スーパーおてんばプロレスの女神たち ~やさぐれ女社長☆プロフェッショナルへの未知(みち)に挑むの巻~

ちひろ

文字の大きさ
1 / 5

プレジデント日奈子の大暴走

しおりを挟む
 「おてんば企画 vs(バーサス) おてんば女子大学。本当に強いのはどっちだ!? おてんば市のプロレス大戦争、勃発」というアナウンスが流れると、割れんばかりの大歓声が巻き起こった。
 会場はニューおてんば温泉の宴会場。それこそ三百人も入ればキャパオーバーになるような超ローカルな会場でしかなかったが、SNSによる情報の波が渦巻いて、今や女子プロレスごっこ(あくまでも“ごっこ”である)の聖地ともいうべき、名スポットに生まれ変わっていた。何の変哲もない昔ながらの日帰り温浴施設の宴会場が、日本中、ややもすると世界中のプロレスファンに注目されるようになっていたのだ。
 この日のメインイベントは、ジャッキー美央 vs 稲辺容子。OLプロレスラーとして急成長を遂げた美央と、女子大生プロレスの雄(いや、雌か)・容子による初の一騎打ちである。
 おてんば企画でグラフィックデザイナーとして働いている美央は、当年とって二十ン歳。残業疲れの身体に鞭打って、デザイナーとプロレスラーという二足のわらじを履いていた。もっといえば、美央は大の酒好き。デザイナーとプロレスラーのほかに、ドリンカー(しかも超の字がつくほどのスーパードリンカー)という三つの顔を併せ持っていたのである。
 一方の容子は、おてんば女子大学の四年生。おてんばプロレスのエースというプライドから、決して負けるわけにいないという想いで、リングならぬマットレスを重ねただけの四角いジャングルに立っていた。容子自身、卒業後は小学校の教壇に立つことになっているが、教職についてからもプロレスだけは続けるつもりでいた。しかしながら、子どもたちや保護者の手前、卒業後は謎のマスクウーマンとしての再デビューを模索するしかないだろう。マスクの力を借りられるのであれば、ちょい悪女・ヨーコに変身するのも悪くないと容子は考えていた。
 カ~~~ンという軽やかなゴングが鳴り響くと、激しいにらみ合いが始まった。強さとかわいらしさを持ち合わせた両雄ならぬ両雌。美央のセコンドでは、おてんば企画の名物社長・プレジデント日奈子が「やっちゃえ、やっちゃえ」といい、ひとりでまくしたてていた。容子のセコンドには、おてんば女子大学の盟友・ファイヤー松本がついていたが、リングネームに合わせて、その顔にはファイヤー(炎)を連想させるようなペイントが施されていた。
 手四つの体勢からキックをぶち込む美央。容子がひるんだ隙に、エルボースマッシュを決めると、容子の背後にまわり込んで、美央がスリーパーホールドを決めた。両の手を宙で泳がせながら、もがき苦しむ容子。どちらかというと、スピードが命の容子の動きを締め技で封印しようという美央の作戦であった。
 スリーパーホールドからドラゴンスリーパーへ。苦しまぎれにバタつかせた容子の右足を、たまたま美央が左手でキャッチすると、足とりドラゴンスリーパーという変形技が決まった。たまたまとはいえ、これは苦しい。
 「うぎゃ~~~っ」という苦悶の悲鳴を発する容子。百年にひとりの逸材とまでいわれた女子大生プロレスのアイコン・容子がいきなり劣勢に立たされた。
 「ギブアップ?」と問いかけながら、しきりに容子の頬を叩きならスレフェリーは、会場を提供しているニューおてんば温泉の社長である。何を隠そう、ひとり娘の浅子がおてんば女子大学・おてんばプロレスのOGという関係から、おてんばプロレスの興行には全面的に協力していた。娘の浅子はスーパーアサコというリングネームで、今や日本を代表する女子プロレス団体・ジャパンなでしこプロレスのエースとして大暴れを続けている。
 レフェリーの声に、「ノーノー」と顔を振る容子。もはや脱出不可能と思われた容子だが、そう簡単に終わらないのが容子というレスラーのすごさでもあった。
 薄れゆく意識の中で美央にパンチをくり出すと、美央の顔をもみくちゃにしながら、アイアンクローに打って出たのだ。手のひらで相手の顔を握りつける荒技中の荒技に、今度は美央が「うわ~っ」という絶叫をあげた。雷鳴のごとく響き渡る「美央」コールと「容子」コール。容子の握力が尋常ではなかったと見えて、美央はドラゴンスリーパーの手をほどくしかなかった。
 容子が息を吹き返すと、一転してリング上は空中戦の応酬となった。意表を突いたゼロ戦キックで美央を場外へぶっ放すと、まるで水のないプールへ飛び込むようにな人間ロケット砲をくり出す容子。美央が場外で崩れ落ちるのを見てとると、今度はそこへ虹を描くようなラ・ケブラーダをぶちかました。
 ‥‥セブン、エイト、ナイン。
 ‥‥フォーティーン、フィフティーン、シックスティーン。
 カウントが進むにつれ、勝利を確信したかのように、リング上で両腕をあげる容子だったが、なんとそこへ美央が舞い戻り、不意討ちのバックドロップをぶっ放したではないか。と思ったら、起きあがりこぼし式トリプルジャーマンの連続弾。首をさすりながら、どうにか立ちあがろうとした容子に対し、美央は勝負とばかりに新技のタイムボムをくり出した。後頭部から垂直落下式に突き刺す変形のダイナマイト・プランジャー。これにはさすがの容子も身動きひとつできず、スリーカウントが決まった。
 「ワン、ツ―、スリー」。
 カンカンカンカンというゴングが乱打される中、肩で息をしながら美央が手をあげた。八分二十五秒、タイムボムからの体固めで美央の勝ち。
 「やったー」といいながら、リング上で小躍りをする美央を日奈子が抱きかかえた。「よくやったわ、美央ちゃん。ほとんどプロの域よ」という日奈子の声が弾んでいた。ワーッという大歓声の中、「皆さーん」といいながら、日奈子がマイクを鷲づかみにした。
 「私は‥‥私は今日の試合に大満足です。容子ちゃんもすごかったし、美央ちゃんも強かった。この試合はもうプロの世界だと思っていて、できれば私たちは本気でプロをめざすことを、ここに宣言します!」だなんて。あらら、また始まった。プレジデント日奈子の大暴走。
 「どうせやるんだったら、女子最強のプロレス団体にでも挑戦状をたたきつけようかしらね~。待ってろよ、ジャパン〇〇〇〇プロレス!」とかなんとか。走り出したら止まらない日奈子のたわごとは、その後の女子プロレス界に一石どころか、百石ぐらいの雨あられを投じることになったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...