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二章
彼、彼女がいない朝
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目を覚ますと、もう明るかった。時計を見ると、午前七時を指している。
僕は暖かい布団からモゾモゾと出た。もう夏も終わる。寝苦しい夜も終わった。
寒すぎず、暑すぎず、快適な温度で眠れる。
洗面台で顔を洗って歯を磨きながら、昨日の蓮との電話を思い出していた。
『とりあえずモテアピールは無駄じゃないと思う。でも会わないように、というか会う頻度を減らすのは葵が嫌だろうから決行しない。さて、どうやってモテアピールをしよう・・・』
僕は確かにモテアピールも大切なんだろうし、無駄ではないと分かっていた。でも、僕が知りたいのはそんな事じゃなかった。
「蓮、モテアピールも大事なんだけどね、僕の理想は、彼女に直接アピールすることだよ。遠回しにモテるんだよオーラ出すんじゃなくて、ウルフが好きですっていうオーラを出したいんだ。そしてそれを伝えたい。それに関してはどうしたらいいの?」
蓮は、まあ確かにそうだよな、と言った。そして考え込むと、質問をしてきた。
『葵はあのこと学校どころか学年だって違うわけだろ?話したことあったの?』
「いや、ないよ。学校行かないでずっとベンチに座ってたから気になったんだ。それで話しかけてみた」
『急に話しかけたわけ?』
「違うよ、ハンカチを目の前に落として気を引いたんだ。それで流れで話してみた」
蓮はハンカチか・・・と呟いたまま黙り込んだ。僕は続きを待った。しかし、いつまで経っても蓮は口を開かずに、考え込んでいる。
「僕もなにか作戦を立てれればな・・・」
それから僕も考え込んだ。
ウルフは僕といて楽しそうだ。それは笑顔を見ればわかった。かといって、僕が好きだとは感じ取れないしわからない。だからすぐにでも告白しても、時間をくれとか言われてしまうだろう。
考えていると、蓮が急に話しかけてきた。
『葵は素直で直球なところがいいところだと思うよ。それはウルフちゃんも思っていることかもしれない。だから、その良さを生かそう。明日、帰りのベンチで聞いてみろ。好きなタイプは?好きな人はいるのか?とかいろいろ』
「引かれないかな?大丈夫?」
『あなたに興味があるんですって思わせたいなら色々質問するのはいいと思うぞ。それに聞いてスッキリした顔した方が、うじうじしてるより絶対にいい』
蓮が言っていることは正しいように感じた。
僕は、頑張ってみる、と答えて電話を終えた。
学校に行く途中に、いつもの公園のベンチを見た。この時間には必ずいるウルフが、その日は何故かいなかった。
風邪でも引いて家で寝ているんだろうか・・・。
作戦を決行しようとした日に限って、と僕は肩を落とした。
普段、他の登校してる児童や生徒も多いため、朝の挨拶は控えていた。しかし、僕は毎朝彼女を見ていた。それだけで、一日が頑張れる気がしたから。
そのウルフがいない朝は、とてもつまらなく感じた。もしかしたら今日は会えないかもしれないと思うと、僕は授業も眠くてあまり耳に入っていなかったのだ。
朝、私は毎朝同じベンチに座る。
そして、向こうから歩いてくる彼を見る。彼は私を見て微笑んでくれる。
私は彼の笑顔が好きだ。
彼の笑顔があるから、別に学校になんか行かなくても日中の勉強も頑張れる気がした。
みんなの登校が終わると、私は家に帰る。そして、ドリルを開いて勉強をする。
1人だととてもつまらなかった。
小学生の時は、友達も多くて、みんなと勉強してたのが楽しかった。今は、彼の笑顔がないと頑張るのが辛いけど。
高校を卒業してからしばらく経った時、目の前に白いガーゼのハンカチが落ちた。よく見ると、青い小花柄でとても可愛らしい。
私は拾って落とした人に返した。それが、鳥田葵くんとの出会いだった。
葵くんはとても面白い人だった。友達が少ないとか、女子の友達がいないんだっていうのが不思議なくらい、話していると楽しくて、葵くんの学校での話を聞くのも好きだった。
私はその学校を想像した。きっと中学よりも遥かに人が多くて、とても楽しいのだろうと。
そして、みんなそれぞれの恋をして、泣いたり笑ったりの青春を過ごすのだろうと。
私もそんな世界を見てみたかった。このまま狼の正体を隠して高校に行くことは不可能だろうと諦めた。そもそも中学校も行けてないのに・・・。
私が1番羨ましいのは、好きな人と気軽に話せること、毎日会えること。
そして何より、可能性のある恋が出来ることだ。
私は彼が好きだ。
でも彼は私をただの子どもだと思っているだろう。そのことがただ辛くて仕方がない。
彼はいつか、この街を去ってしまう。だから気持ちを伝えたかった。
彼の隣の、女性の存在を知るまでは。
僕は暖かい布団からモゾモゾと出た。もう夏も終わる。寝苦しい夜も終わった。
寒すぎず、暑すぎず、快適な温度で眠れる。
洗面台で顔を洗って歯を磨きながら、昨日の蓮との電話を思い出していた。
『とりあえずモテアピールは無駄じゃないと思う。でも会わないように、というか会う頻度を減らすのは葵が嫌だろうから決行しない。さて、どうやってモテアピールをしよう・・・』
僕は確かにモテアピールも大切なんだろうし、無駄ではないと分かっていた。でも、僕が知りたいのはそんな事じゃなかった。
「蓮、モテアピールも大事なんだけどね、僕の理想は、彼女に直接アピールすることだよ。遠回しにモテるんだよオーラ出すんじゃなくて、ウルフが好きですっていうオーラを出したいんだ。そしてそれを伝えたい。それに関してはどうしたらいいの?」
蓮は、まあ確かにそうだよな、と言った。そして考え込むと、質問をしてきた。
『葵はあのこと学校どころか学年だって違うわけだろ?話したことあったの?』
「いや、ないよ。学校行かないでずっとベンチに座ってたから気になったんだ。それで話しかけてみた」
『急に話しかけたわけ?』
「違うよ、ハンカチを目の前に落として気を引いたんだ。それで流れで話してみた」
蓮はハンカチか・・・と呟いたまま黙り込んだ。僕は続きを待った。しかし、いつまで経っても蓮は口を開かずに、考え込んでいる。
「僕もなにか作戦を立てれればな・・・」
それから僕も考え込んだ。
ウルフは僕といて楽しそうだ。それは笑顔を見ればわかった。かといって、僕が好きだとは感じ取れないしわからない。だからすぐにでも告白しても、時間をくれとか言われてしまうだろう。
考えていると、蓮が急に話しかけてきた。
『葵は素直で直球なところがいいところだと思うよ。それはウルフちゃんも思っていることかもしれない。だから、その良さを生かそう。明日、帰りのベンチで聞いてみろ。好きなタイプは?好きな人はいるのか?とかいろいろ』
「引かれないかな?大丈夫?」
『あなたに興味があるんですって思わせたいなら色々質問するのはいいと思うぞ。それに聞いてスッキリした顔した方が、うじうじしてるより絶対にいい』
蓮が言っていることは正しいように感じた。
僕は、頑張ってみる、と答えて電話を終えた。
学校に行く途中に、いつもの公園のベンチを見た。この時間には必ずいるウルフが、その日は何故かいなかった。
風邪でも引いて家で寝ているんだろうか・・・。
作戦を決行しようとした日に限って、と僕は肩を落とした。
普段、他の登校してる児童や生徒も多いため、朝の挨拶は控えていた。しかし、僕は毎朝彼女を見ていた。それだけで、一日が頑張れる気がしたから。
そのウルフがいない朝は、とてもつまらなく感じた。もしかしたら今日は会えないかもしれないと思うと、僕は授業も眠くてあまり耳に入っていなかったのだ。
朝、私は毎朝同じベンチに座る。
そして、向こうから歩いてくる彼を見る。彼は私を見て微笑んでくれる。
私は彼の笑顔が好きだ。
彼の笑顔があるから、別に学校になんか行かなくても日中の勉強も頑張れる気がした。
みんなの登校が終わると、私は家に帰る。そして、ドリルを開いて勉強をする。
1人だととてもつまらなかった。
小学生の時は、友達も多くて、みんなと勉強してたのが楽しかった。今は、彼の笑顔がないと頑張るのが辛いけど。
高校を卒業してからしばらく経った時、目の前に白いガーゼのハンカチが落ちた。よく見ると、青い小花柄でとても可愛らしい。
私は拾って落とした人に返した。それが、鳥田葵くんとの出会いだった。
葵くんはとても面白い人だった。友達が少ないとか、女子の友達がいないんだっていうのが不思議なくらい、話していると楽しくて、葵くんの学校での話を聞くのも好きだった。
私はその学校を想像した。きっと中学よりも遥かに人が多くて、とても楽しいのだろうと。
そして、みんなそれぞれの恋をして、泣いたり笑ったりの青春を過ごすのだろうと。
私もそんな世界を見てみたかった。このまま狼の正体を隠して高校に行くことは不可能だろうと諦めた。そもそも中学校も行けてないのに・・・。
私が1番羨ましいのは、好きな人と気軽に話せること、毎日会えること。
そして何より、可能性のある恋が出来ることだ。
私は彼が好きだ。
でも彼は私をただの子どもだと思っているだろう。そのことがただ辛くて仕方がない。
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