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二章
敬語
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放課後、蓮を連れていつもの公園に行った。
ウルフはやっぱり一点を見つめて座っている。
僕は目の前に行って声をかけた。彼女が顔を上げて、僕の顔と蓮の顔を交互に見ている。
「友達の大間蓮。ウルフの話したらすごく興味持ってついてきちゃった」
「あ、そうなんですね。初めまして、大神ウルフといいます」
「初めまして、大間蓮です!へえ、苗字も狼みたいだな」
ウルフが驚いた。そして不安げな顔になって、「その話、気味悪くなかったですか?」と聞いた。
僕は罪悪感に浸った。彼女がずっと秘密にしてきたことを友達に話してしまったことに対する罪悪感。
「全然!かっこよくね?」
僕と同じことを言っている。ウルフの顔は喜んでいた。僕はホッとする。
「ごめんね、勝手に話しちゃって・・・」
「ううん、気にしないでください。・・・あ、気にしないで!」
敬語なしを頑張っている姿は可愛くてキュンときた。隣を見ると、蓮はまじまじとウルフを見ている。
「そんなに見たら失礼でしょ」
僕が制すると、「いや、だって葵が言っているとおりめっちゃ美人だからびっくりして。大人っぽいなあ。本当に中学生?」と言った。
「はい。狼ってことを話したら入学拒否されたんで、独学ですけどね」
蓮が驚いた。
「義務教育なのに・・・」
蓮が僕の顔を2度見した。
「お前今日マスクつけてたっけ?」
「いや、動物アレルギーでくしゃみ出ちゃうから対策。ウルフと長く話してたいしさ」
蓮がニヤニヤしている。ウルフの前だから何も言ってなかったけど。
「気遣ってくれてありがとう。息苦しくない?」
「大丈夫」
僕達はしばらく公園でおしゃべりを楽しんだ。
すると、蓮が突然、
「狼の人間ってどんな生活するの?」と聞いた。正直僕も興味があった。
ウルフは考えてから、「あまり人間と変わらない」と答えた。
「というか、私は狼男と人間のハーフだからほぼ人間なんです。パパも普通に人間の生活に慣れてますし。まあ、たまに本能出ますけどね」
ウルフはペロッと舌を出した。その仕草がまた可愛い。というより・・・。
「敬語抜けてない」
僕が指摘すると、ウルフが「あっ」と口に手を当てた。
「全くの無意識でした!いや、無意識だった!」
慌てた感じがやっぱり可愛くて僕は顔を覆ってしまう。蓮が相変わらずニヤニヤしていた。
「ま、まあ敬語は今すぐじゃなくてもいいからさ。ゆっくり慣れていけば・・・」
「そうですよね。が、頑張る」
話し込んでいるうちに日が沈み、辺りが暗くなり始めた。僕達はそれぞれの家に帰ることにした。
帰り道、僕はどうしてもウルフの好きな人が気になっていた。
蓮のことを好きになったりしてないだろうか・・・。それとも、他に好きな人がいるのかな。
ウルフの口から、好きな人がいるなんて話は聞いたこともないのに、僕はなんだか焦っていた。
ウルフを誰にも取られたくないと思っていた。
家に着いて、夕食を食べ、お風呂を済ませると、蓮に電話をかけてみた。
「もしもし」
『おっす。どした?』
僕はありのままの気持ちを伝えた。
「ウルフの口から好きな人がいるって話を聞いたことがないんだけど、なんか焦っちゃって。誰にも取られたくないから早く僕の恋人になっちゃえばいいって思うんだ。こんなのウルフが知ったらドン引きだろうけど、でもどうしたらいいのかな。蓮だって見たでしょ?今日だけじゃなくて、いつもあんな感じで。とても恋人になんか見えないし・・・」
そこで、蓮が爆笑し始めた。僕はびっくりして、携帯を耳から離した。
「え、なに?」
『恋人に見えないのは付き合ってないんだから当たり前だよ。焦りすぎ。仮に、ウルフちゃんに好きな人がいたとしてもまだ付き合ってはいないかもしれないだろ?可能性はあるんだし。それに、葵は自分で思っているほどヘタレでダメな男じゃないよ。自分の気持ちをしっかり伝えられるし、顔だって悪くないし、性格も言葉遣いも丁寧で優しいだろ?女子と関わればもっとモテると思うぞ』
僕は腑に落ちなかった。別に今は、僕のモテ話とかはどうでもいい。ただ、ウルフに好かれればいいのに・・・。なんで蓮はそんな話をしたんだろう?
「蓮、僕はウルフに好かれればいいんだ」
そう言うと、彼はチッチッチッと舌を鳴らした。
『わかってないなあ。好意を寄せている人がモテモテだったら、向こうが焦って告白してくるかもしれないだろ?』
僕は少し考えた。一理はあるし、わからなくない。だけど・・・。
「学校でモテたところで彼女と会うのは公園だよ。モテている姿なんて見てもらえないんじゃない?」
『そうだなあ。例えば、今日は友達と寄り道するから、今日はご飯に行くから、とかして会う頻度減らしてみたら向こうが寂しがったり?』
「そんなの僕が寂しくてできないよ!」
蓮が笑った。
「なら別の方法探さないとな。とりあえず、今日はウルフちゃんと電話しないの?」
僕は枕元の時計を見た。時計の針が午後9時を指している。この時間からかけたら迷惑だろうしなあ、と僕は考え、「しないよ」と答えた。
『よし、ならもう少し作戦会議だ』
僕達は、日付が変わるまで作戦会議をし続けた。
ウルフはやっぱり一点を見つめて座っている。
僕は目の前に行って声をかけた。彼女が顔を上げて、僕の顔と蓮の顔を交互に見ている。
「友達の大間蓮。ウルフの話したらすごく興味持ってついてきちゃった」
「あ、そうなんですね。初めまして、大神ウルフといいます」
「初めまして、大間蓮です!へえ、苗字も狼みたいだな」
ウルフが驚いた。そして不安げな顔になって、「その話、気味悪くなかったですか?」と聞いた。
僕は罪悪感に浸った。彼女がずっと秘密にしてきたことを友達に話してしまったことに対する罪悪感。
「全然!かっこよくね?」
僕と同じことを言っている。ウルフの顔は喜んでいた。僕はホッとする。
「ごめんね、勝手に話しちゃって・・・」
「ううん、気にしないでください。・・・あ、気にしないで!」
敬語なしを頑張っている姿は可愛くてキュンときた。隣を見ると、蓮はまじまじとウルフを見ている。
「そんなに見たら失礼でしょ」
僕が制すると、「いや、だって葵が言っているとおりめっちゃ美人だからびっくりして。大人っぽいなあ。本当に中学生?」と言った。
「はい。狼ってことを話したら入学拒否されたんで、独学ですけどね」
蓮が驚いた。
「義務教育なのに・・・」
蓮が僕の顔を2度見した。
「お前今日マスクつけてたっけ?」
「いや、動物アレルギーでくしゃみ出ちゃうから対策。ウルフと長く話してたいしさ」
蓮がニヤニヤしている。ウルフの前だから何も言ってなかったけど。
「気遣ってくれてありがとう。息苦しくない?」
「大丈夫」
僕達はしばらく公園でおしゃべりを楽しんだ。
すると、蓮が突然、
「狼の人間ってどんな生活するの?」と聞いた。正直僕も興味があった。
ウルフは考えてから、「あまり人間と変わらない」と答えた。
「というか、私は狼男と人間のハーフだからほぼ人間なんです。パパも普通に人間の生活に慣れてますし。まあ、たまに本能出ますけどね」
ウルフはペロッと舌を出した。その仕草がまた可愛い。というより・・・。
「敬語抜けてない」
僕が指摘すると、ウルフが「あっ」と口に手を当てた。
「全くの無意識でした!いや、無意識だった!」
慌てた感じがやっぱり可愛くて僕は顔を覆ってしまう。蓮が相変わらずニヤニヤしていた。
「ま、まあ敬語は今すぐじゃなくてもいいからさ。ゆっくり慣れていけば・・・」
「そうですよね。が、頑張る」
話し込んでいるうちに日が沈み、辺りが暗くなり始めた。僕達はそれぞれの家に帰ることにした。
帰り道、僕はどうしてもウルフの好きな人が気になっていた。
蓮のことを好きになったりしてないだろうか・・・。それとも、他に好きな人がいるのかな。
ウルフの口から、好きな人がいるなんて話は聞いたこともないのに、僕はなんだか焦っていた。
ウルフを誰にも取られたくないと思っていた。
家に着いて、夕食を食べ、お風呂を済ませると、蓮に電話をかけてみた。
「もしもし」
『おっす。どした?』
僕はありのままの気持ちを伝えた。
「ウルフの口から好きな人がいるって話を聞いたことがないんだけど、なんか焦っちゃって。誰にも取られたくないから早く僕の恋人になっちゃえばいいって思うんだ。こんなのウルフが知ったらドン引きだろうけど、でもどうしたらいいのかな。蓮だって見たでしょ?今日だけじゃなくて、いつもあんな感じで。とても恋人になんか見えないし・・・」
そこで、蓮が爆笑し始めた。僕はびっくりして、携帯を耳から離した。
「え、なに?」
『恋人に見えないのは付き合ってないんだから当たり前だよ。焦りすぎ。仮に、ウルフちゃんに好きな人がいたとしてもまだ付き合ってはいないかもしれないだろ?可能性はあるんだし。それに、葵は自分で思っているほどヘタレでダメな男じゃないよ。自分の気持ちをしっかり伝えられるし、顔だって悪くないし、性格も言葉遣いも丁寧で優しいだろ?女子と関わればもっとモテると思うぞ』
僕は腑に落ちなかった。別に今は、僕のモテ話とかはどうでもいい。ただ、ウルフに好かれればいいのに・・・。なんで蓮はそんな話をしたんだろう?
「蓮、僕はウルフに好かれればいいんだ」
そう言うと、彼はチッチッチッと舌を鳴らした。
『わかってないなあ。好意を寄せている人がモテモテだったら、向こうが焦って告白してくるかもしれないだろ?』
僕は少し考えた。一理はあるし、わからなくない。だけど・・・。
「学校でモテたところで彼女と会うのは公園だよ。モテている姿なんて見てもらえないんじゃない?」
『そうだなあ。例えば、今日は友達と寄り道するから、今日はご飯に行くから、とかして会う頻度減らしてみたら向こうが寂しがったり?』
「そんなの僕が寂しくてできないよ!」
蓮が笑った。
「なら別の方法探さないとな。とりあえず、今日はウルフちゃんと電話しないの?」
僕は枕元の時計を見た。時計の針が午後9時を指している。この時間からかけたら迷惑だろうしなあ、と僕は考え、「しないよ」と答えた。
『よし、ならもう少し作戦会議だ』
僕達は、日付が変わるまで作戦会議をし続けた。
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