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王子の誓い
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さっきは拒絶されたと思えた病室のドア。
今では小さな希望へと導いてくれるスタートラインだ。
撃沈していた気持ちはもうキレイに解消した。
俺に出来ること、それをやることだ。
再び、ドアをスライドさせる。
すると驚いたようにそれでいて嫌悪感むき出しで先程の知夏の姉貴が居た。
2度と来るなと言われた矢先、また戻ってきてるのだから当たり前だろうが。
「来ないでとお伝えしたはずですよね?」
荒々しい口調で睨みつけながらドアの方へと近づいてくる。
「いいえ、これから毎日来ます」
俺は病室内に踏み込みながら強気に答えた。
姉貴は一瞬、立ち止まったがこれ以上中に入らせまいと遮っていた。
「これから俺が出来ることを知夏にさせてもらうんです」
声を張り上げ、決意をはっきりと述べると唖然と姉貴が立ち止まる。
その隙に知夏のベッドサイドへと近づいた。
知夏は何ともいえない表情で俺を見つめていた。
「知夏、ゴメン。本当にゴメン。全てを知った今、俺は知夏に出来ることがしたいんだ。今まで知夏が俺にしてくれたように、今度は俺なりに知夏にしてあげたいんだ。知夏みたいに何でも出来るような男じゃないし、不器用だから完璧じゃないけど、努力するから」
俺の目に知夏の眼差しが焼きつく。俺も真剣に見つめ返す。
すると瞳が揺るいだかと思ったらスッと頬を伝って涙が溢れ出す。
そしてかすかに動く唇でありがとうと言った気がした。
俺は頷くと知夏を抱きしめた。
「……ふざけないでよ」
背後から突然、低い声が響いてきた。
振り返ると怒りを露わにした知夏の姉貴の姿があった。
「知夏はもう2度と歩けないし、話せないのよ!!」
肩を震わし、鬼のような形相で俺に罵声を浴びせる。
「完治なんてしないし、一生このままよ!」
「だからっ!」
俺はヒステリックになる姉貴の言葉を遮るように叫んだ。
「だから、これ以上悪くならないように俺がするんだ!!」
姉貴はその言葉に驚いた表情をした。
「歩けなくてもしゃべれなくてもそれ以上悪化しないように俺がするんだ! 完治しなくても一生このままでも俺が! ずっと! どんな風でも知夏は知夏だから!!」
反論しようにも言葉が出てこないといった感じで黙ったまま、姉貴は俺を見つめた。
しばらくそのまま沈黙が続いた。
「……勝手にすれば。どうせ口だけに決まってるんだから……」
姉貴は投げやりな態度でそう言い捨てると病室を出ていった。
再び知夏の方に振り向く。
知夏は何度も頷きながら笑みをこぼし、泣いていた。
「俺、本気だから……」
頬に伝った涙を拭いながら知夏に誓いのキスをした。
時間が経つのはあっという間だった。
あれからすぐに昼食だ、検温だ、夕食だと慌しく、面会の時間が過ぎ去った。
出来ることするっていっても右腕はまだ不完全で正直役立ってなかった。
そんな様子に知夏は笑い、俺は自己嫌悪に陥った。
「……役立たないけど、また明日来るから」
俺の言葉にまた知夏はまた笑い、俺は病室を後にした。
「さてと」
廊下に出てすぐ、入院していた階のナースステーションへと向かう。
さっきの看護師から口うるさい荒木が用があるから帰りに寄れと伝言があった。
全く退院したのは昨日なんだから何があるってんだ?
不審に思いながらも荒木を訪ねる。
「本当はこんなことしないのよ」
口うるさい看護師は少し迷惑そうに1枚の紙を差し出した。
「昨日、退院した後に橘川さん宛に届いたのよ」
書留扱いの不在通知を預かってくれたようだ。
「連絡が取れないっていうから仕方なしね。今回限りですからね」
念を押されてそれじゃと机に戻っていった。
病院を出ると早速郵便局の夜間窓口へと向かった。
何が送られてきてるんだ? とヤツからの差し出しに嫌悪を抱いた。
受け取って開封してみると中からお札の束が出てきた。
数えてみると10万円。
「何考えてんだよ、ヤツは?」
包みを握り締めながら不可解な状態を飲み込めずにいた。
今では小さな希望へと導いてくれるスタートラインだ。
撃沈していた気持ちはもうキレイに解消した。
俺に出来ること、それをやることだ。
再び、ドアをスライドさせる。
すると驚いたようにそれでいて嫌悪感むき出しで先程の知夏の姉貴が居た。
2度と来るなと言われた矢先、また戻ってきてるのだから当たり前だろうが。
「来ないでとお伝えしたはずですよね?」
荒々しい口調で睨みつけながらドアの方へと近づいてくる。
「いいえ、これから毎日来ます」
俺は病室内に踏み込みながら強気に答えた。
姉貴は一瞬、立ち止まったがこれ以上中に入らせまいと遮っていた。
「これから俺が出来ることを知夏にさせてもらうんです」
声を張り上げ、決意をはっきりと述べると唖然と姉貴が立ち止まる。
その隙に知夏のベッドサイドへと近づいた。
知夏は何ともいえない表情で俺を見つめていた。
「知夏、ゴメン。本当にゴメン。全てを知った今、俺は知夏に出来ることがしたいんだ。今まで知夏が俺にしてくれたように、今度は俺なりに知夏にしてあげたいんだ。知夏みたいに何でも出来るような男じゃないし、不器用だから完璧じゃないけど、努力するから」
俺の目に知夏の眼差しが焼きつく。俺も真剣に見つめ返す。
すると瞳が揺るいだかと思ったらスッと頬を伝って涙が溢れ出す。
そしてかすかに動く唇でありがとうと言った気がした。
俺は頷くと知夏を抱きしめた。
「……ふざけないでよ」
背後から突然、低い声が響いてきた。
振り返ると怒りを露わにした知夏の姉貴の姿があった。
「知夏はもう2度と歩けないし、話せないのよ!!」
肩を震わし、鬼のような形相で俺に罵声を浴びせる。
「完治なんてしないし、一生このままよ!」
「だからっ!」
俺はヒステリックになる姉貴の言葉を遮るように叫んだ。
「だから、これ以上悪くならないように俺がするんだ!!」
姉貴はその言葉に驚いた表情をした。
「歩けなくてもしゃべれなくてもそれ以上悪化しないように俺がするんだ! 完治しなくても一生このままでも俺が! ずっと! どんな風でも知夏は知夏だから!!」
反論しようにも言葉が出てこないといった感じで黙ったまま、姉貴は俺を見つめた。
しばらくそのまま沈黙が続いた。
「……勝手にすれば。どうせ口だけに決まってるんだから……」
姉貴は投げやりな態度でそう言い捨てると病室を出ていった。
再び知夏の方に振り向く。
知夏は何度も頷きながら笑みをこぼし、泣いていた。
「俺、本気だから……」
頬に伝った涙を拭いながら知夏に誓いのキスをした。
時間が経つのはあっという間だった。
あれからすぐに昼食だ、検温だ、夕食だと慌しく、面会の時間が過ぎ去った。
出来ることするっていっても右腕はまだ不完全で正直役立ってなかった。
そんな様子に知夏は笑い、俺は自己嫌悪に陥った。
「……役立たないけど、また明日来るから」
俺の言葉にまた知夏はまた笑い、俺は病室を後にした。
「さてと」
廊下に出てすぐ、入院していた階のナースステーションへと向かう。
さっきの看護師から口うるさい荒木が用があるから帰りに寄れと伝言があった。
全く退院したのは昨日なんだから何があるってんだ?
不審に思いながらも荒木を訪ねる。
「本当はこんなことしないのよ」
口うるさい看護師は少し迷惑そうに1枚の紙を差し出した。
「昨日、退院した後に橘川さん宛に届いたのよ」
書留扱いの不在通知を預かってくれたようだ。
「連絡が取れないっていうから仕方なしね。今回限りですからね」
念を押されてそれじゃと机に戻っていった。
病院を出ると早速郵便局の夜間窓口へと向かった。
何が送られてきてるんだ? とヤツからの差し出しに嫌悪を抱いた。
受け取って開封してみると中からお札の束が出てきた。
数えてみると10万円。
「何考えてんだよ、ヤツは?」
包みを握り締めながら不可解な状態を飲み込めずにいた。
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