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第二回・殴り込み編
諸将、憐れむ
しおりを挟む128-①
魔王城・軍議の間には、《悪魔族》や《植人族》、《人馬族》や《暴牛族》など、魔王城の周囲の各砦を守る将が召集されていた。
軍議の最中、天驚魔刃団から届いた『トポンツ砦奪還せり』の報に、軍議の間は騒然とした。
三年前、魔王シンが勇者リヴァルに討たれてからというもの、後退に後退を重ね続けていた魔王軍にとっては、久方ぶりの戦勝の報である。
「まさか……我が植人族百名の兵を派兵しても奪い返せなかったトポンツ砦を……」
「たったの九人で奪還するとは……!!」
「いや……天驚魔刃団にはあの『蒼き凶つ風』に『破城の岩石魔人』、それに『オーガ一族の若き俊英』がいるのだ、不可能ではないやもしれぬ……」
「見事なり、天驚魔刃団……!!」
軍議の間では、『至急、奪還したトポンツ砦に魔王城から守備の兵と物資を送ろう』という意見が続出したのだが……
「フン……その必要はない」
天驚魔刃団が褒め称えられるのを不満げに聞いていたキョウユウは、諸将の援兵派遣の進言を一蹴した。
「トポンツ砦の如き小さき砦……この城の守備を割いてまで守る必要など無い」
キョウユウの言葉を聞いて、各砦を守る諸将は騒ついた。
確かにキョウユウの言う通り、トポンツ砦は周囲の砦の後方支援を目的として作られた砦で、規模は小さく、防備もそれほど厚くはない。戦略的価値もそこまで高くはないだろう。
しかしながら、ここで援兵を送らないと言う事は、今後自分達が守る砦に敵が押し寄せて来た時も、先程と同じく『この城の守備を割いてまで守る必要など無い』と言い出す恐れがあると言う事だ。
不信と不安の空気を醸し出す諸将に対し、キョウユウが苛立たしげに吼えた。
「……何だテメェら!! この魔王キョウユウ様の決定に文句があるってのか、あぁ!?」
大物ぶってはいても、いざ頭に血が上ると、ヤクザかチンピラそのものの本性を晒け出すキョウユウであったが、そんなキョウユウに諸将は黙って従った。
キョウユウに異を唱えるだけの気骨と力を持つ者は、今の魔王軍にはいない……そういった者達は皆、王国軍や影魔獣と勇猛に戦い、命を落としている。
「軍議は終わりだ!! とっとと自分達の砦に戻れ!!」
まだ話し合わなければならぬ事が山ほどあると言うのに、キョウユウは椅子を荒々しく蹴飛ばし、軍議の間を出て行ってしまった。残された諸将は眉をひそめて言葉を交わした。
「やはり……あの男に魔王を名乗れるだけの器はない」
「しかし、奴の強さは本物だ……」
「各々方、今は話し合うべき事を話し合い、決めるべき事を決めて、各自の砦に戻りましょう。こうしている間にも敵が自分達の砦に迫っているやもしれませぬ故……」
「うむ……それにしても、天驚魔刃団とやらも不憫よな、キョウユウの言う通りに砦を奪還したというのに、むざむざ見殺しにされるとは……」
「我らで密かに援兵を送るか?」
「やめておけ、キョウユウに露見したら、反逆だなんだと言いがかりをつけられて面倒な事になる……それに、たった九人だ……今頃は、トポンツ砦を奪い返しにきた敵に襲われて壊滅しているだろう」
「うむ、城攻めは奇策を用いれば、あるいは少数で落とす事も出来るやもしれぬが、城の防衛となると、たった九人では難しかろうて」
諸将は影光達、天驚魔刃団に対して同情と憐れみのこもった溜め息を吐いたが、当の影光達はと言うと……
「行くぞ……遅れるなよ、猫娘!!」
「誰が猫だっ!! 私は……虎だーーーーーっ!!」
「グォァァァ---ッ!!」
「皆さん……僕の作戦通りにお願いしますよ!!」
「いいわね下僕共……敵は皆殺しよ!!」
「「「ハッ!! 我らの身命、ヨミ様の為にッッッ!!」」」
「行くぞお前ら……俺達、天驚魔刃団の強さを思い知らせろぉぉぉぉぉっ!!」
……オーガ一族が守る砦に攻撃を仕掛けていた影魔獣軍団に、元気に背後から襲いかかっていた!!
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◇
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