人魚姫の王子

おりのめぐむ

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見知らぬ罪と罰

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「橘川!! どういうことだ!?」

 朝から生徒指導室に呼び出しをくらった翌日。
 生徒指導の野郎が俺を一喝。
 何のことがさっぱり分からなかった。
 昨日、サボったことか? とぼんやり考えたぐらいだ。

「聞くところによるとお前が森谷を誘導して学校をサボらせたというじゃないか! 森谷はお前みたいに落ちこぼれたヤツじゃないんだ。学校きっての優秀な生徒だ。そんな生徒をお前みたいな道に引き込もうなんて巻き込まれた森谷もいい迷惑だ!!」

 怒りが収まらないといった野郎は今度は校長室へと引き連れていく。

「……大変残念ですが、こういった問題は処分せざるを得ません」

 校長は深いため息をつき、それでいて鋭い一喝を俺に下した。

「期限を設けない、停学とします」

 それはほぼ学校に来るなという命令だ。
 俺は何がそうなったのか訳が分からなかった。
 いくら弁解しようにも理由は判らず、それでいて決断は下り、誰も聞く耳持たずの状態。
 登校して1時間もしないうちに家へと戻される羽目。
 担任が自宅まで送るということになり、俺は無理矢理車に詰め込まれた。
 車を走らせてから数分後、担任がボソッと口にする。

「橘川。実は少し前からお前と森谷との噂は耳にしていたんだ」

 俺にとっては寝耳に水の話。

「生徒の一部で噂があったんだが、コーラス部顧問の右田先生が屋上でお前らを見たというんだ。まあ、森谷は歌の練習していたし、お前はそばで勉強していたから見守っていたらしい。オレも最近のお前がすごく真面目で勉強に頑張っていたから何も言わなかった。噂を耳にした教員らで奮闘はあったんだが、お前の態度から様子を伺ってたんだ。まさかこんなことになるとは本当に残念だ……」

 担任は悔しそうにハンドルをぐっと握り締める。
 まだ状況が飲み込めず、何も言えなかった。

「オレは少しでも早く停学が解けるように頑張ってみるから、橘川、お前もしっかりな」

 そう言うと担任は車を走らせ、自宅へと向かった。
 部屋にいて1時間ほど経った頃、ばたばたと慌ただしい音が響いた。
 激しくドアが開けられ、顔を紅潮させた父親が姿を現した。
 明らかに怒りに包まれているのが分かる。

「お前はどれだけ私に恥をかかせるんだ!」

 声を荒げて肩を上下に動かし、鋭く睨む。

「もう少しで警察沙汰になるところだったんだ! 今後はその女生徒と関わるな!」

 ヤツは怒鳴り散らして家を足早に出て行った。
 俺はコトの流れを把握しようと考えていた。
 確かに昨日俺は知夏と学校をサボった。が、その日だけで停学扱いか?
 オカシイ、どこかで何かが食い違っている気がする。
 どうも納得いかないと次の日、学校に行くことにした。
 朝、俺の登場に驚いた教師らはすぐさま強制送還を担任に擦り付けた。

「橘川、一体何を考えているんだ」

 担任ははぁとため息をつき、車に俺を押し入れる。

「この状況が納得いかねぇんだよ」

 ただどういう経緯でこうなったのか知りたかった。
 見かねた担任は流れを説明し始める。
 知夏に家出を促したのが俺であるということ。
 俺と知夏の噂の件で抑え付けてあった教員がここぞとばかり同調したこと。
 警察沙汰になるのを回避するために無期停学処分を下したこと。
 そしてその根源である証言は知夏の家族だったこと。

「実は森谷本人は否定してるんだが、こう騒ぎが大きくなってはなぁ……。2人でサボったことを認めたお前の件もあることだし、とりあえずほとぼりが冷めるまで、とこういう結論になったんだ」

 すまないと担任は自分の力のなさに頭を下げる。
 今までの生活態度がモノをいうらしく、自業自得というところだろうか?
 だけど俺は違うもの違うとはっきり担任に伝えた。
 その熱意が通じたのか、担任は分かったと力強く頷いた。

「全力を尽くして停学を解いてやるから、それまでは我慢してくれ」

 決意に満ちた表情で担任はその場を去っていった。
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