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不安な疑惑の準備期間 3 ~パスポート・デート前編~
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「高山様、如何でしょうか?」
クルリと私が座っていた椅子が回され、雑誌を読んでいた高山と目が合う。
「さすが須崎さんって感じだね。ベースはそれで充分。あとはお出かけ用にアレンジしてもらえるかな?」
「かしこまりました」
ここは高山の行きつけの理容院らしい。
完全予約制で私の知らない芸能人もご用達なんだとか。
そんな場所で伸ばしっ放しの髪をカットする羽目になった。
どんな頭にされるかわかりゃしないと猛烈に反発して現状維持のままってことでようやく了承。
確かに腕はいいらしくって思ったより切った量は多かったのにパッと見は変わらない。
だけど信じられないことにこのお方はその後、とんでもない変化をもたらした。
肩までのずっしり重いストレートって印象強い私の髪型を華やかに大変身。
鏡に映る私の姿は見たことのないお嬢様風。
毛先だけをゆるく巻いた一日限りのふんわりヘア。
しかも、理容室ってことで顔剃りやら眉カットまでさせられる始末。
わ、私じゃない~~つーの!!
そもそもこんな羽目になったのは短期留学が原因。
海外に行くために必要なもの。
それは…パスポート!
その申請するための写真が必要だからってこんな展開。
撮影のためにきちんとしたものがいいということでわざわざこんな場所に。
頭部分だけ浮いた私の姿は何ともアンバランス。
お出かけ当初はしっくりきてたんだけど、ね?
でもって髪以外にもついでだからっていろいろと回る羽目になった。
高山は高山で街中を歩いていてもちょっと振り返られるようなお姿。
学校とは違ってカジュアルな装いなくせに妙に決まってる。
Tシャツにパンツ、ジャケットって感じなのに!?
ジーパンにTシャツという似たような格好の私の立場は一体何?
横に並んでいるだけで違和感があるみたいで気になるっつーの!
…特に今は髪型だけが妙に決まってる状態だしね。
高山はお構いなしに足取りの重い私の手を引っ張る。
そして次に辿り着いたビルの一角にある高そうなブティック。
「あらぁ、和寿さまぁ♪ いらっしゃい~~」
男性の鼻に掛かった甲高い声が聞こえてきた。
見れば狸みたいな顔をした男性風の人が駆け寄ってくる。
「和寿様にお似合いの夏物、入ってきてるわよ~」
高山の腕を絡ませ、気持ちが悪いほどの笑顔を向ける。
「今日はオレのじゃなくてレディースが欲しいんだ」
その一言で横にいた私に視線が向けられる。
「あら、随分と変な小娘を連れてるのね」
トゲのある言葉で凝視される。
「佐伯さんの腕、期待してるから。適当に何枚か選んでくれる?」
「和寿様がそういうのなら…」
ムッとした様子の男性は高山のウインクで瞬時に反応。
「さ、小娘。こっちにお寄りっ!」
佐伯と呼ばれる男性? は私を睨みつけると顎でこっちに来いと言わんばかり。
渋々、近づいたらあっという間に更衣室に投げ込まれ、と同時に洋服が降ってきた。
「さっさとそれに着替えるのよっ、小娘!」
明らかに敵視された扱いだよね?
私に何の恨みがあるんだっつーの!
ムッとしながらもとりあえず目の前にある服を手に取る。
何ていうか今までに手にしたことの無い色や形。
着れるかっ、こんなの~~!
そうやってぐずっているとカーテンが一部動いて覗く顔がある。
「まだ着替えてないの! さっさとしなさいよっ、この野暮女!」
狸が真っ赤な顔して怒っていると同時に私から服を脱がしだす始末。
「ちょ、何すんの!」
「うるさいわね! 和寿様が待ってるのよ、早くしなさいよ!! 次だってあるんだから!!」
そんな風に強引に着替えさせられたお洋服。
「さ、和寿様。お待たせしました。まずは第一弾よ」
カーテンが開かれ、ドンと押し出されるように更衣室を後にする。
「へぇ~、佐伯さん。やっぱりオレ達通じ合ってるっていうかイメージぴったりだよ」
「あらぁあ♪ 和寿さまぁ~。嬉しいこと言ってくれるじゃない? ワタシ、張り切っちゃうわよ」
そう言うや否や再び更衣室に押し込まれ、次はコレ! と凄む顔。
3回ほど着替えされられた挙句、今日の写真用にと最後のコーディーネート。
ノースリーブのワンピースにボレロという髪型にぴったりな装い。
「佐伯さん、最高だよ! ありがとう」
言って高山は大げさに抱きつく、舌を出しながら。
真っ赤な顔をして硬直状態の狸を残し、店を出る。
「さてお次は…」
高山は私の肩に手をかけながら宝飾品店へと入っていく。
そこではペンダントを物色して身につけさせられた。
「ここは笹川助手のお勧めだって」
そう言って入ったお店は化粧品店。
何だか解らないうちにメイクさせられて店を出た。
…そしてようやく写真撮影となる。長い道のりだっつーの!
何とか午前中にパスポート申請が終わり、ホッと一息。
ちょうどお昼御飯だと優待券を使うことに。
…本当は月曜日、返そうと思ってたのにな。
事情を説明したら高山はありがたく受け取っておけばいいと早速お財布に。
己のものではないのに、何て奴だっ!
で、その手作り感が売りのチェーンのハンバーガーショップへと向かう。
さすが土曜日のお昼ということもあり、店内は賑わっていた。
「お待たせしました。店内でお召し上がりですか? …あっ!」
前に並んでいた客が引き、私たちがカウンターの前に。
そこに現れた店員に私は固まってしまった。
だって目の前に関口良子が居たんだから!
クルリと私が座っていた椅子が回され、雑誌を読んでいた高山と目が合う。
「さすが須崎さんって感じだね。ベースはそれで充分。あとはお出かけ用にアレンジしてもらえるかな?」
「かしこまりました」
ここは高山の行きつけの理容院らしい。
完全予約制で私の知らない芸能人もご用達なんだとか。
そんな場所で伸ばしっ放しの髪をカットする羽目になった。
どんな頭にされるかわかりゃしないと猛烈に反発して現状維持のままってことでようやく了承。
確かに腕はいいらしくって思ったより切った量は多かったのにパッと見は変わらない。
だけど信じられないことにこのお方はその後、とんでもない変化をもたらした。
肩までのずっしり重いストレートって印象強い私の髪型を華やかに大変身。
鏡に映る私の姿は見たことのないお嬢様風。
毛先だけをゆるく巻いた一日限りのふんわりヘア。
しかも、理容室ってことで顔剃りやら眉カットまでさせられる始末。
わ、私じゃない~~つーの!!
そもそもこんな羽目になったのは短期留学が原因。
海外に行くために必要なもの。
それは…パスポート!
その申請するための写真が必要だからってこんな展開。
撮影のためにきちんとしたものがいいということでわざわざこんな場所に。
頭部分だけ浮いた私の姿は何ともアンバランス。
お出かけ当初はしっくりきてたんだけど、ね?
でもって髪以外にもついでだからっていろいろと回る羽目になった。
高山は高山で街中を歩いていてもちょっと振り返られるようなお姿。
学校とは違ってカジュアルな装いなくせに妙に決まってる。
Tシャツにパンツ、ジャケットって感じなのに!?
ジーパンにTシャツという似たような格好の私の立場は一体何?
横に並んでいるだけで違和感があるみたいで気になるっつーの!
…特に今は髪型だけが妙に決まってる状態だしね。
高山はお構いなしに足取りの重い私の手を引っ張る。
そして次に辿り着いたビルの一角にある高そうなブティック。
「あらぁ、和寿さまぁ♪ いらっしゃい~~」
男性の鼻に掛かった甲高い声が聞こえてきた。
見れば狸みたいな顔をした男性風の人が駆け寄ってくる。
「和寿様にお似合いの夏物、入ってきてるわよ~」
高山の腕を絡ませ、気持ちが悪いほどの笑顔を向ける。
「今日はオレのじゃなくてレディースが欲しいんだ」
その一言で横にいた私に視線が向けられる。
「あら、随分と変な小娘を連れてるのね」
トゲのある言葉で凝視される。
「佐伯さんの腕、期待してるから。適当に何枚か選んでくれる?」
「和寿様がそういうのなら…」
ムッとした様子の男性は高山のウインクで瞬時に反応。
「さ、小娘。こっちにお寄りっ!」
佐伯と呼ばれる男性? は私を睨みつけると顎でこっちに来いと言わんばかり。
渋々、近づいたらあっという間に更衣室に投げ込まれ、と同時に洋服が降ってきた。
「さっさとそれに着替えるのよっ、小娘!」
明らかに敵視された扱いだよね?
私に何の恨みがあるんだっつーの!
ムッとしながらもとりあえず目の前にある服を手に取る。
何ていうか今までに手にしたことの無い色や形。
着れるかっ、こんなの~~!
そうやってぐずっているとカーテンが一部動いて覗く顔がある。
「まだ着替えてないの! さっさとしなさいよっ、この野暮女!」
狸が真っ赤な顔して怒っていると同時に私から服を脱がしだす始末。
「ちょ、何すんの!」
「うるさいわね! 和寿様が待ってるのよ、早くしなさいよ!! 次だってあるんだから!!」
そんな風に強引に着替えさせられたお洋服。
「さ、和寿様。お待たせしました。まずは第一弾よ」
カーテンが開かれ、ドンと押し出されるように更衣室を後にする。
「へぇ~、佐伯さん。やっぱりオレ達通じ合ってるっていうかイメージぴったりだよ」
「あらぁあ♪ 和寿さまぁ~。嬉しいこと言ってくれるじゃない? ワタシ、張り切っちゃうわよ」
そう言うや否や再び更衣室に押し込まれ、次はコレ! と凄む顔。
3回ほど着替えされられた挙句、今日の写真用にと最後のコーディーネート。
ノースリーブのワンピースにボレロという髪型にぴったりな装い。
「佐伯さん、最高だよ! ありがとう」
言って高山は大げさに抱きつく、舌を出しながら。
真っ赤な顔をして硬直状態の狸を残し、店を出る。
「さてお次は…」
高山は私の肩に手をかけながら宝飾品店へと入っていく。
そこではペンダントを物色して身につけさせられた。
「ここは笹川助手のお勧めだって」
そう言って入ったお店は化粧品店。
何だか解らないうちにメイクさせられて店を出た。
…そしてようやく写真撮影となる。長い道のりだっつーの!
何とか午前中にパスポート申請が終わり、ホッと一息。
ちょうどお昼御飯だと優待券を使うことに。
…本当は月曜日、返そうと思ってたのにな。
事情を説明したら高山はありがたく受け取っておけばいいと早速お財布に。
己のものではないのに、何て奴だっ!
で、その手作り感が売りのチェーンのハンバーガーショップへと向かう。
さすが土曜日のお昼ということもあり、店内は賑わっていた。
「お待たせしました。店内でお召し上がりですか? …あっ!」
前に並んでいた客が引き、私たちがカウンターの前に。
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