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蘇る気持ち
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家の中に入ると見事なまでにモノが無くなっていた。
家具から家電までじっくりと選別して運び出していた様子だ。
今考えると思い当たる節があった。
俺が家に居る時、アイツは下でごそごそとやってたな。
ということは計画的だったのか、アイツめ。
あの日、出て行ったきりの自分の部屋へと向かう。
中に入ると足の踏み場もないくらいめちゃくちゃに荒らされていた。
どうやら物色したと見られ、特に見当たらなかったためか電化製品のみが無くなっていた。
その光景を見て、フッと笑いが込み上げる。
知夏の居場所にピンときて家を飛び出す前にありったけの金は持ち出したっけ。
金目のモノが何もなくてムカついたんだろうな、アイツ。
ほんの少しだけ勝った気がしたが現状は見るも無残。
ともかく散乱した部屋を片付けることにした。
片手での作業はやり辛いし、時間がかかる。
8月の後半に入ったとはいえ、季節は夏。
まだまだ暑いし、部屋のクーラーはパクられていた。
どうにかならないかと窓を開けているが風など入ってこない。
汗をかきながらせめて足の踏み場を作ろうと掻き分ける。
全く、俺が居ないのをいいことにここまでやるか。
この徹底ぶりには呆れてしまう。
備え付けのクローゼットや引き出しの中身全てを引っ張り出され、本棚や机の引き出しなども開けっ広げた状態。
ご丁寧にパイプベッドのマットレスまでも剥がしてあった。
それらを元のように戻すとなると今すぐには無理。
とりあえず床に散らばったものを隅の方へ押しやって山積みし、ベッドだけは元に戻した。
ようやく座るスペースだけは確保し、腰掛けた。
時計を見ると夕方4時過ぎ。
ベッドに座ってじっとしていると開け放したドアと窓から僅かながら風が入ってくる。
その心地よさについ横になると眠りに落ちていた。
目が覚めた時はすっかり日が暮れていた。
とはいえ夏の夜はほんのり明るい。
薄明かりの中、部屋のスイッチを探し、照明をつける。
明かりは室内を照らしだし、雑然とした場所も惹きたてた。
思わず苦笑し、ベッドに座り直そうと戻りかけた時だった。
山積みになった一部から1冊のノートが目に付く。
それは知夏とやり取りしたあの勉強ノート、だった。
それを引っ張り出し掴むとベッドに戻った。
何の変哲のない表紙をペラリとめくると懐かしい文字が現れる。
それは問題を解くためのヒントだったり、解説だったりと内容的には堅苦しい。
だが解りやすいようにと思いを込めたものだった。
不意にこの頃を思い出し、忙しかった知夏が合間をぬって俺のためにしてくれたものだと改めて確信する。
「バカだよな……」
俺は知夏を求め、知夏は俺を求めてくれた。
それだけで充分だったはずだ。
なのに俺は逃げようとしていた。
俺にとって知夏の存在、そのものが大事なのに。
知夏も知夏を取り巻く環境も受け入れなきゃいけないと分かっていたつもりだった。
実際に直面して俺自身がまだ準備が出来てなかったと悟った。
が、覚悟が出来た。
どんなことが待っていようと俺は知夏のそばを離れない。
そう、決意が固まった。
家具から家電までじっくりと選別して運び出していた様子だ。
今考えると思い当たる節があった。
俺が家に居る時、アイツは下でごそごそとやってたな。
ということは計画的だったのか、アイツめ。
あの日、出て行ったきりの自分の部屋へと向かう。
中に入ると足の踏み場もないくらいめちゃくちゃに荒らされていた。
どうやら物色したと見られ、特に見当たらなかったためか電化製品のみが無くなっていた。
その光景を見て、フッと笑いが込み上げる。
知夏の居場所にピンときて家を飛び出す前にありったけの金は持ち出したっけ。
金目のモノが何もなくてムカついたんだろうな、アイツ。
ほんの少しだけ勝った気がしたが現状は見るも無残。
ともかく散乱した部屋を片付けることにした。
片手での作業はやり辛いし、時間がかかる。
8月の後半に入ったとはいえ、季節は夏。
まだまだ暑いし、部屋のクーラーはパクられていた。
どうにかならないかと窓を開けているが風など入ってこない。
汗をかきながらせめて足の踏み場を作ろうと掻き分ける。
全く、俺が居ないのをいいことにここまでやるか。
この徹底ぶりには呆れてしまう。
備え付けのクローゼットや引き出しの中身全てを引っ張り出され、本棚や机の引き出しなども開けっ広げた状態。
ご丁寧にパイプベッドのマットレスまでも剥がしてあった。
それらを元のように戻すとなると今すぐには無理。
とりあえず床に散らばったものを隅の方へ押しやって山積みし、ベッドだけは元に戻した。
ようやく座るスペースだけは確保し、腰掛けた。
時計を見ると夕方4時過ぎ。
ベッドに座ってじっとしていると開け放したドアと窓から僅かながら風が入ってくる。
その心地よさについ横になると眠りに落ちていた。
目が覚めた時はすっかり日が暮れていた。
とはいえ夏の夜はほんのり明るい。
薄明かりの中、部屋のスイッチを探し、照明をつける。
明かりは室内を照らしだし、雑然とした場所も惹きたてた。
思わず苦笑し、ベッドに座り直そうと戻りかけた時だった。
山積みになった一部から1冊のノートが目に付く。
それは知夏とやり取りしたあの勉強ノート、だった。
それを引っ張り出し掴むとベッドに戻った。
何の変哲のない表紙をペラリとめくると懐かしい文字が現れる。
それは問題を解くためのヒントだったり、解説だったりと内容的には堅苦しい。
だが解りやすいようにと思いを込めたものだった。
不意にこの頃を思い出し、忙しかった知夏が合間をぬって俺のためにしてくれたものだと改めて確信する。
「バカだよな……」
俺は知夏を求め、知夏は俺を求めてくれた。
それだけで充分だったはずだ。
なのに俺は逃げようとしていた。
俺にとって知夏の存在、そのものが大事なのに。
知夏も知夏を取り巻く環境も受け入れなきゃいけないと分かっていたつもりだった。
実際に直面して俺自身がまだ準備が出来てなかったと悟った。
が、覚悟が出来た。
どんなことが待っていようと俺は知夏のそばを離れない。
そう、決意が固まった。
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