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おぼろげな過去
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それは幼稚園の頃。
いわゆるお受験にパスした幼児が通う名門私立。
一度受かればよっぽどのことがない限りエスカレーター式で高校まであがれるという所。
俺はそんな幼稚園に通っていたおかげで今じゃなんとか高校まであがれたというところか?
そんな折、幼き知夏と出会ったのもその頃。
初めての幼稚園で席が隣同士になったのがきっかけだった。
かといって特に親しく仲良くしていたわけではなかった。
通い始めて2週間は経ったある時、普段はお昼に給食というものがあった。
ある時、園の方針で週に1度は親の手作り弁当を持参という事になった。
その日、俺は母親の作ったおにぎり弁当を抱えてお昼を迎えていた。
『お弁当をいただきましょう』という声と共に皆は広げ始める。
ところが隣の席の知夏だけが下を向いたまま、じっとしていた。
その頃の知夏は今では考えられないくらい大人しく、友達もいなかった。
その様子に気づいた普段から知夏をからかっている女が、
『あ~~~、知夏ちゃん。お弁当忘れてる~~!! いけないんだぁ~~~!!』
突然、騒ぎ立てた。知夏はただ首を振って泣いていた。
『先生があれだけ忘れないでねってゆってたのに~~!!』
『知夏ちゃんは悪い子だぁ~~!!』
女はこれ見よがしと仲間を引き連れて散々からかっていた。
騒ぎに気づいた園長が仕方がないわねと急遽近くのパン屋でパンを買ってきた。
『次は忘れないでね』と念を押しながら。
それから次の週を迎えたが、相変わらず知夏は弁当を持ってこなかった。
今度は前より大騒ぎになっていたたまれなかった。
そして翌週――。
弁当の時間が苦痛といった感じの知夏は今にも泣きそうだった。
毎週毎週、これをネタに皆にからかわれ、園長に怒られたりしていた。
俺は堪らなくなって思わず母親のおにぎりを知夏の机の上に置いた。
おかずとは別に個別に作ってあった2つのうちの1つ。
知夏はビックリした顔で俺とおにぎりを見比べていた。
『あ~~っ、今日はおにぎりを持ってきてる~~!! いっこぉ~~!!』
いつもからかってた女が驚きながら騒ぐ。
園長も何か持ってきた……ということでほっとしていた。
俺は何事もなかったかのように自分の分を食っていた。
その日の帰りの送迎バスの中で知夏が俺のそばにやってきた。
黙ったまま、昼に置いたおにぎりをすっと差し出して。
『それ、あげたんだよ。食べなかったの?』
知夏は驚いた様子で手のひらにあったおにぎりを見つめていた。
『おいしいよ。ボク、大好きなんだ。コレ』
やがてバスが止まり、俺が降りるところへ着いた。
次の日、知夏は恥ずかしそうに小さな声で言った。
『……ありがとう。おいしかった』と。
そのことを母親に告げると次の弁当日に知夏の分も作ってくれた。
かなり遠慮していたが受け取ってもらえ、それを機にどんどんと仲良くなった。
そして俺の家にも遊びに来るような仲までになったのだ。
いわゆるお受験にパスした幼児が通う名門私立。
一度受かればよっぽどのことがない限りエスカレーター式で高校まであがれるという所。
俺はそんな幼稚園に通っていたおかげで今じゃなんとか高校まであがれたというところか?
そんな折、幼き知夏と出会ったのもその頃。
初めての幼稚園で席が隣同士になったのがきっかけだった。
かといって特に親しく仲良くしていたわけではなかった。
通い始めて2週間は経ったある時、普段はお昼に給食というものがあった。
ある時、園の方針で週に1度は親の手作り弁当を持参という事になった。
その日、俺は母親の作ったおにぎり弁当を抱えてお昼を迎えていた。
『お弁当をいただきましょう』という声と共に皆は広げ始める。
ところが隣の席の知夏だけが下を向いたまま、じっとしていた。
その頃の知夏は今では考えられないくらい大人しく、友達もいなかった。
その様子に気づいた普段から知夏をからかっている女が、
『あ~~~、知夏ちゃん。お弁当忘れてる~~!! いけないんだぁ~~~!!』
突然、騒ぎ立てた。知夏はただ首を振って泣いていた。
『先生があれだけ忘れないでねってゆってたのに~~!!』
『知夏ちゃんは悪い子だぁ~~!!』
女はこれ見よがしと仲間を引き連れて散々からかっていた。
騒ぎに気づいた園長が仕方がないわねと急遽近くのパン屋でパンを買ってきた。
『次は忘れないでね』と念を押しながら。
それから次の週を迎えたが、相変わらず知夏は弁当を持ってこなかった。
今度は前より大騒ぎになっていたたまれなかった。
そして翌週――。
弁当の時間が苦痛といった感じの知夏は今にも泣きそうだった。
毎週毎週、これをネタに皆にからかわれ、園長に怒られたりしていた。
俺は堪らなくなって思わず母親のおにぎりを知夏の机の上に置いた。
おかずとは別に個別に作ってあった2つのうちの1つ。
知夏はビックリした顔で俺とおにぎりを見比べていた。
『あ~~っ、今日はおにぎりを持ってきてる~~!! いっこぉ~~!!』
いつもからかってた女が驚きながら騒ぐ。
園長も何か持ってきた……ということでほっとしていた。
俺は何事もなかったかのように自分の分を食っていた。
その日の帰りの送迎バスの中で知夏が俺のそばにやってきた。
黙ったまま、昼に置いたおにぎりをすっと差し出して。
『それ、あげたんだよ。食べなかったの?』
知夏は驚いた様子で手のひらにあったおにぎりを見つめていた。
『おいしいよ。ボク、大好きなんだ。コレ』
やがてバスが止まり、俺が降りるところへ着いた。
次の日、知夏は恥ずかしそうに小さな声で言った。
『……ありがとう。おいしかった』と。
そのことを母親に告げると次の弁当日に知夏の分も作ってくれた。
かなり遠慮していたが受け取ってもらえ、それを機にどんどんと仲良くなった。
そして俺の家にも遊びに来るような仲までになったのだ。
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