27 / 55
周囲の厚い壁
しおりを挟む
停学をくらってから週末を迎えた。
俺は今度から知夏と会う場所と決めていた図書館に向かった。
初めての図書館は静かな空気が流れていた。
周囲に気遣いながら俺は知夏の姿を探した。
だが見つけることは出来なかった。
いつ来るかは分からないと自分に言い聞かせ、勉強して時間を過ごした。
結局、姿を見せないまま週末は過ぎた。
そして次の週を迎えたが、俺の停学は解けることは無かった。
空の重い雲をかき分けながら眩しい日差しを照らし出しつつあるこの頃。
徐々に梅雨明けとも感じられる6月下旬になっていた。
あれから担任はちょこちょこと俺に顔を出しては謝りつつ、進まない状況を正直に打ち明け、遅れない様にと課題をたくさん持ってきていた。
俺は俺で週末は会えるかもしれないと期待しつつ、図書館へと足を運んでいた。
が、外出を止められているのか何なのか、知夏が姿を現すことは無かった。
「橘川!喜べ。ようやく停学が解けた!」
停学から2週間が過ぎ、7月に入ったある日のことだった。
「来週から学校に来れるぞ。だがすぐに学期末考査があるがな」
苦笑気味にそれでいて肩の荷が下りたという安堵感をもたらしながら担任は嬉しそうだ。
停学中は勉強に頑張っていた。その成果を担任は示していたという。
「お前の努力が伝わったんだ。よくがんばったな、橘川!」
担任は足取りも軽く俺の家を後にした。
来週から学校か、とこの時俺はいつもの生活が戻ってくるものと思っていた。
この週末も図書館へと通ったが知夏はいない。
いつものように形ばかりの勉強を済ませた後、不意に図書館の入り口近くの掲示物に目が止まった。
そのポスターは最近貼られたばかりのようで真新しかったがとっさに剥がしていた。
俺はそれを握り締め、高まる気持ちを抑えるので精一杯だった。
握り締めたポスターに掲げられた内容はとある島の音楽祭のお知らせで50周年記念として特別ゲストがくるというものだ。
その人物こそ知夏の会いたがっていた父親!!
夏休みに入った7月下旬だ!!
家に帰るとその島まで行く方法などを調べ、夜が明けるのが待ち遠しい気持ちで眠りに付いた。
停学が解けた月曜日。俺は堂々と学校へ登校した。
周囲の視線は厳しいもので腫れ物に触るかのような雰囲気。
まあ2週間ぶりだし、今までもそんなに変わったもんじゃないしな。
さして気にせず過ごしていたのだが甘かった。
疑いを未だに持っているんだと言わんばかりの教師らの態度。
そしてあんなに停学が解けたことを喜んでいた担任の監視体制。
俺が少しでもよそへ行こうとするならどこへ行く? 何をする? とチェックされる。
学校へ復帰できたがそれは条件付きなんだと肌で感じた。
特に知夏へは絶対に近づけまいとする暗黙の了解が成り立っているようだった。
どういうことだと担任に問いただそうと思っていた矢先、偶然耳にした話でどうやら圧力がかかって自分の身が危なくなったらしい。
週明けで随分と豹変した態度だったがどうすることも出来ないと分かった。
そんな風な厳しい管理下の中、あっという間に期末テストを迎えていた。
俺は日が経つにつれて焦っていた。
これまで知夏と接触を取ろうと何度か試みたのだがガードが徹底していた。
校内での俺の移動はほとんど担任同行。Aクラスに近づこうならその他の教師の妨害。
実力行使するかと休日に意気込めば何故か知夏の家の付近にパトカーが巡回。
とにかく絶対に会わせないという圧力が掛かっていた。
テスト期間に入り、夏休みまでのカウントダウンが始まっていた。
親父に会わせてやろうと計画したことも伝えられず時間だけが過ぎる。
知夏はあの島に父親が来ることすら知らないはずだ。
それさえも伝えられない現状に嫌気がさす。
だが無常にも時間が過ぎてテスト期間は終了し、学校は来週までとなった。
俺は今度から知夏と会う場所と決めていた図書館に向かった。
初めての図書館は静かな空気が流れていた。
周囲に気遣いながら俺は知夏の姿を探した。
だが見つけることは出来なかった。
いつ来るかは分からないと自分に言い聞かせ、勉強して時間を過ごした。
結局、姿を見せないまま週末は過ぎた。
そして次の週を迎えたが、俺の停学は解けることは無かった。
空の重い雲をかき分けながら眩しい日差しを照らし出しつつあるこの頃。
徐々に梅雨明けとも感じられる6月下旬になっていた。
あれから担任はちょこちょこと俺に顔を出しては謝りつつ、進まない状況を正直に打ち明け、遅れない様にと課題をたくさん持ってきていた。
俺は俺で週末は会えるかもしれないと期待しつつ、図書館へと足を運んでいた。
が、外出を止められているのか何なのか、知夏が姿を現すことは無かった。
「橘川!喜べ。ようやく停学が解けた!」
停学から2週間が過ぎ、7月に入ったある日のことだった。
「来週から学校に来れるぞ。だがすぐに学期末考査があるがな」
苦笑気味にそれでいて肩の荷が下りたという安堵感をもたらしながら担任は嬉しそうだ。
停学中は勉強に頑張っていた。その成果を担任は示していたという。
「お前の努力が伝わったんだ。よくがんばったな、橘川!」
担任は足取りも軽く俺の家を後にした。
来週から学校か、とこの時俺はいつもの生活が戻ってくるものと思っていた。
この週末も図書館へと通ったが知夏はいない。
いつものように形ばかりの勉強を済ませた後、不意に図書館の入り口近くの掲示物に目が止まった。
そのポスターは最近貼られたばかりのようで真新しかったがとっさに剥がしていた。
俺はそれを握り締め、高まる気持ちを抑えるので精一杯だった。
握り締めたポスターに掲げられた内容はとある島の音楽祭のお知らせで50周年記念として特別ゲストがくるというものだ。
その人物こそ知夏の会いたがっていた父親!!
夏休みに入った7月下旬だ!!
家に帰るとその島まで行く方法などを調べ、夜が明けるのが待ち遠しい気持ちで眠りに付いた。
停学が解けた月曜日。俺は堂々と学校へ登校した。
周囲の視線は厳しいもので腫れ物に触るかのような雰囲気。
まあ2週間ぶりだし、今までもそんなに変わったもんじゃないしな。
さして気にせず過ごしていたのだが甘かった。
疑いを未だに持っているんだと言わんばかりの教師らの態度。
そしてあんなに停学が解けたことを喜んでいた担任の監視体制。
俺が少しでもよそへ行こうとするならどこへ行く? 何をする? とチェックされる。
学校へ復帰できたがそれは条件付きなんだと肌で感じた。
特に知夏へは絶対に近づけまいとする暗黙の了解が成り立っているようだった。
どういうことだと担任に問いただそうと思っていた矢先、偶然耳にした話でどうやら圧力がかかって自分の身が危なくなったらしい。
週明けで随分と豹変した態度だったがどうすることも出来ないと分かった。
そんな風な厳しい管理下の中、あっという間に期末テストを迎えていた。
俺は日が経つにつれて焦っていた。
これまで知夏と接触を取ろうと何度か試みたのだがガードが徹底していた。
校内での俺の移動はほとんど担任同行。Aクラスに近づこうならその他の教師の妨害。
実力行使するかと休日に意気込めば何故か知夏の家の付近にパトカーが巡回。
とにかく絶対に会わせないという圧力が掛かっていた。
テスト期間に入り、夏休みまでのカウントダウンが始まっていた。
親父に会わせてやろうと計画したことも伝えられず時間だけが過ぎる。
知夏はあの島に父親が来ることすら知らないはずだ。
それさえも伝えられない現状に嫌気がさす。
だが無常にも時間が過ぎてテスト期間は終了し、学校は来週までとなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる