追放歌姫の異世界漫遊譚

あげは

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一章 旅立ち

ダンジョン都市 *元パーティー視点

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 ――ダンジョン都市。

 大陸北西にある帝国、連合国、王国と隣接する中立都市である。
 七つの難易度の異なるダンジョンが存在し、英雄に憧れた多くの冒険者が理想を求め、大陸中から、それだけにとどまらず大陸を渡ってまで来訪する。
 その冒険者たちを支えようと、世界中の商人たちが競うように商売をするため、ある種観光地としても有名である。
 現在『銀の戦剣』はある依頼を受け、この都市にやってきていた。

「ようやくついたな、ダンジョン都市」

 リーダーのカインが呟く。
 王都からここまで約二週間ほどかかっている。
 彼らはAランクパーティーだが、ダンジョン都市に来たのは数回しかない。

「おー。やっぱり冒険者でいっぱいっすね。久しぶりに来たっすけど、特に変わったところとかはなさそうっすね」

「まだ着いたばかりだ。これから情報収集をする必要がある。遊んでいる暇はないぞ」

 軽い調子のカーナを重戦士のランドルが窘める。仕事に関しては常にストイックなのだ。頭が固すぎるのは玉に瑕だとカーナは思っていた。

「そんなことより先に宿探すわよ。お風呂も入りたいし、早くしないと埋まってしまうわ。せっかくついたのに野宿とかごめんよ」

「それもそうっすね。それじゃ自分、おすすめの宿聞いてくるっす」

 そう言うとカーナは颯爽とその場から立ち去る。
 できるだけパーティーメンバーと一緒にいる時間を減らしたかったのだ。
 なぜなら、リリナを追い出してからここ二週間、パーティーの空気は少し悪くなっているからだ。
 元々『銀の戦剣』のメンバーたちは互いに干渉し合うことは少なかった。
 カインは自分が有名になることしか頭になく、ランドルは仕事のこと以外口を開くことはなかった。アルマは自分自身と魔法以外に興味を持たない。
 そのため、カーナとリリナがうまく調整してまとめていたのだ。

 しかし、現在はリリナを追放したため、それをカーナが一人でこなさなくてはならない。
 その上、新しく加入したマリンはカインにベッタリだ。Aランクパーティーとの接点を持ち、これで名を上げることができたら次期聖女に一歩近づくという打算が丸見えである。
 カインはカインで、次期聖女候補とのつながりを自分の名を広める道具としか考えていない。

 そのような状況でカーナはメンバーの統率を図り苦労していたが、ここでまた別の問題が発生した。
 魔物討伐にかかる時間が以前よりも長くなっているのだ。
 ダンジョン都市に向かうまでの間に何度か魔物と遭遇したが、どれも以前に難なく討伐した魔物だった。
 ゴブリンやコボルト程度であれば、仮にもAランクパーティーである彼らにとって楽な魔物である。
 問題はBランク相当のグレートファングという魔物と遭遇したときだった。
 グレートファングとは二本の大きな牙を持った獅子の魔物だ。以前はカイン魔法剣で牙を折り、アルマの魔法で簡単に討伐することができた。
 しかし、今回は牙を折ることも魔法を当てることもできなかった。思うように攻撃を当てることもできず、疲弊したグレートファングが撤退し戦闘は終了した。
 そのせいか、討伐することができなかった責任をカイン・アルマ・ランドルの三人が押し付け合い口論になった。
 マリンは我関せずを貫き、カーナが一時的に収めたことで事なきを得たが、ムードは険悪なままここまで来た。

 実際はリリナの力によってパーティー全体が強化されていたからAランクまで上り詰めたということを、カーナ以外は知らない。
 というよりも、三人はリリナが何とかしていたとは思わない。無能だと思っていたのに実は……なんてことを彼らは認めないだろう。
 それもわかっているからカーナは何も言わない。
 リリナが追放されたとき自分もパーティーを抜けるべきだったと後悔している。
 今からでは遅いが、リリナを追いかけようとも思っている。当然断られるだろうと思っているがこのパーティーに残るよりだいぶましだ。
 とりあえず今回の依頼はしっかりやろうと思っているカーナだった……。



 ◇◇◇


 時刻は夜。
 カーナが見つけた宿の一室で情報共有、依頼の確認を行っていた。

「今回の依頼は、ダンジョン都市に突如現れた第八のダンジョンの調査だ。異例の事態だから慎重に行う必要がある」

「そうっすね。まずは集めた情報を整理するっす」

 ランドルが言ったように、依頼内容は第八のダンジョンの調査。
 今あるダンジョンは都市の管理者が利益を得られるよう危険度を調節した、いわゆる人工ダンジョンと言える。
 自然発生したダンジョンを攻略し、再利用するために試行錯誤した結果作られた。先人の知恵の結晶である。
 それ以来自然発生したダンジョンはなかったため、今回発生した第八のダンジョンが異例ということになる。
 ましてや、このダンジョンは、発生の予兆もなくまるで最初からそこにあったかのように存在していた。
 そう言ったことからも今回高ランク冒険者に調査依頼が出されたのである。

「わかっているのは、洞窟型で下に広がっていく構造になっていることだ。魔物の種類もレベルも未知数だ」

「自分も同じような事しか聞けなかったっすね。他はどうっすか?」

「私は誰かに聞いて回ったりなんかしないわ。自分の目で見るだけよ。……ただわかっていることが一つ。ダンジョン全体に変な魔力を感じるわ。それが何かは分からないけど、死にたくなかったら注意しなさい」

「あれ?アルマさん、珍しくちゃんと仕事してるっすね。どうしたんすか?」

「……当たり前でしょ。私が生存できるかどうかに関わってくるのだから」

「あー……。いつも通りっすね……」

 そう言うが、カーナはアルマの言葉をしっかり聞いていた。
 その上で理解していた。今回の依頼は一筋縄ではいかないことを。
 それと同時に、リリナがいないことに不安を感じていた。今までと同じようにやっていたら最悪死にかねないと思い、奥の手の準備をしておく。
 カーナは奥の手を使う機会がないことを祈るばかりであった。

「カイン、お前はどうだ?」

「あ?俺がそんなちんけなことするわけねーだろ。なんだかんだ言って何とかなるだろ。俺はAランクだぞ?この依頼さえクリアすればSランクもすぐだ。てめーら足引っ張るんじゃねーぞ」

「………そうか」

 三人は同じことを思った。
 こいつはダメだ。と。
 マリンだけは、「さすがカイン様ぁ!かっこいいですぅ!!」とおだてている。
 完全に油断しきっている二人を前にして、アルマは自分だけが生き残る方法を考えていた。どこまでも自分本位がアルマである。
 ランドルは、同仕事をこなすかとしか頭になかった。
 そんな周囲の様子を見て、カーナの祈りは強くなった。

「もういいだろ。話は終わったんだ。俺は部屋に戻るぜ」

「あぁん、まってぇ。マリンも行きますぅ」

 マリンがカインの腕に抱きつく。
 どうせ朝までハッスルだ。と三人は分かっているが何も言わない。
 依頼の前日くらい自重しろと言いたいところだが、言っても聞かないのはいつものことだ。もうすでに諦めている。
 ランドルとアルマは、最悪仲間を見捨てればいいと思っているため、気にしない。
 それぞれが部屋に戻り、カーナが一人残った。
 というよりも話し合っていたのはカーナの部屋だった。

「あーもう。なんなんすか。みんな自分勝手すぎません?依頼のやばさ理解してるんすかね。こんなんで成功するとかマジで思ってるんすかあの人たち。特にカインさんとか、リリィの「歌」なかったらCランクくらいの力しかないのわかってないっすよね完全に。ランドルさんもアルマさんも自分の力過信しすぎっすよ。あのクソビッチは論外っすね。あれで次期聖女候補とか教会の方たちも目が腐ってるっすねほんと。
 ……あぁ、やっぱりリリィについていくべきだったっすね。Aランクパーティーにいれば人探しも楽だと思ったすけど。こんなパーティーじゃ見つかりっこないっす。
 今回の依頼が無事終わったら、パーティー抜けるっすけどリリィ受け入れてくれるっすかねぇ……。
 マジで銀髪碧眼の動物に愛される美少女は何処にいるんすかぁ……」

 ひとりになった部屋の中で、ストレスを発散するかのように愚痴をこぼすカーナ。
 まさかお目当ての人物がすぐ近くにいたとは知らず、明日の依頼に向け、装備の確認を済ます。

「はぁ………………リリィに会いたい…………」

 そういってカーナは瞼を閉じた……。










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