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第一章 破壊神復活
第9話『玉座の簒奪者と、破壊神の激昂』
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ドガァァァン!!
遺跡の通路を塞ぐ分厚い石壁が、粉々に砕け散った。
砂煙の中から、マークが気だるげに歩いてくる。
彼は服についた埃を払いながら、忌々しそうに舌打ちをした。
「……チッ。どこの性格の悪い天才が設計したんだ?
ただの通路に落とし穴、毒矢、圧縮プレスの三段構えとか、陰湿すぎるだろ」
マークは、かつて自分が設計した防衛システムに文句を垂れていた。
魔力があれば浮遊魔法や結界で無視できる罠ばかりだが、今の「ガス欠」状態の彼には、物理的に破壊して進むしか手段がない。
6000年前の自分の完璧主義が、今の自分を苦しめている皮肉な状況だ。
「まあいい。そろそろ最深部だ」
マークが足を止め、後ろを振り返る。
静かだ。
あれだけ騒がしかったゴーレムの足音も聞こえない。
「……おい、リシア。いつまでそこで伸びてんだ」
マークが視線を向けた先。
崩れた壁の瓦礫の上に、ボロ雑巾のようになった銀髪の少女が倒れ込んでいた。
「はぁ……はぁ……! ぜ、全部……撒いてきましたよ……!」
リシアだった。
聖職者のローブはあちこちが破れ、砂まみれ。
整っていた髪はボサボサで、顔も煤で汚れている。
数百体のゴーレムを引き連れて砂漠を走り回った結果、彼女は文字通り満身創痍だった。
「遅ぇぞ。散歩にしては随分と時間がかかったな」
「誰のせいだと……!」
リシアは抗議しようとしたが、喉が渇きすぎて声が出ない。
マークはそんなリシアを見て、ふん、と鼻を鳴らした。
「だが、まあ……役には立ったようだ」
マークは腰のポーチから水筒を取り出し、リシアの方へ放り投げた。
「飲んどけ。ここからが本番だ」
「あ、ありがとうございます……」
リシアは水筒を受け取り、貪るように水を飲んだ。
冷たい水が体に染み渡る。
この男は、極限までこき使うくせに、死なない程度にはケアをしてくるから質が悪い。
リシアはフラフラと立ち上がり、マークの隣に並んだ。
「……それで、この奥なんですよね? マーク様の力が封印されている場所は」
「あぁ。俺の愛用品、『破壊の指輪』が安置されているはずだ」
マークは目の前の巨大な扉を見上げた。
黄金の装飾が施された、王の間への入り口。
「その指輪があれば、俺の腕力は全盛期に近づく。
そうなりゃ、あんなゴーレムども、デコピンの風圧だけで全滅だ」
「物理で解決する気満々ですね……」
リシアは呆れたが、今のマークにはそれが必要なのだろう。
マークは無造作に扉に手をかけ、強引に押し開いた。
ギギギギギ……ッ!
重厚な金属音が響き、数千年閉ざされていた空間が開かれる。
中は広大なドーム状の空間だった。
壁一面に敷き詰められた財宝が怪しく輝き、その中央に、巨大な玉座が鎮座している。
そして、その玉座には先客がいた。
「…………」
「…………」
マークとリシアは足を止めた。
玉座に座っていたのは、通常のゴーレムの二倍……いや、三倍はある巨体を持った、黒い岩の怪物だった。
将軍級ゴーレム。
遺跡の司令塔であり、最強の番人。
だが、問題はその大きさではない。
その将軍ゴーレムの右腕。
岩でできた無骨な指に、不釣り合いなほど美しく輝く「黄金の指輪」が嵌められていたのだ。
「……あ」
リシアが声を漏らす。
指輪から溢れ出る赤いオーラが、ゴーレムの全身を包み込み、筋肉のように隆起させている。
ただでさえ強固な岩の身体が、指輪の力で極限まで強化されているのだ。
「ゴ……ゴゴ……」
将軍ゴーレムがゆっくりと立ち上がった。
その動作だけで空気が震え、床石が粉々に砕ける。
圧倒的な質量と、暴力的な力の奔流。
『創造主……』
低い、岩が擦れるような声が響いた。
自我を持っている。
6000年の間、指輪の力を独占し続けた結果、ただの人形が意思を持つに至ったのだ。
『弱イ……オ前ハ……弱イ……』
ゴーレムの単眼が、嘲笑うように細められた。
『力、ナキ者ハ……主ニ非ズ……。
今コソ……我ガ……最強ノ……神……』
ゴーレムは己の力を誇示するように、指輪の嵌った右腕を掲げ、拳を握りしめた。
その一撃は、今のガス欠状態のマークですら即死しかねない威力を秘めている。
リシアは恐怖に後ずさりした。
自分の被造物に、力を奪われ、見下される創造主。
これはあまりに絶望的な状況――
「……ハッ」
乾いた笑い声が、静寂を裂いた。
リシアが驚いて隣を見ると、マークが笑っていた。
いや、顔は笑っているが、その深紅の瞳は、絶対零度のように冷え切っていた。
その全身から、ゆらりと黒い殺気が立ち上る。
「……おい、リシア。下がってろ」
静かな声だった。
だが、それは噴火寸前の火山のような不気味さを孕んでいた。
「泥人形風情が、破壊の指輪を付けて強者にでもなったと誤解してやがる?」
マークが一歩、前に踏み出す。
「俺様に喧嘩を売ろうなんざ、1億年早ぇー!
万死に値するぞ、ガラクタ。
その指輪ごと、粉々に砕いてやる
格の違いってやつを魅せてやろうじゃねーか」
カマエルと対峙した時のような余裕はない。
あるのは、自分の道具に手を付けられたことへの、純粋な激怒のみ。
破壊神の激昂と共に、遺跡最深部での決戦が始まろうとしていた。
遺跡の通路を塞ぐ分厚い石壁が、粉々に砕け散った。
砂煙の中から、マークが気だるげに歩いてくる。
彼は服についた埃を払いながら、忌々しそうに舌打ちをした。
「……チッ。どこの性格の悪い天才が設計したんだ?
ただの通路に落とし穴、毒矢、圧縮プレスの三段構えとか、陰湿すぎるだろ」
マークは、かつて自分が設計した防衛システムに文句を垂れていた。
魔力があれば浮遊魔法や結界で無視できる罠ばかりだが、今の「ガス欠」状態の彼には、物理的に破壊して進むしか手段がない。
6000年前の自分の完璧主義が、今の自分を苦しめている皮肉な状況だ。
「まあいい。そろそろ最深部だ」
マークが足を止め、後ろを振り返る。
静かだ。
あれだけ騒がしかったゴーレムの足音も聞こえない。
「……おい、リシア。いつまでそこで伸びてんだ」
マークが視線を向けた先。
崩れた壁の瓦礫の上に、ボロ雑巾のようになった銀髪の少女が倒れ込んでいた。
「はぁ……はぁ……! ぜ、全部……撒いてきましたよ……!」
リシアだった。
聖職者のローブはあちこちが破れ、砂まみれ。
整っていた髪はボサボサで、顔も煤で汚れている。
数百体のゴーレムを引き連れて砂漠を走り回った結果、彼女は文字通り満身創痍だった。
「遅ぇぞ。散歩にしては随分と時間がかかったな」
「誰のせいだと……!」
リシアは抗議しようとしたが、喉が渇きすぎて声が出ない。
マークはそんなリシアを見て、ふん、と鼻を鳴らした。
「だが、まあ……役には立ったようだ」
マークは腰のポーチから水筒を取り出し、リシアの方へ放り投げた。
「飲んどけ。ここからが本番だ」
「あ、ありがとうございます……」
リシアは水筒を受け取り、貪るように水を飲んだ。
冷たい水が体に染み渡る。
この男は、極限までこき使うくせに、死なない程度にはケアをしてくるから質が悪い。
リシアはフラフラと立ち上がり、マークの隣に並んだ。
「……それで、この奥なんですよね? マーク様の力が封印されている場所は」
「あぁ。俺の愛用品、『破壊の指輪』が安置されているはずだ」
マークは目の前の巨大な扉を見上げた。
黄金の装飾が施された、王の間への入り口。
「その指輪があれば、俺の腕力は全盛期に近づく。
そうなりゃ、あんなゴーレムども、デコピンの風圧だけで全滅だ」
「物理で解決する気満々ですね……」
リシアは呆れたが、今のマークにはそれが必要なのだろう。
マークは無造作に扉に手をかけ、強引に押し開いた。
ギギギギギ……ッ!
重厚な金属音が響き、数千年閉ざされていた空間が開かれる。
中は広大なドーム状の空間だった。
壁一面に敷き詰められた財宝が怪しく輝き、その中央に、巨大な玉座が鎮座している。
そして、その玉座には先客がいた。
「…………」
「…………」
マークとリシアは足を止めた。
玉座に座っていたのは、通常のゴーレムの二倍……いや、三倍はある巨体を持った、黒い岩の怪物だった。
将軍級ゴーレム。
遺跡の司令塔であり、最強の番人。
だが、問題はその大きさではない。
その将軍ゴーレムの右腕。
岩でできた無骨な指に、不釣り合いなほど美しく輝く「黄金の指輪」が嵌められていたのだ。
「……あ」
リシアが声を漏らす。
指輪から溢れ出る赤いオーラが、ゴーレムの全身を包み込み、筋肉のように隆起させている。
ただでさえ強固な岩の身体が、指輪の力で極限まで強化されているのだ。
「ゴ……ゴゴ……」
将軍ゴーレムがゆっくりと立ち上がった。
その動作だけで空気が震え、床石が粉々に砕ける。
圧倒的な質量と、暴力的な力の奔流。
『創造主……』
低い、岩が擦れるような声が響いた。
自我を持っている。
6000年の間、指輪の力を独占し続けた結果、ただの人形が意思を持つに至ったのだ。
『弱イ……オ前ハ……弱イ……』
ゴーレムの単眼が、嘲笑うように細められた。
『力、ナキ者ハ……主ニ非ズ……。
今コソ……我ガ……最強ノ……神……』
ゴーレムは己の力を誇示するように、指輪の嵌った右腕を掲げ、拳を握りしめた。
その一撃は、今のガス欠状態のマークですら即死しかねない威力を秘めている。
リシアは恐怖に後ずさりした。
自分の被造物に、力を奪われ、見下される創造主。
これはあまりに絶望的な状況――
「……ハッ」
乾いた笑い声が、静寂を裂いた。
リシアが驚いて隣を見ると、マークが笑っていた。
いや、顔は笑っているが、その深紅の瞳は、絶対零度のように冷え切っていた。
その全身から、ゆらりと黒い殺気が立ち上る。
「……おい、リシア。下がってろ」
静かな声だった。
だが、それは噴火寸前の火山のような不気味さを孕んでいた。
「泥人形風情が、破壊の指輪を付けて強者にでもなったと誤解してやがる?」
マークが一歩、前に踏み出す。
「俺様に喧嘩を売ろうなんざ、1億年早ぇー!
万死に値するぞ、ガラクタ。
その指輪ごと、粉々に砕いてやる
格の違いってやつを魅せてやろうじゃねーか」
カマエルと対峙した時のような余裕はない。
あるのは、自分の道具に手を付けられたことへの、純粋な激怒のみ。
破壊神の激昂と共に、遺跡最深部での決戦が始まろうとしていた。
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