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お泊り
しおりを挟む「もうっ! アリスったら、心配かけて!!」
「わぷっ」
ギルドに入った途端、カウンターから飛び出してきた、黒髪のおっとりお姉さんにして敏腕受付嬢のケイトに抱き着かれた。
……こやつ、やはり大きいな。
どうやら、私がダンジョンから帰ってこないから、気を揉んでいたらしい。
確かに結構時間が経っていた。ダンジョンから外に出て真っ暗だった時には吃驚したものだ。
私はケイトの豊満な胸から顔を出し、呼吸を確保。とりあえず、謝罪。
「ぷはっ。……ご、ごめんなさい」
「いいわ。無事ね? 無事なのよね? ローブが汚れてるわね。どこか怪我はしてない?」
「だ、大丈夫だから。これは”侵略者”の血だし、少し全身が痛むだけだから」
「それを怪我って言うのよ! ……”トレイン”に巻き込まれたって聞いたから、本当に生きて戻ってきてくれてよかったわ」
そう言って嬉しそうに微笑むケイト。
お姉ちゃんに心配をかけてしまったのは、本当に悪いと思っている。
でも、私だって探索者の端くれ。こんなに心配されるのはちょっと……。
苦笑していると、ケイトの後ろから、金髪の美青年が顔を出した。
休暇中らしく、ラフな恰好をしているが、高ランクの探索者らしい覇気を纏っていた。
そんな彼も安堵の表情を浮かべている。
「アリス、おかえり。無事で何よりだ」
「エド、私そんなに心配かけてたかな……?」
「無理もないさ。”トレイン”に巻き込まれたと聞いたからね。いくら『始まりの洞窟』と言えど、”トレイン”を巻き込まれたら命に関わる」
「そうだ! その”トレイン”についてなんだけど」
「安心してくれ。犯人は既に捕まえているから」
「あ、そうなんだ……」
まだ何も話していないのに、もう犯人捕まえちゃったの……?
仕事が早いというか。犯人がボロでも出したのかな。
まあ、捕まったって言うならそれでいいか。
私はいつまでも抱き着いているお姉ちゃんを引きはがし、新たな決意を告げる。
「――ケイト、私、もう少し頑張ってみることにしたの」
「……どこか晴れやかな顔をしているから、何かあるんだろうとは思っていたけど。何があったの?」
「ちょっとね。進むべき道を見つけた、というか、これまで誤った道を進んでいたみたいだったから、一からやり直そうと思って」
「そう……。アリスがそう決めたのなら、私から何か言うことはないわ。でも、無茶だけはしないこと! いいわね?」
「わかってる。命は大事に、でしょ」
心配性なお姉さんと二人、笑い合う。
ケイトがいたから、私は探索者を続けられるのだから、彼女の言うことはちゃんと聞くようにしている。
私が心の中で感謝をしていると、ミルフィがてしてしと前足で頭を叩いてきた。
「どうしたの、ミルフィ?」
「こうして無事を伝えられたんだ。今日のところはそろそろ帰らないかい? ボクも君も、汚れてしまっているからね。それにお腹も減ってきたよ」
「カーバンクルって何を食べるの?」
「人間と同じもので構わないよ。でも、ボクは甘党だからね。パンケーキでも献上してくれると嬉しいかな」
「そんなもの、食べるお金なんてどこにもないわ。今日は我慢しなさい」
「まったく……。仕方ないね。アリス、君にはこれからがっぽりと稼いでもらうから、覚悟してくれたまえ」
「はいはい。それじゃ、ケイト。私たち、もう帰る――」
帰るから、と言う前に、腕を掴まれた。
ケイトは、怪訝な表情でミルフィを見ている。
「まだ、説明してほしいことはいっぱいあるのよ」
「えー……明日にしない?」
「……それなら、私の家に泊まりなさい。シャワーもあるし、ご飯も作ってあげる。しっかりと話を聞かせてもらいますからね!」
ケイトはそう言うと、帰り支度をするため、カウンターへと戻っていった。
私はミルフィと顔を見合わせ、溜息を吐く。
どうやら、私たちの夜はまだ終わらないらしい……。
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