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会議
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エリカの《支配》が破れたことをシバー少尉から聞いたガブリュー大佐は、直属の部下を会議室に集めてエリカ対策の作戦会議を開いていた。
集まったのは9人の士官。 軍によるファントムさん《支配》の計画に携わるメンバーである。 エリカに平手打ちされて意識不明だったマベルス中尉も、《治癒》の魔法で回復し会議に参加している。
「すでに聞き及んでいると思うが、サワラジリが《支配》から解放された。 ついては、皆の意見を聞きたい」
大佐はそれだけ言うと腕組みをして黙り込んだ。 今回の事態には、さすがの彼も焦っているのだ。
まず意見を述べたのはフロスト中尉である。
「かくなるうえはサワラジリ中尉に頭を下げて、これまでの非礼を詫びるしかないと思います」
しょっぱなから全面降伏を主張する発言である。 しかし、それを咎める声は上がらない。 相手はファントムさん。 怒らせればどんな仕返しをされるかわからない。 会議出席者の大部分はフロスト中尉と同じ気持ちである。
しかし中尉の意見に賛成する者もいない。
「頭を下げるだけで許してもらえるだろうか?」
フロスト中尉の発言に対して真っ先に発せられたその意見は、出席者の大部分の気持ちを代弁していた。 ガブリュー大佐でさえ、エリカに謝るだけで済むものなら謝るつもりでいた。
「《支配》は刑罰用の呪文ですからな。 そんな呪文でファントムさんを縛るような真似をしてタダで済むわけがない」
「ファントムさんに謝るよりも我々の身を守る方法を考えるべきでは?」
「それならいっそ、ファントムさんを再び《支配》する策を練るべきでは? 攻撃は最大の防御だよ」
謝ってもダメだろうからファントムさんを再び《支配》しよう。 その方向に会議の意見が傾き始めたとき、一人の少尉が発言した。
「エリカさんなら、謝れば許してくれると思いますけど」
「それは少尉がファントムさんと仲良しだからだろう」
「そんなこと... 無くは無いですけど。 でも、ここだけの話、エリカさんは土下座に弱いんです。 だからみんなで土下座をすればきっと許してくれますよ。 紆余曲折を経ることになっても最終的には」
皆の顔がぱーっと明るくなり、場が活気づく。
「なんと! その話は本当かシバー少尉?」
「土下座だけで済むならお安い御用だ」
「ファントムさんと仲の良い少尉が言うなら間違いなかろう」
しかしシバー少尉の言葉のすべてを理解し終えて表情を曇らせる者が出始める。
「『紆余曲折を経て』というのが気になる」
「うむ。 途中経過を具体的に知りたいものだ」
「あたしも『最終的には』っていうのが気になる」
「大丈夫ですよ。《治癒》の呪文でもどうにもならないような事態にはならないよう私がなんとかしますから」
腕組みをして考え込む大佐をよそに、部下たちがエリカに降参する方向に話を進めていたそのときである。 会議室のドアをノックする者があった。 コンコン。
「どうぞ」
誰かが呼びかけた声に応じてドアが開き、一人の男が顔を覗かせた。
「ガブリュー大佐、こちらにいらっしゃいましたか。 お伝えしたいことが...」
集まったのは9人の士官。 軍によるファントムさん《支配》の計画に携わるメンバーである。 エリカに平手打ちされて意識不明だったマベルス中尉も、《治癒》の魔法で回復し会議に参加している。
「すでに聞き及んでいると思うが、サワラジリが《支配》から解放された。 ついては、皆の意見を聞きたい」
大佐はそれだけ言うと腕組みをして黙り込んだ。 今回の事態には、さすがの彼も焦っているのだ。
まず意見を述べたのはフロスト中尉である。
「かくなるうえはサワラジリ中尉に頭を下げて、これまでの非礼を詫びるしかないと思います」
しょっぱなから全面降伏を主張する発言である。 しかし、それを咎める声は上がらない。 相手はファントムさん。 怒らせればどんな仕返しをされるかわからない。 会議出席者の大部分はフロスト中尉と同じ気持ちである。
しかし中尉の意見に賛成する者もいない。
「頭を下げるだけで許してもらえるだろうか?」
フロスト中尉の発言に対して真っ先に発せられたその意見は、出席者の大部分の気持ちを代弁していた。 ガブリュー大佐でさえ、エリカに謝るだけで済むものなら謝るつもりでいた。
「《支配》は刑罰用の呪文ですからな。 そんな呪文でファントムさんを縛るような真似をしてタダで済むわけがない」
「ファントムさんに謝るよりも我々の身を守る方法を考えるべきでは?」
「それならいっそ、ファントムさんを再び《支配》する策を練るべきでは? 攻撃は最大の防御だよ」
謝ってもダメだろうからファントムさんを再び《支配》しよう。 その方向に会議の意見が傾き始めたとき、一人の少尉が発言した。
「エリカさんなら、謝れば許してくれると思いますけど」
「それは少尉がファントムさんと仲良しだからだろう」
「そんなこと... 無くは無いですけど。 でも、ここだけの話、エリカさんは土下座に弱いんです。 だからみんなで土下座をすればきっと許してくれますよ。 紆余曲折を経ることになっても最終的には」
皆の顔がぱーっと明るくなり、場が活気づく。
「なんと! その話は本当かシバー少尉?」
「土下座だけで済むならお安い御用だ」
「ファントムさんと仲の良い少尉が言うなら間違いなかろう」
しかしシバー少尉の言葉のすべてを理解し終えて表情を曇らせる者が出始める。
「『紆余曲折を経て』というのが気になる」
「うむ。 途中経過を具体的に知りたいものだ」
「あたしも『最終的には』っていうのが気になる」
「大丈夫ですよ。《治癒》の呪文でもどうにもならないような事態にはならないよう私がなんとかしますから」
腕組みをして考え込む大佐をよそに、部下たちがエリカに降参する方向に話を進めていたそのときである。 会議室のドアをノックする者があった。 コンコン。
「どうぞ」
誰かが呼びかけた声に応じてドアが開き、一人の男が顔を覗かせた。
「ガブリュー大佐、こちらにいらっしゃいましたか。 お伝えしたいことが...」
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