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喫茶店に入ってテーブル席に座る。頼んだコーヒーがきたところで、私はヴァレリーにたずねた。
「ヴァレリー様、この方は?」
「私はジューシュ子爵の娘、ロミと申します。その、あなたは?」
ヴァレリーに聞いたのに、女性が自ら自己紹介した。
私も自己紹介し、本題に入ろうと質問する。
「あなたがたは、あの場所で何をしていたの?」
「それは……」
ヴァレリーは言い淀んだ。
「デートに決まっているでしょう?」
「はあ?ヴァレリー様は私と婚約しているのよ。そんなわけないでしょう?もしかして、浮気していたの?」
「ああ、実は……」
ヴァレリーが頷いた。
浮気?私のことが好きで目を合わせられないと言っていたのに?
「私のこと好きと言っていたでしょう?」
「君のこと好きだよ。でも、ロミの方が好き。君と一緒にいると緊張で胸が痛くなる。だけど、ロミと一緒にいると楽なんだ。穏やかな気持ちになれるんだよ。だから、ロミの方が好きなんだ」
「何それ……」
私は吐き捨てるように言った。
私よりロミの方が好きだなんて。
ヴァレリーに好きと言われて浮かれていた私がバカみたいじゃない。
「もういいですわ。あなたとの婚約は破棄しますから」
「えっ」
「良いじゃないですか。ヴァレリー様は私より彼女の方が好きなのでしょう。では、そういうことで」
私は席から立ち、喫茶店から出た。
婚約破棄となれば、ヴァレリーの誕生日プレゼントを買う必要もなくなった。
私はメイドに「もう家に帰るわよ」と言った。
メイドは私を労わるように背中を擦った。
涙が出そうになったが、必死で堪えた。
人目があるし、婚約破棄したのはこちら側なんだから、泣きたくなんかなかったのだ。
家に帰ってから、ヴァレリーとの婚約を破棄したいと言った。
理由を言ったら、両親は怒った。ヴァレリーの家に抗議してくれたらしく、後日、ヴァレリーの両親が詫びを言いに来た。
「私としてはもう終わったことなので」
とにこやかに言うと、両親は「申し訳ございません」と深く頭を下げた。
そういえば、ヴァレリーからの謝罪はなかったな。
婚約破棄しておよそ一ヶ月。
友人のリンから、パーティーに誘われた。
「婚約破棄したんでしょう?良い男性と出会えるかもしれないわよ」
「そんなわけないでしょ。行くけど」
リンがにこにこしながら言っていたのだが、私は今恋をする気になれなかった。
また、浮気されたらどうしようと思ってしまうんだ。
当日、パーティーに向かった。
リンと話していると、ある男性に話しかけられた。
「リンさん、久しぶりだね」
「久しぶり」
リンの知り合いらしい。
「こちら、私の従兄のコマス伯爵よ。伯爵、こちらは私の友人のラウラさん。」
リンが伯爵に私のことを紹介する。
伯爵は金髪碧眼に綺麗な男性だった。リンの従兄にこんな綺麗な人がいたのかと驚いてしまった。
「リンのご友人にこんな綺麗な人がいたんだね」
「いえ、そんな……。私だって驚きました。こんなに綺麗な男性がいらっしゃるなんて」
「実は、ラウラは婚約破棄したばかりなんですよ。伯爵、ラウラはどうですか?」
リンが余計なことを言う。
「そうなんだ。ラウラさん、会ったばかりでなんだけど、僕と結婚しませんか?」
「え?あは、そんな御冗談を」
私が少し笑いながら返すと、伯爵は真顔で、
「本気ですよ」
と言った。
「ヴァレリー様、この方は?」
「私はジューシュ子爵の娘、ロミと申します。その、あなたは?」
ヴァレリーに聞いたのに、女性が自ら自己紹介した。
私も自己紹介し、本題に入ろうと質問する。
「あなたがたは、あの場所で何をしていたの?」
「それは……」
ヴァレリーは言い淀んだ。
「デートに決まっているでしょう?」
「はあ?ヴァレリー様は私と婚約しているのよ。そんなわけないでしょう?もしかして、浮気していたの?」
「ああ、実は……」
ヴァレリーが頷いた。
浮気?私のことが好きで目を合わせられないと言っていたのに?
「私のこと好きと言っていたでしょう?」
「君のこと好きだよ。でも、ロミの方が好き。君と一緒にいると緊張で胸が痛くなる。だけど、ロミと一緒にいると楽なんだ。穏やかな気持ちになれるんだよ。だから、ロミの方が好きなんだ」
「何それ……」
私は吐き捨てるように言った。
私よりロミの方が好きだなんて。
ヴァレリーに好きと言われて浮かれていた私がバカみたいじゃない。
「もういいですわ。あなたとの婚約は破棄しますから」
「えっ」
「良いじゃないですか。ヴァレリー様は私より彼女の方が好きなのでしょう。では、そういうことで」
私は席から立ち、喫茶店から出た。
婚約破棄となれば、ヴァレリーの誕生日プレゼントを買う必要もなくなった。
私はメイドに「もう家に帰るわよ」と言った。
メイドは私を労わるように背中を擦った。
涙が出そうになったが、必死で堪えた。
人目があるし、婚約破棄したのはこちら側なんだから、泣きたくなんかなかったのだ。
家に帰ってから、ヴァレリーとの婚約を破棄したいと言った。
理由を言ったら、両親は怒った。ヴァレリーの家に抗議してくれたらしく、後日、ヴァレリーの両親が詫びを言いに来た。
「私としてはもう終わったことなので」
とにこやかに言うと、両親は「申し訳ございません」と深く頭を下げた。
そういえば、ヴァレリーからの謝罪はなかったな。
婚約破棄しておよそ一ヶ月。
友人のリンから、パーティーに誘われた。
「婚約破棄したんでしょう?良い男性と出会えるかもしれないわよ」
「そんなわけないでしょ。行くけど」
リンがにこにこしながら言っていたのだが、私は今恋をする気になれなかった。
また、浮気されたらどうしようと思ってしまうんだ。
当日、パーティーに向かった。
リンと話していると、ある男性に話しかけられた。
「リンさん、久しぶりだね」
「久しぶり」
リンの知り合いらしい。
「こちら、私の従兄のコマス伯爵よ。伯爵、こちらは私の友人のラウラさん。」
リンが伯爵に私のことを紹介する。
伯爵は金髪碧眼に綺麗な男性だった。リンの従兄にこんな綺麗な人がいたのかと驚いてしまった。
「リンのご友人にこんな綺麗な人がいたんだね」
「いえ、そんな……。私だって驚きました。こんなに綺麗な男性がいらっしゃるなんて」
「実は、ラウラは婚約破棄したばかりなんですよ。伯爵、ラウラはどうですか?」
リンが余計なことを言う。
「そうなんだ。ラウラさん、会ったばかりでなんだけど、僕と結婚しませんか?」
「え?あは、そんな御冗談を」
私が少し笑いながら返すと、伯爵は真顔で、
「本気ですよ」
と言った。
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