眠り姫のキセキ

おりのめぐむ

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眠りの途中

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 残暑の厳しい2学期の始まり。
 慌ただしい学校生活の始まり。
 長期休暇の気分が抜けきれない9月。
 私は何も変わらない。

 何年、何ヶ月、何日、何時間、何分、何秒。
 たくさんの時の経過があったとしても、
 生きてるのか死んでいるのか分からなかった。

 身体的には15歳の身体。
 意識的には高校生。
 だけど感覚的には?

 常に頭の中では靄がかかったようで、
 ぼんやりとしてはかなげで、
 朦朧とした感じ。

 目を見開いていても、
 言葉を発していても、
 どこか遠い出来事のように。

 私は眠ったまま。
 ずっとずっと眠ったまま。
 いつか目覚める時がくるまで、
 眠ったまま、なんだ…。


「宮村月乃、話がある」

 新学期早々の呼び出し。
 今朝、紹介があったばかりの産休代理の新担任に。
 冷ややかな目つきが印象的な先生。

「橘川先生。宮村は仕方ないんですよ」

 職員室で顔見知りの教師が口を挟む。
 先生の前に立ちすくむ私を見て。

「病気なんですよ、宮村は…」

 原因は居眠り。
 無視するわけでも、悪気があるわけでもない。
 ふとした時に襲われてしまう睡魔。
 これは薬の副作用によるため。

「悪かった」

 尖った視線が少し切なげに見えた。
 それが私と彼との出会い。
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