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王立貴族学院 一年目
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年が明け、新学期が始まった。
冬期休暇中はようやく学園関係から遠ざかって過ごしたといえる。
2週間という短い期間だったけど、十分リフレッシュできたと思う。
年明け前はいろいろと悶々としつつも結局は行動に移せなかった。
でもこのままの状態で1年目を終えるのも嫌だと思った。
数か月後にはダンスパーティーがある。分からないけど何らかしらの決着をつけないといけない気がする。
そこでアイネさんの気持ちを尊重しつつ、宰相くんと向き合うことにした。
はた目から仲良く見えるというなら宰相くん自身はどう思っているのか知る必要がある。
それを判断しなければいけないか、と。やっと攻略に動き出すのだ!
新学期早々、放課後は埋まっていた。
司書係は相変わらず続いている。冬期休暇で貸出していた本の返却作業で忙しい。
骨折した生徒は完治したけど3年生だったらしく、卒業が控えているからそのままわたしが継続することになり、代わりがみつかるまでは引き受けている状態となった。
このままみつからずズルズルといきそうな気もするけどね。
宰相くんは定期的に寄付本を持ってくる。専門書もそうだけど、欠かさないのが恋愛小説だ。
いくら流行りものだからといって多い気もする。本当に読んでいるのかな?
攻略に乗り出すと決めた。今回からは積極的に話しかけなければ!
「ヴアイン様は恋愛小説が好きなのですか?」
今まで突っ込まれなかったので油断してたのか、眼鏡越しでも分かるくらい目を見開いて固まった。
「……いや、その、市井の参考までに目を通しているだけだ」
あからさまに動揺しているものの、一応は読んでいるらしい。
「令嬢は好むというが、ラペーシュ嬢はそうではないのか?」
「わ、わたしですか? わたしはそこまで……」
そう、色事よりも食い気。読みはするけどアイネさんのように熱を上げるほど興味はない。
……ん?
「そうか。……では失礼する」
宰相くんはコホンと一つ咳をすると逃げ出すかのように去っていく。
何かが引っ掛かる。何だろう、この感じ。
「寄付本ね。助かるわ」
先生が本を持って奥へ引っ込む。わたしは返却された大量の本を振り分け作業に入った。
2週間の休暇で寒い季節だからこそここで制覇したというような山積み状態の書籍たち。
隙間の空いた本棚に早く戻さないと次に借りたい人たちが探せない。
ジャンルごとに戻していきつつ、ふと手が止まる。
今は恋愛小説のコーナー。棚に戻しながら何かが引っ掛かった。
さっきからやたらとスターリンという作者名が目につく。
もちろん他の作者名の作品があるものの、比較的本が新しいのか突然降って湧いたように目立って見える。
気になり始めると本を開いてパラパラと捲り、本の貸し出し初め月を確認する。
やっぱり!!!
本が比較的新しいのも、スターリン著書が多いのも、春になってからだ。
つまりはわたしたちの入学前後の辺り、宰相くんの寄付が始まった頃だといえる!
これってもしかすると、もしかする?
宰相くんの気持ちはずっとからアイネさん、だけ?
だとすると二人は両想いなんじゃないの? 全くの障害なんてないじゃんか!!!
間にいるとされるわたしはただのお邪魔虫じゃんかあああああ!!!
それなのにアイネさんが拗らせてるってこと? いや、宰相くんが判りにくいのか?!
いや、兎にも角にもこの状況。わたしの存在でこんがらがせているのならどうにかしたい。
元々はほら、最初から乗り気じゃなかったじゃない?
宰相くんとアイネさんの関係を知ったからにはもう応援に走るよ。
はい、そんな訳でわたしは攻略を放棄しました。
ここから先はどういう結末になるのか分からない。……えっと、死なないよね?
だけど拗らせた延長上で二人の仲を裂いてまで攻略しようとは思わない。
例えバッドエンド認定されたとしても後悔はないと思う。
マリアとメアリには申し訳ないけどヒロインの座から外れるよ。
今はとりあえず二人の絆を深めさせるために邁進することに決めたからね!!!
……ってことで。
「シャルロットさん、本当にこちらをリック様に?」
「そうそう、これがアイネさん特製、オリジナルクレープだからね!」
あれから毎週末はアイネさんを誘ってわたしの家でクレープ作りを始めた。
お菓子なんて作ったことのない令嬢が四苦八苦してようやく形になってきたのだ。
決して今まで絡んできたことの仕返しをしているわけではない。ちょっと厳しく指導してるだけ。
季節は冬のピークも過ぎて春に向かって歩み出す頃。
そう、ちょうどわたしの世界ではバレンタインというものがあった時期。
ずばり、チョコレートを送って愛を告白だあああああ! お菓子作りで助太刀するぜ!
完成品はチョコ生地にチョココーティングしたフルーツとチョコホイップ、チョコソースのチョコづくし。
宰相くん、いつかはアイネさんとクレープ食べてみたかったんじゃないかと推察しちゃったんだよね。ふふ。
冬期休暇中はようやく学園関係から遠ざかって過ごしたといえる。
2週間という短い期間だったけど、十分リフレッシュできたと思う。
年明け前はいろいろと悶々としつつも結局は行動に移せなかった。
でもこのままの状態で1年目を終えるのも嫌だと思った。
数か月後にはダンスパーティーがある。分からないけど何らかしらの決着をつけないといけない気がする。
そこでアイネさんの気持ちを尊重しつつ、宰相くんと向き合うことにした。
はた目から仲良く見えるというなら宰相くん自身はどう思っているのか知る必要がある。
それを判断しなければいけないか、と。やっと攻略に動き出すのだ!
新学期早々、放課後は埋まっていた。
司書係は相変わらず続いている。冬期休暇で貸出していた本の返却作業で忙しい。
骨折した生徒は完治したけど3年生だったらしく、卒業が控えているからそのままわたしが継続することになり、代わりがみつかるまでは引き受けている状態となった。
このままみつからずズルズルといきそうな気もするけどね。
宰相くんは定期的に寄付本を持ってくる。専門書もそうだけど、欠かさないのが恋愛小説だ。
いくら流行りものだからといって多い気もする。本当に読んでいるのかな?
攻略に乗り出すと決めた。今回からは積極的に話しかけなければ!
「ヴアイン様は恋愛小説が好きなのですか?」
今まで突っ込まれなかったので油断してたのか、眼鏡越しでも分かるくらい目を見開いて固まった。
「……いや、その、市井の参考までに目を通しているだけだ」
あからさまに動揺しているものの、一応は読んでいるらしい。
「令嬢は好むというが、ラペーシュ嬢はそうではないのか?」
「わ、わたしですか? わたしはそこまで……」
そう、色事よりも食い気。読みはするけどアイネさんのように熱を上げるほど興味はない。
……ん?
「そうか。……では失礼する」
宰相くんはコホンと一つ咳をすると逃げ出すかのように去っていく。
何かが引っ掛かる。何だろう、この感じ。
「寄付本ね。助かるわ」
先生が本を持って奥へ引っ込む。わたしは返却された大量の本を振り分け作業に入った。
2週間の休暇で寒い季節だからこそここで制覇したというような山積み状態の書籍たち。
隙間の空いた本棚に早く戻さないと次に借りたい人たちが探せない。
ジャンルごとに戻していきつつ、ふと手が止まる。
今は恋愛小説のコーナー。棚に戻しながら何かが引っ掛かった。
さっきからやたらとスターリンという作者名が目につく。
もちろん他の作者名の作品があるものの、比較的本が新しいのか突然降って湧いたように目立って見える。
気になり始めると本を開いてパラパラと捲り、本の貸し出し初め月を確認する。
やっぱり!!!
本が比較的新しいのも、スターリン著書が多いのも、春になってからだ。
つまりはわたしたちの入学前後の辺り、宰相くんの寄付が始まった頃だといえる!
これってもしかすると、もしかする?
宰相くんの気持ちはずっとからアイネさん、だけ?
だとすると二人は両想いなんじゃないの? 全くの障害なんてないじゃんか!!!
間にいるとされるわたしはただのお邪魔虫じゃんかあああああ!!!
それなのにアイネさんが拗らせてるってこと? いや、宰相くんが判りにくいのか?!
いや、兎にも角にもこの状況。わたしの存在でこんがらがせているのならどうにかしたい。
元々はほら、最初から乗り気じゃなかったじゃない?
宰相くんとアイネさんの関係を知ったからにはもう応援に走るよ。
はい、そんな訳でわたしは攻略を放棄しました。
ここから先はどういう結末になるのか分からない。……えっと、死なないよね?
だけど拗らせた延長上で二人の仲を裂いてまで攻略しようとは思わない。
例えバッドエンド認定されたとしても後悔はないと思う。
マリアとメアリには申し訳ないけどヒロインの座から外れるよ。
今はとりあえず二人の絆を深めさせるために邁進することに決めたからね!!!
……ってことで。
「シャルロットさん、本当にこちらをリック様に?」
「そうそう、これがアイネさん特製、オリジナルクレープだからね!」
あれから毎週末はアイネさんを誘ってわたしの家でクレープ作りを始めた。
お菓子なんて作ったことのない令嬢が四苦八苦してようやく形になってきたのだ。
決して今まで絡んできたことの仕返しをしているわけではない。ちょっと厳しく指導してるだけ。
季節は冬のピークも過ぎて春に向かって歩み出す頃。
そう、ちょうどわたしの世界ではバレンタインというものがあった時期。
ずばり、チョコレートを送って愛を告白だあああああ! お菓子作りで助太刀するぜ!
完成品はチョコ生地にチョココーティングしたフルーツとチョコホイップ、チョコソースのチョコづくし。
宰相くん、いつかはアイネさんとクレープ食べてみたかったんじゃないかと推察しちゃったんだよね。ふふ。
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