UNLUCKY?

おりのめぐむ

文字の大きさ
22 / 49

不安な疑惑の準備期間 2 ~ご優待キャンペーン?!~

しおりを挟む
 テスト前だろうがテスト中だろうが私の生活に変わりはない。
 当たり前のように英語漬けの日々で家に居る時は高山とほぼ一緒。
 少しは気をつかって一人にしてくれっつーの!
 だけど高山曰く、

「ハンデを付けてこそみんなと同じ苦しみを味わえるだろ?」

 はぁ? 意味不明。ハンデって何だっつーの?!
 ここんところまともに授業を聞いてなかったからテスト範囲もろくに把握してなかったんだし。
 トップは狙ってないにしろ、確認ぐらいはさせろって話。
 ま、そんな感じで受けたテスト。
 英語と家庭科は異常に手ごたえを感じてしまった。
 それ以外はいつもどおりと変わらなかったけどね。

「憎たらしいぐらいの頭だな」

 1学期の一大イベントのテストも終了し、採点された答案が返される頃となった金曜日。
 召使業務で生物準備室に赴いた私の顔を見るなり高山がそう言う。
 何なんだ? いきなり。

「文句の付けようがないパーフェクトな解答。ハンデがあっても満点を取るなんて可愛げのないヤツ」

 高山は少し残念そうな顔をしてチラリと笹川の顔を見る。
 相変わらず地味めを装う笹川はクスリと笑うと、

「倉持さんは本当に頭がいいんですよ、高山センセ」

 そのやり取りが何となく親しげな雰囲気を感じる。

「…だから余計に邪魔したくなるんだよな」

 ニヤリと笑いながら横目で見、何かを企んでる様子。
 冗談じゃないっ! 100点取って教師から反感を買うのって見当違いだろう~がっ!

「倉持、とりあえず、コレ、運んどいてくれ」

 教材道具一式+テストの答案を渡されるとそそくさと準備室から退出。
 全く、嫌な予感がするなぁと思いつつ、教室へと向かった。


「倉持さん、ちょっといいかな?」

 放課後、関口良子が遠慮気味に声をかけてきた。
 HR終了後の教室は3分の2があっという間に姿を消す。
 何故だか一部は教室に残って雑談をだらだらとしている。

「あのね、今回のテスト、手ごたえがよくって戻ってきた答案も点数が良かったんだ」

 嬉しそうに語りつつも時計を気にして何だか慌てている気配。

「それでいつもお礼しなきゃいけないなって思ってて今頃になってしまったけど、これ…」

 目の前に差し出された封筒。

「ハンバーガーセットの優待券、よければ使ってね。…それじゃあ、さようなら」

 ほぼ強引に渡されると急いだ様子で教室を出て行く。
 あっという間の出来事で何も言えずに受け取る形となる。
 参ったね、こりゃ…。
 封筒を握り締めたまま、高山の勤務終了まで時間をつぶしている図書館へと向かった。
 この学校で唯一認めているのが施設・設備の良さ。
 お金をかけていると噂されてるとおり、充実している。
 その一環として図書館もいえる。
 豊富な所蔵数を誇り、品揃えもバラエティに富んでいる。
 入学してからほぼ毎日、顔を出しているといっても過言じゃない。
 不満の塊である学校生活のオアシスといえるお気に入りの場所かもしれない。
 おまけに個室まで完備してるから邪魔されずに一人きりなれる。
 一人分の机と椅子が納まってるだけのスペース。
 利用者がいない時は必ずそこを借りて有意義に過ごさせてもらってる。
 今日は週末のため、数少ない個室が開いててラッキー!
 一部だけフィルムが張られたガラスのドアで覗き込めば中の様子が見える構造。
 どっちにしろドアに背を向けて座るから本を読んでる時は気にならないし。
 早速手頃な本を一冊取り、カバンと封筒を机に置くとページをめくった。
 待ち合わせまで何とか一人きりの時間を持つことができてるってコトが唯一の救い。
 時間がきたら教員の駐車場に向かってそこで高山の車に乗り込むのがいつもの習慣。
 家に帰ればお決まりのパターン。買い物、食事作り、英会話などなど。
 とりあえずは夏休みが始まるまで高山のしがらみから逃れられない。
 けど短期留学から戻ったら絶対に講師変えろ~~! と訴えてやるんだからっ!

「…何だ、コレ?」

 不意に背後から聞き慣れた声が聞こえる。
 振り向かなくても分かる、それが誰かって。
 だって私の椅子の高さと同じ姿勢で肩に手を回しているから!!

「帰るにはまだ早い時間じゃないの?」

 手を振り払いながら動けないので斜め見の形で眼鏡越しに睨む。

「することがないから時間まで倉持と居ようと思って」

 悪びれずに片方の手で机の上にある封筒を掴む。

「ちょっと勝手に触らないでよ!」

 狭い個室内で身動きが取れずじまいの最中、チラリと見れば高山は中身を確認中。

「…ハンバーガーセットの優待券? しかも2枚。…よし、明日のお昼はコレで決まりだな!」

 高山は嬉しそうに微笑むとそっと私の髪に触れる。

「伸ばしっ放しみたいだし、ちょうどいい機会だな」

 一人で納得するように呟くと時間まで髪の毛を編んだり、ひねったり。
 結局、勝手にいじって完全に私の読書時間の邪魔しやがった!! むかっ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...