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可能性の灯火
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朝晩の温度差を感じられる夏の終わりと秋の始まりの季節。
夏休みが終わり、気だるい感じの2学期が始まった時期。
気づけば9月になっていた。
誓いをたてた日から自分のリハビリをしながら毎日知夏の元へ通った。
そのおかげで随分とマシになった気がする。
右腕は完治とはいえないが、ほとんど動くようになったし、知夏への手伝いもそれなりに。
ただ相変わらず荒れ果てた家には一人で例のお金もだんだん底を付いてきていた。
どうにかしないといけないと思いつつ、大半は病院で過ごす毎日だ。
そんな様子の俺に知夏は何か伝えたいような顔をしていたが理解できずに悔しい思いを抱えていた。
「なあ、橘川」
リハビリ室で高野が不意に声をかけてきた。
「お前の彼女、どんな感じだ?」
時折、自分のリハビリを兼ねて知夏へのリハビリ法を訊きにここへ通っていた。
「高野に言われたとおり、やってるだけで特に」
知夏はリハビリ室に通うほど、病状が見込まれていない。
身体に小さな傷跡を残しつつ、それでもようやく全体の包帯が取れたのだ。
長かった髪はケガのせいでばっさりと切られ今ではようやく伸び始めた感じだ。
下半身を中心に動かすことが出来ず、かろうじて上半身がいう事をきくらしい。
せめて寝たきりにならないようにベッドの背もたれに支えられながら起き上がる日々。
薬の数もまだまだ減らない。食事も流動食止まりで退院には程遠い。
意識が戻ってからめまぐるしく回復した後は平行状態らしい。
だけどいつまでも入院してる訳ではない。
完治しないと分かっていてもいつかは来る退院の日までの治療は続く。
「そっか。がんばってるんだな」
ニヤニヤ笑う高野に俺はピンときた。
「何だよ?」
「いや……」
「気になるだろ!」
「うん。実は、俺の彼女、作業療法士やっているんだけどな。お前の彼女のことを話したんだ。勝手に話したことは悪かったけど頑張ってるお前を見てたらどうにかならないかなと思ってさ」
高野は申し訳無さそうに一息つくと、言葉を続けた。
「そしたらすごいいい事を聞いた」
得意げな顔を見ていたら本当にいいことのような気がする。
「作業療法士ってのは障害などを持つ患者の社会復帰を手伝う仕事をしてるんだ」
障害という言葉にズキンとしつつも高野の言葉を待つ。
「それで話せないという現状を乗り切るのに手話だとかあるんだがそれが無理だと伝えた。そしたら文字の方はどう?って聞かれた。パソコンなどのキーボードで文字を打てば会話ができる……ってな」
文字!? キーボード!?
その言葉に電撃が走る。
そんなこと、考えもしなかった!
「た、高野!!」
あまりにも衝撃的な内容にただただ興奮した。
知夏はかろうじて上半身が動かせる。
手の方も指までは動かすのは無理だが握る力はある。
高野はコクンと頷いた。
「やってみる、価値はあるだろ?」
もしかしたら知夏と話すことが出来るかもしれない!
その可能性を信じたい。
「やるよ、俺! どうすればいい?」
マンネリ化しつつあった闘病生活にまた一つ光が見えた。
夏休みが終わり、気だるい感じの2学期が始まった時期。
気づけば9月になっていた。
誓いをたてた日から自分のリハビリをしながら毎日知夏の元へ通った。
そのおかげで随分とマシになった気がする。
右腕は完治とはいえないが、ほとんど動くようになったし、知夏への手伝いもそれなりに。
ただ相変わらず荒れ果てた家には一人で例のお金もだんだん底を付いてきていた。
どうにかしないといけないと思いつつ、大半は病院で過ごす毎日だ。
そんな様子の俺に知夏は何か伝えたいような顔をしていたが理解できずに悔しい思いを抱えていた。
「なあ、橘川」
リハビリ室で高野が不意に声をかけてきた。
「お前の彼女、どんな感じだ?」
時折、自分のリハビリを兼ねて知夏へのリハビリ法を訊きにここへ通っていた。
「高野に言われたとおり、やってるだけで特に」
知夏はリハビリ室に通うほど、病状が見込まれていない。
身体に小さな傷跡を残しつつ、それでもようやく全体の包帯が取れたのだ。
長かった髪はケガのせいでばっさりと切られ今ではようやく伸び始めた感じだ。
下半身を中心に動かすことが出来ず、かろうじて上半身がいう事をきくらしい。
せめて寝たきりにならないようにベッドの背もたれに支えられながら起き上がる日々。
薬の数もまだまだ減らない。食事も流動食止まりで退院には程遠い。
意識が戻ってからめまぐるしく回復した後は平行状態らしい。
だけどいつまでも入院してる訳ではない。
完治しないと分かっていてもいつかは来る退院の日までの治療は続く。
「そっか。がんばってるんだな」
ニヤニヤ笑う高野に俺はピンときた。
「何だよ?」
「いや……」
「気になるだろ!」
「うん。実は、俺の彼女、作業療法士やっているんだけどな。お前の彼女のことを話したんだ。勝手に話したことは悪かったけど頑張ってるお前を見てたらどうにかならないかなと思ってさ」
高野は申し訳無さそうに一息つくと、言葉を続けた。
「そしたらすごいいい事を聞いた」
得意げな顔を見ていたら本当にいいことのような気がする。
「作業療法士ってのは障害などを持つ患者の社会復帰を手伝う仕事をしてるんだ」
障害という言葉にズキンとしつつも高野の言葉を待つ。
「それで話せないという現状を乗り切るのに手話だとかあるんだがそれが無理だと伝えた。そしたら文字の方はどう?って聞かれた。パソコンなどのキーボードで文字を打てば会話ができる……ってな」
文字!? キーボード!?
その言葉に電撃が走る。
そんなこと、考えもしなかった!
「た、高野!!」
あまりにも衝撃的な内容にただただ興奮した。
知夏はかろうじて上半身が動かせる。
手の方も指までは動かすのは無理だが握る力はある。
高野はコクンと頷いた。
「やってみる、価値はあるだろ?」
もしかしたら知夏と話すことが出来るかもしれない!
その可能性を信じたい。
「やるよ、俺! どうすればいい?」
マンネリ化しつつあった闘病生活にまた一つ光が見えた。
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