、ヴァルアラ神に許されたのかどうか確かめたい」
あの子というのはこの塔に外からやってきた栗色の髪に深緑の瞳をした平民の少年のこと。先生曰く今滞在してる場所の近くにある小さな村の子どもらしい。
僕が初めてその子に会った三日後、今度はオーウェンの元にその子がやってきた。まさか同じ子がまた来るなんて思いもしなかった。ここにやってきたその子は体調を崩していた彼に治療魔法を使ったという。
オーウェンからその話を聞いた僕は魔力の少ない平民がもっとも魔力を消費する治癒魔法を使ったことに驚いた。平民は魔法を使わないって聞いていたから……。
でもそれ以上に僕を驚かせたのは治癒魔法がオーウェンに効いたということだ。
オーウェンに治癒魔法が効かないことは彼自身から聞いていた。治療魔法を受けると身体に激痛が走り酷い吐き気に襲われるという。
(治療魔法に対して痛みを感じるのは前世に罪を犯した証……)
その罪を償うまではヴァルアラ神の祝福を受けることは出来ない。
(……でも僕はその考えは余り好きじゃない……)
だって現世で罪を犯してる者がいるのに、彼らはヴァルアラ神の祝福を受けることが出来るのだ。そんなのおかしいってオーウェンに言ったら、オーウェンに「火あぶりにされるぞ」と眉間に皺を寄せて言われた。オーウェンは前世の罪を深く信じている。
「リアン」
名前を呼ばれ階段のほうを見るとそこに先生の姿があった。
「私とオーウェンは神殿へ行きます。帰宅は夕刻頃になるでしょう」
そう告げて先生は自身とオーウェンに変装魔法をかけた。オーウェンは茶色の髪と目をした商団の息子らしい出で立ちとなり、先生は黒色の髪と目をした付き人の男性に姿を変えた。そして姿を変えた二人の足元に魔法陣が浮かびあがる。
「あ、あの!先生!」
なぜか胸騒ぎがして思わず先生を呼ぶと先生が無言で首を緩く振った。
まるで何も言うなと……。
僕の言葉は空気となり、二人は姿を消した。
そして数刻後、僕は真っ青な顔でベッドに横たわるオーウェンと対面した。
「先生……」
オーウェンの部屋を後にした僕は立ち去ろうとする先生を呼び止めた。いつもの姿に戻っていた先生が僕のほうを振り返る。
「先生は……分かって……いたんですよね?」
オーウェンが治癒魔法で苦しむことを。
「ええ」
先生は感情のない声で肯定した。
「あの子が神殿に行くと告げたとき私は伝えたわ。行ったとしてもあなたは祝福を受けることはできないと……」
「……」
「あの子はそれを確かめるために行くのだと言ったわ。だから連れていくことにしたの。言葉で伝えるより、そのほうがずっと伝わるから……」
先生の言葉に僕は俯いてしまった。
「リアン」
名前を呼ばれ顔を上げればすぐ目の前に先生がいた。先生の手が僕の肩に触れる。
「あの子が今抱えてる苦しみは永遠ではないわ……。そして貴方の苦しみも」
僕はじっと先生を見た。
「今は生きることだけを考えなさい……」
そう言って先生は僕に背を向け上階へと姿を消した。
先生の心の声は……聞こえなかった。
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