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十字路
斥候部隊は倒したが、大変なのはこれからだ。 ザンス帝国軍の本隊6万人に奇襲をかけて混乱に陥れ、ヒモネス隊がクーララ首都へ到着するまでの時間を稼がねばならない。
ヒモネス中佐は部下たちのもとへ向かう。 囮となった3人を除く隊員たちは、《迷彩》の呪文で身を隠し離れた場所で待機していた。 彼らは近づいてくる中佐を迎える。
「お疲れ様ですヒモネス隊長」
隊員たちは《迷彩》で姿を隠しているが、体を動かすたびに《迷彩》のカモフラージュ効果が遅れるので、注意して見ていれば居場所がわかる。 《迷彩》はカモフラージュにより背景に溶け込むが、溶け込むのに少し時間が必要である。 例えば腕を動かすと、腕に映っているのは腕を動かす前の背景に合致する模様であり、新しい背景とは噛み合わない。
ヒモネス中佐は開口一番、次の行動を指示する。
「のんびりしているヒマはないぞ。 帝国軍本隊を奇襲する作戦を考えよう」
そうして作戦会議が始まった。 まずは目標を明確にせねばならない。 一人の隊員が尋ねる。
「奇襲でどれだけの時間を稼げばいい?」
これに答えたのは算数の得意な隊員だ。 彼はすでに計算を済ませていた。
「帝国軍の進軍ペースがオレたちの1.5倍だとして、最低でも90分は帝国軍の進行を遅らせる必要がある。 それより少ないと、首都に着く前に再び帝国軍に追いつかれる」
隊員たちがざわめく。
「1時間半も!?」
「不可能だ!」
けっきょく帝国軍に追いつかれて全滅する運命なのか! 皆がそう思ったとき、ヒモネス隊長が逃げ道を提示した。
「この先をしばらく進んだところに十字路がある。 君たちは十字路を東に進め。 帝国軍の目的地は首都だから、東の道には来るまい」
十字路を北へ向かう道はクーララ首都、東へ向かう道はザルス共和国のタベザル市に通じている。
その道があったか! 隊員たちがホッとした表情を浮かべるなかで、イショナが大事なことを尋ねた。
「隊長はどうするんですか?」
はっ、そうだわ。 隊長は、隊長はどうなさるのかしら? 固唾を飲んでヒモネスの返答を待つ女子隊員たち。
「私は一人で...」と言いかけてヒモネス中佐は考え直した。 そう答えてしまうと先ほどと同じ展開になりそうだ。 女子隊員たちがヒモネスに付いてくると言い張り、それに引きずられて男子隊員たちも... 同じミスを繰り返すわけにはいかない。 ヒモネスは首都での戦いに参戦することよりも部下の命を優先することにした。
「むろん私も東の道へゆく」
◇◆◇
目的地が首都から十字路へと変更になり、議題は奇襲作戦の内容へと戻った。 現地点から十字路までの所要時間は30分。 この30分を稼ぐのが奇襲の目標となる。 現実味のある目標が出たので隊員たちが活発に意見を交換し始める。
「またロープ&《迷彩》で転ばせようよ」
「少しは時間が稼げるだろうけど、罠の準備にかかる時間のほうが長いんじゃ?」
「さっきは上手くいったじゃん」
「さっきは勢いよくロープに突っ込んできたし。 それに今度は6万人もいるんだよ?」
「坂道に誘い込んで上から大岩を落とすとかは?」
「この辺に大岩はなかったんじゃないかな」
「橋を...」
「橋もなかったよね?」
こんな具合に奇襲作戦は着実に練り上げられていった。
ヒモネス中佐は部下たちのもとへ向かう。 囮となった3人を除く隊員たちは、《迷彩》の呪文で身を隠し離れた場所で待機していた。 彼らは近づいてくる中佐を迎える。
「お疲れ様ですヒモネス隊長」
隊員たちは《迷彩》で姿を隠しているが、体を動かすたびに《迷彩》のカモフラージュ効果が遅れるので、注意して見ていれば居場所がわかる。 《迷彩》はカモフラージュにより背景に溶け込むが、溶け込むのに少し時間が必要である。 例えば腕を動かすと、腕に映っているのは腕を動かす前の背景に合致する模様であり、新しい背景とは噛み合わない。
ヒモネス中佐は開口一番、次の行動を指示する。
「のんびりしているヒマはないぞ。 帝国軍本隊を奇襲する作戦を考えよう」
そうして作戦会議が始まった。 まずは目標を明確にせねばならない。 一人の隊員が尋ねる。
「奇襲でどれだけの時間を稼げばいい?」
これに答えたのは算数の得意な隊員だ。 彼はすでに計算を済ませていた。
「帝国軍の進軍ペースがオレたちの1.5倍だとして、最低でも90分は帝国軍の進行を遅らせる必要がある。 それより少ないと、首都に着く前に再び帝国軍に追いつかれる」
隊員たちがざわめく。
「1時間半も!?」
「不可能だ!」
けっきょく帝国軍に追いつかれて全滅する運命なのか! 皆がそう思ったとき、ヒモネス隊長が逃げ道を提示した。
「この先をしばらく進んだところに十字路がある。 君たちは十字路を東に進め。 帝国軍の目的地は首都だから、東の道には来るまい」
十字路を北へ向かう道はクーララ首都、東へ向かう道はザルス共和国のタベザル市に通じている。
その道があったか! 隊員たちがホッとした表情を浮かべるなかで、イショナが大事なことを尋ねた。
「隊長はどうするんですか?」
はっ、そうだわ。 隊長は、隊長はどうなさるのかしら? 固唾を飲んでヒモネスの返答を待つ女子隊員たち。
「私は一人で...」と言いかけてヒモネス中佐は考え直した。 そう答えてしまうと先ほどと同じ展開になりそうだ。 女子隊員たちがヒモネスに付いてくると言い張り、それに引きずられて男子隊員たちも... 同じミスを繰り返すわけにはいかない。 ヒモネスは首都での戦いに参戦することよりも部下の命を優先することにした。
「むろん私も東の道へゆく」
◇◆◇
目的地が首都から十字路へと変更になり、議題は奇襲作戦の内容へと戻った。 現地点から十字路までの所要時間は30分。 この30分を稼ぐのが奇襲の目標となる。 現実味のある目標が出たので隊員たちが活発に意見を交換し始める。
「またロープ&《迷彩》で転ばせようよ」
「少しは時間が稼げるだろうけど、罠の準備にかかる時間のほうが長いんじゃ?」
「さっきは上手くいったじゃん」
「さっきは勢いよくロープに突っ込んできたし。 それに今度は6万人もいるんだよ?」
「坂道に誘い込んで上から大岩を落とすとかは?」
「この辺に大岩はなかったんじゃないかな」
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「橋もなかったよね?」
こんな具合に奇襲作戦は着実に練り上げられていった。
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