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二
九
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妖怪の町の長である繋は自分の机で色々な書類と睨めっこをしている。
町の予算案とか治安の状況などの報告書だろうか。
結は繋の机の上に熱い茶が入った湯呑みを置く。
湯呑みを持ち茶を啜る。
その時のホッと一息する繋の表情が不覚にもキュンとした。
「最近町の外の念が活発に動いてるらしい」
「念ってあの怨念の集合体って言ってたヤツ?」
「あぁ」
ここに来て一週間が経過した。
繋の付き人となった結は無理のない程度に繋の身の回りの世話をそつなくこなしていた。
お茶出し、書類整理、着物の色合わせ、こまめな掃除など····
そして現在、この世界の文字の勉強中。
「相変わらず何書いてるのか分からないやつが多い·····」
「俺はお前さんの世界の文字が読めねぇわ」
カバンの中にあった日本語と英語の教科書を見せた時に
「これ、破り捨てていいか?」と、言われた。
学生の結が見ても頭が痛くなる文ばかりなのだ。
初めて見た繋はちんぷんかんぷんだろう。
とりあえず破り捨てるのは却下させてもらった。
「···その念が何かやらかしたとか?」
「妖力の弱い妖を見つけては襲って取り憑いてるらしい」
人間に取り憑く妖怪が怨念の集合体に取り憑かれるとこなんてあるのだな。
ここは自分とは違う世界だからそういう事もあるのかと結は自己完結をした。
「取り憑かれたらどうなるの?」
「凶暴化して周りのヤツらを襲い出す」
死人が出たと言う報告が過去にあったらしい。
あの怨念は確かに背筋が凍るほどの気味悪さとおぞましさがあった事を遭遇した事のある結は体験している。
その時は繋の匂いがどうとか言われて助かった。
まだその時、繋とはあってもいなかったのに何故自分から繋の香りを念は感じ取ったのかは、分からずじまいだ。
「結」
「え?何??」
考え込んでいた結が繋の声にハッとし顔を上げる。湯呑みの中が空になったからおかわりの要求だった。
「あ、直ぐに継いでくるね」
湯呑みを受け取り踵を返そうとした時。
グイッと腕を引かれてバランスを崩した結は繋の胸へとダイブする。
「つ~かまえた~」
してやったりとたまにこうしてこの天狗様は子供の様に悪戯を仕掛けてくることがある。仕事しろ。
「何すんのよぉ!」
「結が無防備にボケっとしてたから起こしてやっただけだ」
そのケラケラ笑う顔を見れば怒る気にもならなくなる。
「····ひ、人をからかってないで仕事しろ」
その間に茶を継いでくるからと暴れる結に笑いながら繋は
「結の匂い落ち着くからちょっとまて」
と、ギュッと抱き締められた。
「せ···クハラ」
「知らね。んな言葉」
「····むぅ」
セクシャルハラスメントだなんて横文字は知らない。
だから、関係ない。
「つか、いつもやってることだろ?」
寝る時の抱き枕役を。
「···············」
ここ一週間寝ている結の部屋にやってきては知らず知らずの間に抱き枕にされていて毎朝叫び声が目覚ましとなっている。
お陰様で寝坊せずに仕事に取り組めているらしい。
「これも立派な結の仕事の一つだろ」
「う····うぅ~····」
身の回りの世話の中に抱き枕があるなんて横暴だ。
しかし、それを了承して契約書にサインをしたのだから結に拒む理由はなかった。
「寝る時だけで今じゃない!!」
「いいだろ別に!」
「恥ずかしいの!!」
執務室で言い合いをする二人の声を廊下で聞いた従者達は
「痴話喧嘩かな?」と、微笑ましい表情で歩き去って行った。
町の予算案とか治安の状況などの報告書だろうか。
結は繋の机の上に熱い茶が入った湯呑みを置く。
湯呑みを持ち茶を啜る。
その時のホッと一息する繋の表情が不覚にもキュンとした。
「最近町の外の念が活発に動いてるらしい」
「念ってあの怨念の集合体って言ってたヤツ?」
「あぁ」
ここに来て一週間が経過した。
繋の付き人となった結は無理のない程度に繋の身の回りの世話をそつなくこなしていた。
お茶出し、書類整理、着物の色合わせ、こまめな掃除など····
そして現在、この世界の文字の勉強中。
「相変わらず何書いてるのか分からないやつが多い·····」
「俺はお前さんの世界の文字が読めねぇわ」
カバンの中にあった日本語と英語の教科書を見せた時に
「これ、破り捨てていいか?」と、言われた。
学生の結が見ても頭が痛くなる文ばかりなのだ。
初めて見た繋はちんぷんかんぷんだろう。
とりあえず破り捨てるのは却下させてもらった。
「···その念が何かやらかしたとか?」
「妖力の弱い妖を見つけては襲って取り憑いてるらしい」
人間に取り憑く妖怪が怨念の集合体に取り憑かれるとこなんてあるのだな。
ここは自分とは違う世界だからそういう事もあるのかと結は自己完結をした。
「取り憑かれたらどうなるの?」
「凶暴化して周りのヤツらを襲い出す」
死人が出たと言う報告が過去にあったらしい。
あの怨念は確かに背筋が凍るほどの気味悪さとおぞましさがあった事を遭遇した事のある結は体験している。
その時は繋の匂いがどうとか言われて助かった。
まだその時、繋とはあってもいなかったのに何故自分から繋の香りを念は感じ取ったのかは、分からずじまいだ。
「結」
「え?何??」
考え込んでいた結が繋の声にハッとし顔を上げる。湯呑みの中が空になったからおかわりの要求だった。
「あ、直ぐに継いでくるね」
湯呑みを受け取り踵を返そうとした時。
グイッと腕を引かれてバランスを崩した結は繋の胸へとダイブする。
「つ~かまえた~」
してやったりとたまにこうしてこの天狗様は子供の様に悪戯を仕掛けてくることがある。仕事しろ。
「何すんのよぉ!」
「結が無防備にボケっとしてたから起こしてやっただけだ」
そのケラケラ笑う顔を見れば怒る気にもならなくなる。
「····ひ、人をからかってないで仕事しろ」
その間に茶を継いでくるからと暴れる結に笑いながら繋は
「結の匂い落ち着くからちょっとまて」
と、ギュッと抱き締められた。
「せ···クハラ」
「知らね。んな言葉」
「····むぅ」
セクシャルハラスメントだなんて横文字は知らない。
だから、関係ない。
「つか、いつもやってることだろ?」
寝る時の抱き枕役を。
「···············」
ここ一週間寝ている結の部屋にやってきては知らず知らずの間に抱き枕にされていて毎朝叫び声が目覚ましとなっている。
お陰様で寝坊せずに仕事に取り組めているらしい。
「これも立派な結の仕事の一つだろ」
「う····うぅ~····」
身の回りの世話の中に抱き枕があるなんて横暴だ。
しかし、それを了承して契約書にサインをしたのだから結に拒む理由はなかった。
「寝る時だけで今じゃない!!」
「いいだろ別に!」
「恥ずかしいの!!」
執務室で言い合いをする二人の声を廊下で聞いた従者達は
「痴話喧嘩かな?」と、微笑ましい表情で歩き去って行った。
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