上 下
3 / 3

3

しおりを挟む
「いきなり、そんなことを言われても困ります」

私がそう返事をしたら、伯爵はふふっと微笑んだ。

「それはそうですよね。でしたら、お食事にでも」
「良いじゃないラウラ!」

リンが私の背中をぽんぽんと叩く。

「え、ええ。お食事なら」
「ありがとうございます」





伯爵と食事に行くことになった。
夕方、待ち合わせをしてレストランに向かった。
席についた時、

「先日は失礼しました。いきなり求婚なんてしてしまって。でも、僕は本気なんです」

と伯爵が頭を下げる。

「気になさらないでください。それより、どうして私に求婚したのですか?」
「あなたに一目惚れしたんです。綺麗な方だと思って、思わず……」
「男性に綺麗と言われたのは初めてです」

こんなに綺麗な男性に「綺麗」と言われたのは初めてだった。
 
「嬉しいです。伯爵にそう言ってもらえて」

それから伯爵と食事をしながら、話をした。伯爵は聞き上手で、元婚約者のヴァレリーのことを話してしまった。
伯爵は慰めてくれた。「とても傷ついたでしょうね」と私の手を擦ってくれた。温かい手で安心した。
食事を終え、伯爵は私の家まで送ってくれた。
別れ際。

「また会ってくれますか?」

伯爵に聞かれて、私はなんの躊躇いもなく頷いた。


何回も伯爵と食事に行ったり、買い物したりデートを重ねた。
そんなある日。

「僕と結婚してくれませんか?」

改めて伯爵に求婚された。
私はだんだんと優しくて穏やかな性格の伯爵に惹かれていった。
だから、答えはもちろん。

「はい。よろしくお願いいたします」


こうして、私は伯爵と結婚した。
伯爵との結婚生活は穏やかなものだった。
毎日、好きだと言葉にしてくれて、大事にされているなと節々で感じる。

「私、あなたと結婚して良かった。毎日幸せです」

ある日。私が言うと、伯爵は目を細めた。

「そうか。僕もだよ」




 
ちなみに、元婚約者のヴァレリーとその浮気相手のロミは結婚したらしい。
だが、ロミが浮気したことで離婚したという。ヴァレリーは浮気と離婚のショックで引きこもり気味なのだとか。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:75,625pt お気に入り:1,487

優秀な妹と婚約したら全て上手くいくのではなかったのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:129,554pt お気に入り:2,371

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:67,777pt お気に入り:23,358

処理中です...