UNLUCKY?

おりのめぐむ

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不快な同居の始まり 1 ~波乱の幕開け~

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 何で今日はあいつの授業があるんだろう。
 無視しようにも残念なことに授業前の召使業務があった。
 嫌でも顔を突き合わさなければならない。
 こうなったら即効で突破するしかないと生物準備室へと向かった。
 ノックして中へ入る。
 あれ? 高山のヤツがいない。
 気合入れてた分、ちょっと拍子抜け。

「倉持さん、ご苦労様」

 実習助手の笹川が気遣うような声で話しかける。
 今日はいるのか。
 笹川はすごい美人なのに校内に居る時は長い髪をひとつに束ねて地味にしている。
 だけど放課後になると綺麗な顔立ちをアピールするかのように濃い化粧をし、ウエーブのかかった髪を開放。
 まるで今から夜のお仕事にでも行くの? という大変身を遂げる。
 徳栄は勤務時間さえちゃんとやってれば何も強要されないってとこ。
 だから個性の強い教員が多いってこと。
 こういうのも悪評のひとつの原因だと思うけどね。
 高山の机に向かうときちんと授業道具一式が用意されている。

「今日はそれだけを運んでおいてって伝言があったわ」

「そうですか? わかりました。では失礼します」

 準備室を後にするとさっさと教室に向かった。
 顔を合わせなくてラッキー! なんてほくそ笑みながら。
 チャイムが鳴り、授業開始の合図。
 けど高山は5分遅れでやってきた。

「悪い悪い、所用で少し遅れた」

 高山ファンが来ないと騒ぎ出していた直後だった。
 教師が遅刻なんて最悪じゃん!
 呆れた気持ちでその光景を眺めてると高山と目が合う。
 いつもと変わりなくにっこりと微笑んできた。
 昨日の今日でよく平然としていられるな、このエロ教師め。
 私は思いっきりフン! と目を逸らした。
 授業中はほとんど無視に徹していた。
 訊いても訊かなくても大して変わりない授業だしね。
 さすがに読書はしないけど、教科書をじっくり読むぐらいしか時間がつぶせない。
 終了間際、対策プリントが配られ、嫌なことを思い出す。
 あの時は何が起こったのか冷静に対応しきれなくて頭の片隅で圧縮されている。
 だけど感触だけは覚えていた。ほんの一瞬の柔らかなタッチ。
 ただ唇が触れただけ。そう、それだけだ。
 だからあれはキスでも何でもない。予測不能の事故だ。
 なのに高山のヤロー、家に押しかけてまで再度迫るなんて!
 いくら私が気に食わないからってそこまでするか? 普通。
 どうせからかって楽しんでるんだろうけど、その手に乗るかってーの。

「よし、終わるぞ~」

 高山の声にハッとなり、授業が終わったんだと気づく。
 とりあえず今週分の授業は終了し、来週まで高山と顔を合わせなくて済むんだ♪
 ほっと一安心で学校から出る。
 帰宅途中、またもや井戸端会議に出くわす。
 噂好きの奥様方、梅雨の小休止をくまなく利用してるんだわ。
 昨日と変わらないように今日は私からご挨拶。

「…あ、あら未来ちゃん。お帰りなさい」

「きょ、今日は天気がよくて良かったわね」

「ホントですわね。じゃあ未来ちゃん、気をつけて」

 遠慮がちに話しかける奥様方、いそいそと切り上げる。

「は? はい。それでは失礼します」

 明らかに違う態度。なんか変、昨日とぜんぜん違う。
 不審に思いながらも家に入ると、

「未来、お帰りなさい~~♪」

 ハハさんと何故かチチさんが二人揃ってにっこりと笑いながらお出迎え。

「…た、ただいま」

 両親の登場に驚きつつも靴を脱いで上がる。

「未来、こっちでお茶にしようか?」

 チチさんがニコニコとリビングルームへと促す。
 つーか会社はどうしたのよ、チチさん?

「着替えてからにする」

 疑念を抱きつつ、そう言い渡すと部屋へと向かった。
 向かったはず、だった…。
 ドアを開けると6畳ひと間のがらんとした空間が広がってるのみ。
 住み慣れた空間が、ない!
 学校に行くまでには存在していた机や椅子やベッドやらあらゆるものが部屋にない!
 こ、これってどういうことぉ~~?
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