【完結】婚約破棄された上に家を追い出されましたが、推しに溺愛されているので幸せです。

アキ・スマイリー

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第1話 目覚めたら、いきなり婚約破棄されました。

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「アルフィエット・バートリー! お前との婚約を破棄する!」

「はぁ?」

 思わず素っ頓狂な声をあげてしまった私こと神楽坂萌。会社の飲み会で酔っ払って、二次会のカラオケで大好きなアニソンも歌えず、ノリについていけなくてお酒ガブ飲みで酔い潰れてた筈なのに......。

 気がついたら知らない世界。ふかふかのベッドで目覚めた私が、「夢かな......」なんて思いつつドレッサーに座って寝癖を直していたその時。部屋に飛び込んできたのがこの人なのだ。

「あの、すいませんがどちら様ですか?」

「なっ......! 婚約者であるこの第三王子、フレッド・エミュールの顔と名前を忘れたのか!?」

「はー、王子様なんだ。いや、まぁ全然知らないですけど......ていうか、ここはどこなんでしょうか?」

 王子様を名乗る金髪の青年は確かに彫りが深く、ヨーロッパ系なお顔立ち。全然好みの顔じゃないけどね。そして何故か日本語を喋っている。

「き、貴様ぁ......! この僕をここまで侮辱するとは......! 許さん! 親に抗議してやる!」

 フレッド王子は白い顔を真っ赤にし、部屋を飛び出していった。全く短気な人だなぁ。ってか、マジで誰なんだよ......。私、アルフィエットって名前じゃないし......。

 気を取り直してドレッサーの鏡を見る。うん、この顔も私じゃないぞやっぱり。でも夢にしては随分と意識がはっきりしてるな。

 試しにほっぺたを思いっきりビンタしてみる。バッチーンとね。

「いったぁーい!」

 ほっぺに赤く手の形がついてしまった。だが痛みのショックで混乱していた意識が正常に戻り始める。

 ああ......そうだ。今の私は神楽坂萌じゃなくて、「剣の聖女」アルフィエット・バートリー。それは間違いないんだ。

 ただ寝起きに前世の記憶が蘇ってきたせいで、混乱してしまっていたのだ。実は転生してから、もう十八年も経っている。

 いやはや......私って異世界からの転生者だったんだね。平和な日本に生まれて地味にひっそりと育ち、恋人も作らずオタ活にいそしんだ日々。ゲームの推しキャラをアプリ課金やグッズ購入で養い、常に金欠だった。

 でも幸せだった。推しキャラとの甘い生活を、いつも妄想してた。あんな事やこんな事も......。そして二十八歳の若さであの世へ旅立ったんだよね......多分。記憶が途切れてるから確かじゃないけど、きっとそうなんだろう。

 最後まで純潔守ったよ私。今世においても、成人する十八歳の今までしっかりガードしてきた。

 あの婚約者フレッド王子にでさえ、手も握らせた事はない。前世の地味な顔と違って、今世の私はアイドル並に可愛い。フレッド以外にも求婚者は沢山いたんだけど、好みじゃないから全部振ってやったんだ。さすがに王子様は断る訳には行かなかったけど......。

 やっぱ三次元の男には興味がわかないっていうか......理想が高すぎるんだろうね私。前世で推してたゲームのキャラみたいな男子、どこかにいないかな。

 っていうかフレッドは何で怒ってたんだっけ? 婚約破棄された理由はなんだ?

 そこだけどうしても思い出せない。うーん......。
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