UNLUCKY?

おりのめぐむ

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不安な疑惑の準備期間 5 ~気になる噂とトラウマ~

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 …気が重い。
 こんなに学校に行くのが気が重いのは何年ぶりだろう?
 天才少女と崇められて急に周りの態度が変わった。
 今まで仲良くしていた子らが突然、遠ざかる。

『未来ちゃんは特別だから遊んじゃダメ』
『未来ちゃんの邪魔をしちゃいけないから遊んじゃダメ』

 親からそう言われた同級生達が去っていく。
 そう、あれは小学校1年生の頃。
 周りの豹変振りに学校に行くのが嫌になった。
 あの時と同じ感覚が蘇ってくる。
 …私は何も変わってないのに、周囲が勝手に距離を置く。
 暗い気持ちで目覚めた月曜日。
 きっと今回の件が知れ渡ってるに違いない。
 学校中の噂として今日中には広がるだろうな。
 …何より関口良子に見られたのが痛かった。
 特に親しいわけでもないのに高校に入ってから普通に接してくれた彼女の存在。
 同じようなことが起こるだろうと小学生時代の頃と被って気が重いんだ。

「あんたなんか最低最悪な教師だっ!」

 週末、怒りを胸に帰宅後、寝室に閉じこもる。
 無駄だとも思える鍵をかけ、ベッドに潜り込んだ。
 …そもそも高山と出かけたのがまずかった。
 写真を撮るだけならこの近所で済ませられたのに!
 わざわざ街中に二人で行ってしまったのが失敗だったんだ!
 休日の昼間だからってつい油断してた。
 同居が始まっても極力、高山との接触を避けていた私。
 登校や下校なんかは特に細心の注意を払っていた。
 …こんなことにならないために。
 一目置かれてる状態でそれに輪をかけるようなことをしたくなかったのに!

「倉持…?」

 高山は驚いた顔をして、私を見ていた。
 それっきり、口を利かずじまい。
 気を使ったのか、ドアの前に食事を置いたり、長い時間、一人で出かけたりしていた様子。
 必要以上に接してこなかったおかげで別々に過ごした週末。
 悶々とした気持ちが膨らんで私はほとんど寝室に閉じこもったまま、今日を迎えた。

「倉持、いつになったら機嫌が直るんだ?」

 高山は呆れた口調で寝室のドア越しから話しかける。
 …あんたなんかに私の気持ちが分かってたまるものか!
 心ではそう思いながらも無言で登校の準備を進める。
 本当は行きたくない気持ちがいっぱいだ。
 けど、ここでサボったら根も葉もないことまで広がるかもしれない。
 何せ高山が出勤するとなれば矛先がそこにいくだろうし、何を言い出すか分からない。
 この同居の件ですら口止めしているのに。

「何を心配してるのか知らないけど、このまま無視される状況は気にくわないな」

 玄関に向かおうとした私の腕を掴み、そのまま引き寄せられる。
 2日振りの急接近。公園での事件がフラッシュバック。
 下火になっていた怒りに火がつく。

「高山のせいで根も葉もない、根拠も無いことが広がるってーのよ!!」

「根拠も無いこと? …何だ、それ?」

 ポカンとした顔の高山の手を引き離し、更に声を荒げる。

「わ、私と高山との関係、だとか…」

「何だそんなことか。別にオレは全然構わないけど?」

 説明しかけた言葉を遮られ、ニコリと笑う高山。
 は? バカじゃないの?!
 その手の話に慣れてるあんたとは違うんだから!
 冗談じゃないっつーの!

「私が構うの!!」

 怒鳴り声で主張。

「ふ~ん、じゃ、倉持、賭けしないか?」

 興奮も冷めやまぬまま、高山は涼しげな顔で言う。

「もし、倉持の言う、根拠も無いことが広がってたら…」

 一言一言、確認するかのように。

「オレは倉持の言う事を何でもきく。…で、そうじゃなかったら倉持はオレの言う事を何でもきく」

 高山は一呼吸おく。

「どうだ? 倉持にとって悪くない賭け、だろ?」

 ヤケに自信ありげに押す高山に嫌な予感はしたものの、血の上った頭には冷静な判断など出来るはずもなく、私はコクンと頷いていた。
 とにかく、この決着は学校に行けば分かること。
 …気の重さは変わらないけどね。
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