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はいぱーむてき大作戦編
斬られ役、確かめに行く
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254-①
影光が魔王城に搭載された超弩級穿影槍の照準を定めるおよそ三十分前……暗黒樹内の武光とリヴァルは次々と襲いくる影魔獣と戦っていた。
〔また来るぞ、武光!!〕
「なんぼほど向かって来るねんアホーーーっ!!」
三体の剣影兵が向かって来る。武光もイットー・リョーダンを左脇に構えて敵目掛けて走り出した。
先頭を走る一体目の胴をすれ違いざまに逆袈裟で両断し、返す刀で二体目を脳天から唐竹割りに斬り伏せ、剣腕を振り上げて飛びかかって来た三体目も、くるりと身を翻して、真っ向から振り下ろされた斬撃を躱すと同時に、その回転による遠心力を乗せた水平斬りで、敵の胸から上を “すん!!” と、斬り飛ばした。
〔今度は十体以上向かって来るぞ!!〕
「くっ……アカン!! 敵の数が多過ぎるわ!!」
「武光殿!! ここは退きましょう!!」
「チッ」
武光達は 逃げ出した……
何とか無事に探索拠点としている食料保管庫まで逃げて来る事が出来た二人は、安堵の溜め息を吐いた。
暗黒樹に囚われた多くの人々を救出し、脱出させる事に成功した二人だったが、未だに暗黒樹の核の破壊には至っていなかった。
「それにしても……妙だとは思いませんか、武光殿? 少し前から、核の守りがどんどん厚くなっています」
「ホンマやで……少し前までは余裕で核まで接近出来たのになぁ」
暗黒樹の核は現在、ソウザン城の最上階……領主の間に鎮座している。
成人男性が目一杯両手を広げても抱え切れないほど巨大で、禍々しい光を放つその球体は、当初は『攻撃したければ好きにしろ』と言わんばかりに無防備にその姿を晒しており、武光とリヴァルは幾度となく最上階まで上り、核への攻撃を行った。
だがしかし、巨大な岩すら容易く斬り裂くイットー・リョーダンによる斬撃も、影魔獣の群れを瞬時に消し飛ばすリヴァルの光術も暗黒樹の核には全く効かなかった。
いや、正確には攻撃が効かないというよりは、暗黒樹の核は、攻撃を受けた瞬間に傷を瞬時に修復再生してしまい、結果的に全く損傷を与えられないのだ。
そして、武光とリヴァルの必死の攻撃を嘲笑うかのように無防備な姿を晒し続けていた暗黒樹の核に、一週間ほど前から異変が起きていた。
領主の間の防備が、日を追うごとに厳重になり始めたのだ。
今や、領主の間へと続く階段や通路には夥しい数の影魔獣が犇き、そのあまりの防備の厚さに、武光とリヴァルはここ五日ほど、核のある領主の間まで辿り着けずにいた。
「何でいきなり防御をガッチガチにし始めたんや……」
〔ハッ……まさかとは思うけど、前回攻撃を仕掛けた時のアレのせいか!?〕
「心当たりあるんか、イットー!?」
イットーは答えた。
〔暗黒樹の核に攻撃を仕掛けた時に君、暗黒樹の核に……至近距離で屁を浴びせただろう?〕
「おう、あまりにも攻撃が効かなさ過ぎて腹立ってきたから、領主の間から逃げ出す直前に置き土産をな…………………………いやいやいや!! んなアホな!?」
〔いいや、いくらダメージが無かったとしても、毎回来る度に屁なんて浴びせ掛けられたら暗黒樹の核もブチギレるに違いない、もし僕が暗黒樹の核だったら、君を寄せ付けないように防御を厳重にしまくるね!!〕
「えぇ……お、俺のせいかーーー!?」
実際の所、暗黒樹の核が防御を厳重にし始めたのは、フリード達の奮戦によって、暗黒樹の核に生命エネルギーを送り続けていた各地の楔が片っ端から破壊され、再生能力を封じられた事が原因なのだが……それを知る由も無い武光達が、見当違いのすっとこ推理をしていたその時、リヴァルは微かな異変を感じた。
「武光殿、今、地面が少し揺れませんでしたか?」
「えっ……そうかな……あっ、揺れた!?」
武光は首を傾げた。地震だろうか……だが、それにしては妙だ。振動の間隔が一定過ぎる。それに、振動が徐々に大きくなっている。
「まさか……巨大な何かが向かって来とんのか!?」
耳を澄まして次の振動を待つ。そして、次の振動が来た。直後、パラパラと城の部材が剥がれ落ちるような音がした。最初に音が聞こえた方向、それ即ち振動の発信源に近い方向という事だ。
「行こう、ヴァっさん!!」
「ええ、武光殿!!」
武光とリヴァルは、最初に音のした方向へ向かって駆け出した。
影光が魔王城に搭載された超弩級穿影槍の照準を定めるおよそ三十分前……暗黒樹内の武光とリヴァルは次々と襲いくる影魔獣と戦っていた。
〔また来るぞ、武光!!〕
「なんぼほど向かって来るねんアホーーーっ!!」
三体の剣影兵が向かって来る。武光もイットー・リョーダンを左脇に構えて敵目掛けて走り出した。
先頭を走る一体目の胴をすれ違いざまに逆袈裟で両断し、返す刀で二体目を脳天から唐竹割りに斬り伏せ、剣腕を振り上げて飛びかかって来た三体目も、くるりと身を翻して、真っ向から振り下ろされた斬撃を躱すと同時に、その回転による遠心力を乗せた水平斬りで、敵の胸から上を “すん!!” と、斬り飛ばした。
〔今度は十体以上向かって来るぞ!!〕
「くっ……アカン!! 敵の数が多過ぎるわ!!」
「武光殿!! ここは退きましょう!!」
「チッ」
武光達は 逃げ出した……
何とか無事に探索拠点としている食料保管庫まで逃げて来る事が出来た二人は、安堵の溜め息を吐いた。
暗黒樹に囚われた多くの人々を救出し、脱出させる事に成功した二人だったが、未だに暗黒樹の核の破壊には至っていなかった。
「それにしても……妙だとは思いませんか、武光殿? 少し前から、核の守りがどんどん厚くなっています」
「ホンマやで……少し前までは余裕で核まで接近出来たのになぁ」
暗黒樹の核は現在、ソウザン城の最上階……領主の間に鎮座している。
成人男性が目一杯両手を広げても抱え切れないほど巨大で、禍々しい光を放つその球体は、当初は『攻撃したければ好きにしろ』と言わんばかりに無防備にその姿を晒しており、武光とリヴァルは幾度となく最上階まで上り、核への攻撃を行った。
だがしかし、巨大な岩すら容易く斬り裂くイットー・リョーダンによる斬撃も、影魔獣の群れを瞬時に消し飛ばすリヴァルの光術も暗黒樹の核には全く効かなかった。
いや、正確には攻撃が効かないというよりは、暗黒樹の核は、攻撃を受けた瞬間に傷を瞬時に修復再生してしまい、結果的に全く損傷を与えられないのだ。
そして、武光とリヴァルの必死の攻撃を嘲笑うかのように無防備な姿を晒し続けていた暗黒樹の核に、一週間ほど前から異変が起きていた。
領主の間の防備が、日を追うごとに厳重になり始めたのだ。
今や、領主の間へと続く階段や通路には夥しい数の影魔獣が犇き、そのあまりの防備の厚さに、武光とリヴァルはここ五日ほど、核のある領主の間まで辿り着けずにいた。
「何でいきなり防御をガッチガチにし始めたんや……」
〔ハッ……まさかとは思うけど、前回攻撃を仕掛けた時のアレのせいか!?〕
「心当たりあるんか、イットー!?」
イットーは答えた。
〔暗黒樹の核に攻撃を仕掛けた時に君、暗黒樹の核に……至近距離で屁を浴びせただろう?〕
「おう、あまりにも攻撃が効かなさ過ぎて腹立ってきたから、領主の間から逃げ出す直前に置き土産をな…………………………いやいやいや!! んなアホな!?」
〔いいや、いくらダメージが無かったとしても、毎回来る度に屁なんて浴びせ掛けられたら暗黒樹の核もブチギレるに違いない、もし僕が暗黒樹の核だったら、君を寄せ付けないように防御を厳重にしまくるね!!〕
「えぇ……お、俺のせいかーーー!?」
実際の所、暗黒樹の核が防御を厳重にし始めたのは、フリード達の奮戦によって、暗黒樹の核に生命エネルギーを送り続けていた各地の楔が片っ端から破壊され、再生能力を封じられた事が原因なのだが……それを知る由も無い武光達が、見当違いのすっとこ推理をしていたその時、リヴァルは微かな異変を感じた。
「武光殿、今、地面が少し揺れませんでしたか?」
「えっ……そうかな……あっ、揺れた!?」
武光は首を傾げた。地震だろうか……だが、それにしては妙だ。振動の間隔が一定過ぎる。それに、振動が徐々に大きくなっている。
「まさか……巨大な何かが向かって来とんのか!?」
耳を澄まして次の振動を待つ。そして、次の振動が来た。直後、パラパラと城の部材が剥がれ落ちるような音がした。最初に音が聞こえた方向、それ即ち振動の発信源に近い方向という事だ。
「行こう、ヴァっさん!!」
「ええ、武光殿!!」
武光とリヴァルは、最初に音のした方向へ向かって駆け出した。
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