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大也、風牙一族と猿飛聖をぶつける

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 それは一瞬の出来事だった。

 古びたマンションから逃げ出した右肩負傷の猿飛聖と由良蟹鎌の2人の前に現れた大也が開口一番、

「犯罪忍者対策室預かりの手塚大也だっ! 佐渡から脱獄した猿飛聖、貴様を逮捕するっ! 抵抗するようなら掃討も止む無しだっ!」

 そう宣言した次の瞬間には10人以上の忍者がその包囲を囲んだのだから。

「――なっ、手塚大也? 風牙一族まで?」

 聖が仰天する中、風牙一族の連中は聖に構わず、

「手塚、死ねっ!」

 大也に攻撃を仕掛ける。

 軽々と避けながら大也が、

「風牙一族、貴様ら、どうして犯罪忍者対策室預かりのオレの邪魔をするっ? さては風牙一族は猿飛聖とグルだなっ!」

 白々しく大声で言い放った。

「ーー何の事だ? 我々は――」

「そこに居る佐渡から脱獄した猿飛聖を逃がす為に逮捕しようとしてるオレを妨害するつもりだろうがっ! そこの犯罪者が佐渡送りになったのを知らないとは言わせないぞっ!」

 大也がそう言い放ち、

「風牙、私を逃がせっ! 報酬は弾むからっ!」

 聖までが切羽詰ってそう叫び、

「猿飛聖、おまえは失せろ。オレ達はそこの手塚にーー」

 そう風牙雷我が叫ぼうとした時、『風牙流忍法風狸・伝言』で、





『何をやっとるか、雷我っ! おまえ達の会話が周囲に伝わっとるぞっ!』





 風牙小次郎の声が響き渡った。

 つまり、大也が『手塚流忍法かまいたち・言伝(最大範囲&忍者耳限定)』を使って、この場の音声を、遠方に居る不特定多数の一定の優れた聴覚を持つ者(忍者)達に聞かせていたのである。

「く~、まさか風牙一族が佐渡送りの重罪人、猿飛聖に味方するとはっ! ーー待てよ、昨晩小森の姫が狙われたの、風牙一族が裏で糸を引いていたのか? その前の犯罪者の脱獄も風牙が猿飛聖と裏で示し合わせて? だとしたら、多勢に無勢。ここは猿飛聖を諦めて逃げるしかないのか」

 ノリノリの大也が白々しく下手な推理を披露して悔しがってみせ、

「待て、こら、手塚っ! 貴様、何をふざけた事をっ!」

「自分達が潔白だというのなら 風牙一族も猿飛聖の確保、または討伐の協力をして貰うぞっ! 佐渡を脱獄したら極刑だから向こうは全力で抵抗するから気を付けろよっ!」

 大也がそう忠告した時には聖が『猿飛流忍法狒々・怪力無双(大猿バージョン)』で獣人化した。

 どう見ても300センチはある。右肩の負傷も筋肉操作で修復だ。

 1人を簡単に殴り飛ばした。

「チッ、仕方ないっ! おまえら、手塚は後回しだっ! 猿飛聖を撃破するぞっ!」

「えっ、猿飛聖って獣化を極めてるんじゃーー」

「勝てる訳ないじゃないですかっ!」

 との風牙一族の連中の言葉を聞いた大也が、

「負ける前提か。いや、負けたフリをして逃がす前提かな?」

「待て、こら手塚、おまえは喋るな。ってか、おまえも戦えよ、強いんだろうがっ!」

「敵か味方も分からないおまえらに背中なんて見せて戦えるかっ!」

 そんな事を言ってる間にどんどんと風牙一族は300センチ級の猿飛聖に倒されていくのだった。
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